(4)会心のゴール
折り返すとコースは下り基調になります。だから少し楽になるはず。そう思いながら往路は耐えて走りました。ところが折り返してみると大きな誤算がありました。それは風です。折り返したとたん、向かい風を全身に受けるようになったのです。
そういえば、往路ではほとんど風を感じませんでした。それは追い風だったということのようです。この程度の緩やかな下りでは、上り下りよりも風の方が体に応えるかもしれません。それは風の強い坂の街である留萌で6年暮らした経験からも言えます。
下りだからと安心できる状況にないことをしっかり理解しました。下り坂に頼らず復路もしっかり走らねばなりません。それでも10キロまでのラップは5分26秒、5分06秒と少し上がりました。やはり下りの効果もあったようです。
10キロの通過タイムは56分48秒です。マラソンならば理想的なサブフォーペースです。いい感じで走れています。しかし体の方はますますダメージを感じるようになってきました。
ともかくあと2キロ。12キロまで頑張りましょう。そうすれば4分の3が終わります。どんな距離を走っても、ラストの4分の1は非常に苦しくなります。マラソンの30キロ過ぎしかり、ハーフマラソンの15キロ過ぎしかり。そう考えると、12キロを過ぎてから最後の山場が訪れることでしょう。そこまではできるだけ淡々と走り、そのときの状態で最後の4分の1をどう走るか決めたいと思いました。
走友でもあり加賀谷はつみファン仲間でもある神楽さんと会ったのはこのあたりだったでしょうか。貴重な写真を撮ってもらいました。
5分21秒、5分19秒と安定したラップを刻みながら12キロを通過しました。いよいよ残すは最後の4分の1、4キロです。ここが本当の勝負どころです。
しかしやはりラスト4分の1は体に応えます。12キロを超えたとたん、足が上がらなくなってしまいました。しかしここで負けてはいられません。ここで失速してしまうと、最後の4キロはとてつもなく長い4キロになってしまいます。
ダメージが大きくなるにつれ、自分のフォームにも変化が現れてきたことを感じるようになりました。ここまではできるだけ軽く走ることを意識し、上蹴りにならず足が前に出るフォームで走れてきました。ところがここにきて、苦しくなってきたため上蹴りになってきています。
こうなると頑張っている割に足が前に出なくなりペースも落ちてしまいます。そのためなんとか足が前に出るように意識しました。するとちょっと無理をして走ったせいか、13キロのラップは5分09秒と上がってしまいました。
ペースアップの必要はないので、足を前に出すことを意識しながら、少し楽なペースで走りました。すると14キロのラップは5分20秒に落ちました。でも落ちたとはいえいいペースで走れています。ですが足はいよいよ限界になって来ました。足を前に出すことがいよいよ苦しくなってきています。
残りの距離は2キロです。今回は目標としているタイムもありません。最後まで失速せずに走れれば上出来です。ここまではすばらしいペースで走ってこれました。最後の2キロはダウンジョグというくらいの気持ちでいいでしょう。
数十メートル先にはひとりのランナーがいます。そして後ろからは追いかけてきているランナーの呼吸が荒く聞こえています。ラストスパートをして後ろのランナーから逃げ、前のランナーを追いたいというランナーとしての気持ちは残っています。しかし特に練習不足の体には、ラストスパートは非常に危険な行為です。ですからラストスパートはせず、逆にダウンジョブにしようと思ったのです。
だけど体は言うことを聞かなかったようです(笑)。15キロのラップは5分08秒と、また上がってしまいました。どうりで前のランナーの背中が大きくなり、後ろのランナーからはなかなか捕らえられずに走れています。
いよいよ最後の1キロです。しかし最後は競技場までの上りも待っています。けっしてスパートをすることなく、軽い気持ちで走り続けます。
競技場に入るとスマホは16キロを告げました。スタートロスもある上に実際に走行した距離を計測していますから、走行ラインのとり方によるロスもあります。だから実際のコースより走った距離は長くなってしまいます。この1キロのラップは5分28秒と落ちましたが、ダウンジョグに切り替えたというペースではありません(笑)。ここでも神楽さんに写真を撮ってもらいました。
競技場のトラックを4分の3周します。そこでついに前のランナーを捕らえて抜いてしまいました。しかし第3コーナーのあたりで後ろから追ってきていたランナーに抜かれてしまいました。私は抵抗することなく同じペースで走り続け、4コーナーを回ってからはゴールゲートの写真を撮り、そのままのペースでゴールを目指します。
そしてバンザイをしながらゴールを駆け抜けました。タイムは1時間28分29秒。今の状態からすると信じられない上出来のタイムです。(つづく)
(1)2か月半ぶりの大会参加
(2)スタート前のアクシデント
(3)安定したペースの往路
(5)美味しい大会へ
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