てんかん特選記事の第2回。

 

てんかんに対する認識は、世界と日本とでは大きな隔たりがあります。

世界的には身体的な脳疾患とされていますが、日本では精神障害という扱いです。

脳に関する疾患や障害が精神障害とは限りません。

てんかんも物理的な身体の慢性疾患であって、精神障害ではありません。精神的なことが原因で発作が起きる訳ではありませんから。

過去の記事に、事例を元にしたものがあるのでご覧ください。

 

<2011年6月28日の記事の再掲>

 

広島県福山市藤江町の県道で5月、児童の列に軽乗用車が突っ込み、4人が重軽傷を負った事故。

自動車運転過失傷害罪に問われている同市沼隈町、村田真樹被告(38)について、地検福山支部は起訴状で、医師から車の運転を控えるよう指導されていたのに車を運転し、てんかんの発作で意識を喪失して事故を起こした、と指摘した。

 

事故の背景にある実情と課題を、患者や家族の支援に取り組む日本てんかん協会広島県支部代表の精神科医岩崎学さん(63)に聞いた。

てんかんの発作が起こるかもしれない状況で危険を顧みない運転があった点について、運転者は社会的な責任を免れることはできない。

しかし、てんかんや障害のある人が、就労を含む社会生活から締め出されるようなことにつながらないかと危惧している。

てんかんは、慢性の脳疾患だ。脳に傷などがあることで起こるもの、原因不明のものがある。80%は乳幼児期を中心に18歳未満で発症する。

国内には約100万人の患者がおり、20%は薬を飲んでも発作のコントロールが難しい難治性とされている。

 

患者は2002年に道路交通法が改正されるまで、運転免許を取得できなかった。

てんかん協会や日本てんかん学会が求めた結果、「発作が再発するおそれがない」「意識障害が起こらない」などの医師の診断書があれば、取れるようになった。

免許の取得、更新の際に申告が必要なことは、様々な形で患者に伝えられており、ほとんどの人は守っている。

あってはならないことだが、病気の申告をせずに免許を取る人がいるのには理由がある。

てんかんは、世界保健機関(WHO)の分類で脳疾患とされるが、国内では精神障害と扱われる。差別や偏見にさらされることが多く、一部の公共交通機関では割引もない。車がないと日常生活が著しく不便になる場合もある。

 

協会に寄せられる相談は「てんかんと言った途端、不採用になった」など、就労に関するものが多い。

不利に扱われた経験があると、病気を隠してしまいがち。

診療する医師は、患者が自ら悩みをぶつけてくるような信頼関係を構築するようにしなければならない。

新薬の開発で大きな発作が抑えられるようになったため、患者が発作を起こす場面を目にすることが少なくなり、てんかんについて認知されにくくなっている。

偏見をなくすためにも、不幸な事故を減らし、病気の正しい理解につなげる必要がある。少しでも悩みがある患者は相談に来てほしい。

日本てんかん協会広島県支部は、ファクス(082-421-0645)で相談を受け付けている。

 

『読売新聞』 2011年6月21日付

 

<引用は以上>

 

世界と日本とでは、てんかんに対する認識がかなり違うようですね。

世界基準は「てんかん=脳疾患」日本では「てんかん=精神障害」で、つまり、世界的には慢性の脳疾患として捉えられているのに、日本では精神障害者扱いされている。

そのために様々な不利益をこうむる。

この記事では「てんかん=精神障害」と書かれてありますが、「障害」の分類に当てはめるなら、精神障害というより、むしろ身体障害が妥当です。

てんかんは、脳に傷があることが原因ですから、精神ではなく身体の範疇です。

(以前、カリスマ的な医学の先生に質問したことがあるので間違いありません)

「身体的疾患(病気)」と「精神障害」とでは世間の見方が異なると思います。

 

「障害」というものへの偏見と差別意識が日本の場合、強いのではないでしょうか?

社会福祉のカリキュラムで、世界の障害者福祉の歴史を学んできて、そう感じました。