あちら側にある言葉は

こちら側にいる私を実によく捉えてくれる


私がいるのはこちら側のはずなのに

どうしていつも

見よう見ようと目を懲らす先は

ぼんやりとして取り留めがない

 他でもない

 私のことでしょう?

そう 時には憤りたくもなるのに

いっこうに煙にまかれたように

どこへ手を差し出すべきなのやら

私は何を探しているのやら

わからないままに呼ばれた声に返事をし

身支度を整え 慌ただしく出かけて行く

あちら側に

もうすぐ見えそうだったのに

あちら側にはいくらでも

きっと思い描いている以上に 私の欲しがっているものが

鮮やかに簡潔に 生き生きとしてあるのだろうに


そして私は今日も

まぶたが重くなる空気の中で

必死にずりおちるそれを引っ張り上げ

どんよりした目や 訝しげな目や

きらきらして眩しすぎる目にうんざりしながら

なにより鏡をのぞくたびに目にする

物足りなさを常に放つ

気力の弱まった自身の顔にげんなりとし

ためいきをひとつ こぼすのだ


あちら側に居たい

あちら側に行きたい  と