「ときどき思うのよ。

想像もつかないようなお金を動かしているような人達の間では、想像もつかないような計画が着々と進められていて、それはもしかすると今私が知っている世界で当たり前と思っていることと全く逆かもしれないのよね。そうすると、今信じていることって、私が信じていると思っていることっていったい何なんだろうって思わざるを得ないの。

自分をまっすぐ立たせておくための支え棒みたいなものなんだけど、それが本物の棒なのか、それともホログラムみたいなものなのかわからないってことでしょう。わからないものを信じ続けていたって、それでいいんだって割り切れる人ならいいんだろうけど、私は知っているのにごまかされていないふりは出来ないって思った。

だから、あまり興味はないのよ。何がどうだってことには。だってどれも、本当だっておもえば本当だし、偽物だって言われればそうねって言うし、大事なのはそうやって目の前に差し出すことのできるどんなものであれ、私を幸せにしてくれるわけではなさそうだってことなの。 」


もくもくと煙を上げる葉巻の先をつまらなそうに眺め、彼は言った。


「想像も出来ないようなことを考えているとんでもないひとたちの考えている、もしくは知っている真実が、こっちの向きを向いていようが全く反対を向いていようが、そんなに大きな違いはないんだろうな。」


「そうね。そう考えると、本当につまらないわね。」


「 つまらないから、興味もなくなる?」


「そういうことよ。でも、こうやって触れている体温は本物だと思うわよ。」


「思うだけだろう。本当のところはわからないさ」


「結局、どうでもいいってことね」