自作解説その②
「若妻痴漢遊戯 それでも2人は。」
(シナリオタイトル『それでも二人は』 2005 ENGEL)
デビュー作以降、諸々の事情によりピンク映画を離れVシネマに活動拠点を移した僕の7本目の監督作品です。
この少し前からエロVシネ業界は本格的な氷河期に突入し、前作「女教師痴漢調教」から2日撮りになっていました。
前作はシナリオが非常にシンプルだったため、2日でも割と楽に撮れましたが、この作品はセットも移動も多い上に電車の中の撮影まであるので、そりゃあもう大変でした。
とにかく少数精鋭で予算を浮かすという戦略で助監督は一人(現在の嫁)という体制。嫁は運転が出来ないので積み込みやら現場中の運転は僕がやりました。
そしてこの作品は我が組にアヒルが初登場した記念すべき作品でもあります。
僕はクストリッツァの映画が大好きで彼の映画によく登場するアヒルをいつか自分の作品に出したいとずっと考えていました。
この作品でついにそれを実行しようと思い立ったはいいものの、レンタルペットのアヒルは高額でとても手が出ません。それでもどうしてもアヒルを出したかった僕はペットショップで一羽千円のアヒルの雛を5羽買ってきたのですが、準備期間の短いVシネマ、準備中に成長するあては外れ、雛のままの出演となってしまいました。
しかし、このアヒルたちが後に城定組の一時代を支える名俳優になるとはこの頃は誰も想像できなかったのです。
現場はというと、初日の夜からいきなりトラブル発生です。
クライマックスシーン、マンションの屋上でヒロインがキラキラの光に包まれるという幻想的なカットがあります。こんなもの今ならCG処理で一発ですが、その頃の僕はCGなんてハリウッドでしか出来ないと思い込んでましたから、ヒロインの顔にライトを当て、その上から細かく切った銀紙をばら撒くという超アナログな方法でこのカットを実現させようとしました。
場所は新宿の某ホテルの屋上です。で、まあ、撒きましたよ、銀紙。
何とかそれっぽく撮れたので、さあ撤収、次はコインランドリーの撮影だ。銀紙はざっくり拾ったけど全部拾うのは無理だな、まあいいや、夜だしバレやしないだろ…
…バレました!ホテルの支配人は大激怒です。
姉さん、事件です!
見習いスタッフ一人を人身御供で置いていってそいつに片付けさせると言っても聞いてくれず、監督のお前が全部拾えと無茶をいいます。「次の撮影があるんです許してください」「ダメだ!」の押し問答。
結局土下座をしてカンベンしてもらいました。
これが僕の人生初の本気土下座体験です。
車に待機していたアヒルたちもなんだかションボリしていました…
翌日は朝から電車シーンです。
通常痴漢シーンというものは電車セットのあるスタジオと本物の電車内の両方で撮って、後で編集で繋げるという方法をとります。
しかし、今回は電車セットなんて借りる予算は当然ありません。電車内シーンはすべて本物の電車に乗り込みゲリラ撮影。中央線、新宿~高尾間を往復してようやく取り終えました。
この時は運よく捕まりませんでしたが、捕まったら犯罪者になる危険な行為ですので皆さんは真似しないで下さい。
僕ももうしません、多分。
さあ、お次は走る電車にカメラを載せたハイエースを並走させて、外から窓越しに痴漢シーンを狙うというチャレンジカット。こんな時間がかかるカットは何度も撮れるもんじゃありません。
僕は語気を荒げてスタッフ達にいいました
「一発で撮れなかったら俺はこのカットを諦める!だからお前ら死ぬ気でやれよ!」
ひゅ~、なんかカントクっぽ~い。
さあ、いざ撮影!電車が走る!ハイエースが並んだ!よしっ、飯岡さんしっかり撮ってくれ!
…て、あれれ…予定の位置にキャストがいないよ!
どうやら助監督(嫁)の指示ミスでキャスト達は反対側のドア付近で一生懸命痴漢ごっこをしていた模様。
・・・!
…で、どうしたかというと、もちろん前言撤回ですよ。
もう一回撮りました。
僕は生まれつき諦めが悪い上に約束を守らない男なんです。
二日撮りなのにそんなことやってたもんですから、撮影終了は当然翌朝でした。
で、いい芝居をしてくれたアヒルたちは当初ペットショップに返す予定でしたがピヨピヨいってる彼らの顔を見てるとどうしてもお別れが出来ません。
結局、当時住んでたマンションのベランダに簡易プールを置き、飼うことにしました。
ペット禁止だけど、まあ、鳥だからいいだろ…
雛たちはあっという間に成鳥になり、ピヨピヨはグアグアになりました。
after!
ほどなくして不動産屋にバレた僕がアヒルともどもマンションを追い出されたのは言うまでもありません。
この作品、多分もうツタヤにも置いてないレア物です。
今回を見逃したら一生見れないかもしれませんよ!