初音が外にゴミを置いて来て戻ってくると
「お茶、入りましたよ。」
真緒がほうじ茶を淹れてきた。
「あ。すみません・・」
「こちらこそ。ありがとうございました、」
二人で座った後
「さっき。 すみませんでした、」
初音が突然言い始めた。
「え?」
「あんなこと言って・・」
『北都の娘だということをもっと利用してもいいんじゃないですか』
あの言葉かと思い
「ああ。全然。気にしてないですけどー。 でも。なんか初音さんらしくないかなって、」
真緒はお茶に少し口をつけた。
「自分でも。なんであんなこと言ってしまったのか、」
初音は小さなため息をついた。
会話が途切れてシンとした空間になった。
「・・夢って。ないとダメなんですかね。」
そして初音がいきなりそんなことを言い始めた。
「はあ?」
「天音に思いっきり言われたんです。 自分には夢があるけど兄ちゃんには何もないって。なんか・・ショックって言うか。いや36にもなって夢も何もないと思うんですけど、」
「いや。夢なんか。あたしも今はなんもないですよ、」
真緒は普通に答えた。
「もともと何になりたいとか子供のころから別になかったし。流されまくって今になってるって言うか。初音さんは子供の頃は何か夢とかってあったんですか?」
逆に質問されて、うーんと首を捻った。
そう言われてみたら。
「保育園とか小学校低学年くらいだと。宇宙飛行士とかパイロットとか。サッカー選手とか。周りの友達は作文に書いてましたけど。 変に擦れた子供で。そういう特別な人間にはなれないって思ってたんですよね。熱中するものも別になかったし。」
「意外・・。何でもできそうなのに。」
「それを。10も離れた弟に言われるとは。」
今度は大きなため息をついた。
「でも。夢なくても生きていけますもんね、」
一方の真緒はあっけらかんと言った。
「え、」
「ほとんどの人が特別な夢なんか持ってないんじゃないかな・・。これから生きて行けばなんか意外な展開待ってるかもしれないし。あたしだって離婚して戻ってきて。今のこの展開予想できなかったし。」
呑気にふふっと笑った。
そんな彼女に初音はちょっと気が抜けたようにふっと笑ってしまった。
そんな二人をリビングの外からうかがう人物が。
何をまったりしてんねん・・
せっかく酔ったふりをしてこっちに泊まらせてもらえることになったのに。
天音はドアの隙間から二人を窺った。
キラーパスを送った天音でしたが初音はやはり・・
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