「・・あー、そうなんだ。」
真緒はまた普通に朝食を食べ続けた。
天音はすかさず彼女に近づいて
「地元の市議の娘さんなんですけど。何年か前に結婚して神戸に住んでたらしいんですよ。 いや、おれも会ったことなかったんですけど。」
隣に座った。
「離婚して。戻ってきたらしくて。」
そこでまた真緒の箸が止まる。
「・・ふ、ふうん、」
「で。小学生の娘も一緒で。 『携帯変わってない?』とか言っちゃって。なんかね・・ 元カレにちょっと近づきたい感がめっちゃ出てるんですよ。風ちゃんの話によると。その彼女が兄ちゃんのことめっちゃ好きすぎて猛プッシュでつきあうことになったって。でも田舎とはいえ。お父さん市議やし。地元の地主王っていうんですかね。そういう家やったから。彼女が神戸の大学行った時点で兄ちゃんはもう無理やなって思ったらしくて。その夏休みくらいに別れたらしいんですよ。そんなん気にせんでもええのにっておれなんか思っちゃうんですけど。ダメなんですよねえ。ウチの兄ちゃんは。もっと自分に自信持てばええのにって思うんですけど。その元カノって人もめっちゃ美人なんですよ・・」
天音はベラベラと話し始めた。
真緒は食事を続けながら
「・・なんでそんなことあたしに言うの?」
ちょっとムッとして返した。
「え?や。別に。そういうことがあった、という話です。」
天音は彼女の様子をずっとうかがっていた。
「そりゃ。初音さんだって恋愛のひとつやふたつあるでしょうよ。元カノが離婚して地元に戻るってあるあるだろうし。」
めちゃくちゃ動揺丸出しだった・・
「・・ですよねえ、」
天音はニヤニヤ笑ってしまった。
「何笑ってんの、」
ジロっとにらまれて
「いえ。なんでも。じゃおれも朝飯食ってきまーす、」
そそくさとその場を去った。
バツイチ子持ちで地元に帰って
元カレと思わせぶりに再会・・
真緒はジーっと固まってしまった。
ユウナ
昨日初音が電話をしている時に出た女性の名前。
・・・・
めちゃくちゃ気になる!!!
思わず味噌汁を一気飲みしてしまった。
東京から帰ってすぐに初音は畑仕事と役所勤めに忙しかった。
特に冬は主力のネギや白菜の出荷に忙しい。
軽トラに箱を積んでいると
「こんにちわ、」
祐奈が顔を出した。
「どしたん? この辺に用なんかあるん?」
初音は手を止めずにそう言った。
「この辺の直売所で野菜の買い出しによく来るんよ。初音の家この辺やったかなあって。手伝おうか?」
「重いから。祐奈には無理や、」
苦笑いをして彼女を見た。
「あたし。やっぱり両親の所出て娘と自活していこうかなって、」
「・・そやな。大変やと思うけど。子供と助け合ってやっていった方がええと思うで、」
「仕事もちゃんと探さないと。 去年の11月にこっち戻ってきて。親は一緒に住んだらええって言うんやけど。いつまでも実家におんぶにだっこじゃね。娘にも親として胸張れないしね・・」
祐奈は段ボールを広げる手伝いをしながら少し寂しそうに笑った。
平然を装いながらも真緒はその初音の元カノがめちゃくちゃ気になり・・
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