雨がしとしと降る日の午後は

悲しみはこの上ないほど膨らんでいく。

小さな窓の外のいつもの景色は

灰色のベールに包まれて 

部屋の中のわずかな明かりさえ奪い

私の羽の青さを 益々深めていく。


鏡を見つめて溜息がひとつ。

「このままだったら、カラスになっちゃうヨ。」

そんな独り言がこぼれ出た。

真っ黒な羽の私の姿を想像してたら

突然 可笑しくなってきて

私は鏡を見つめながら

クスクス笑い出していた。

「黒いカナリアなんて・・・。」

クスクス クスクス

「どんな風に 鳴くんだろう?」

クスクス クスクス

「黒よりはまだ 青でいいよ。」

クスクス クスックス

「だって、幸せの青い鳥だもの。」

クスクスッ クスクスクスクス 

「そんなに笑って、カラスに聞かれたら怒られちゃうよ。」

クスクスクスクスッ クスックス...

一人で言って、一人で笑う。

何がそんなに可笑しいのか

自分でもよく分からないのだけれど

クスクス クスクスは なかなか止まらなかった。


気がつくと 雨が止んでいた。

小さな窓の向うから

急いで流れていく雲の間に

空へと続く梯子みたいな

光の筋がいくつも姿を現した。

小さな窓から部屋の中にまで

やわらかな日差しが入り込んできて

一筋の光が鏡に反射した。

私の姿は一瞬 生気に満ちて光っていた。

そのように鏡は、私を映していた。

気まぐれな光のいたずらで

空よりも青く透き通った羽をした私を見て

きょとんと首を傾げつつ

思わずくちばしを少しだけ開いてみる。

「  ・・・ ん。 やっぱり まだまだ無理。」

 

最後の独り言をつぶやくと

私は窓の向うの遠い景色に目を向けた。

そんなに簡単にはいかないよ。


今日の私は 気まぐれな青い鳥。