病気やけがの治療をするメルの家には、

北側に作業部屋がある。

窓の下にはテーブルと椅子、

両横には たくさんの本の並んだ棚がある。 

背向かいの壁いっぱいに渡された棚の上には、

乾燥した薬草の束や、すり潰す道具、香油ビンが

整然と並んでいる。


一日中薄明かりしか射さない小さな部屋。

ひんやりと冷たい空気が立ち込める部屋の中で

メルは食事を摂ることも忘れて 

ずっと作業を続ける時もある。

治療法を本で調べ 

書き溜めた薬の原料を探しに

草原や森の中に出かけていく。

海に潜って見つけてくることもある。


メルの帰りが遅くなると みんなで心配する。

「今日はどこへ行ったんだろう?」 

「無事に帰ってこられるだろうか?」 と...

大抵はどんなに遅くなっても

一番星が瞬く頃には 戻ってくるのだけれど。


メルが帰ってこなければ

みんな困ってしまうんだよね。

傷の手当を必要とする動物や

まだ自分で餌を見つけられない仲間たちが

メルの家にはいっぱい暮らしているから。