常々大前研一サンには心服しているのだが、「経済学の手法が通用しない日本人特有の心理」 を読んで(ホントにねえ…)と周りの人々の事を考えてため息をついた。

 彼が言うには「日本人には資産管理に関して特有の鈍さがあ」り、「使う予定もないまま貯金を続け、死ぬときが一番お金持ちという意味のない蓄財方法。それでいて必ずしも家族に美田を残そうという意識があるわけでもない」などなど一々納得が行く。

  新聞報道だが、身寄りのない年配女性が死亡し、市職員だかがアパートの整理をしたところ、畳の下だったか(大分前の話でウロ覚え)から数千万円という大金 が見つかったのだという。身なりにしても暮らしぶりにしても非常に質素だったので葬式も出せるか職員は危ぶむほどだったとか何とか。(あーあ、そんなにお 金があるのだったらパーッと使って楽しむか、どこかに寄付でもしたら良かったのに)とため息をついた。「この鈍さがあるために、これまでさまざまな経済政 策が失敗してきた。(中略)日本人が持つ1500兆円もの個人金融資産がまったく消費に向かわなかった」いい例がこの死亡した老女である。

  彼はその鈍さはどこから来るのかを研究しているそうで(ご苦労さま)、日本は世界トップクラスのお金持ちの国なのにお金を使おうとしない国民性を持ち、そ ういった「変わらない日本人の心理をどう開放するか。開放できない場合は、日本の将来の繁栄が失われるかもしれない。今はその瀬戸際だ。」とまで書いてい る。私の友人の母親などを見ていると、日本人の資産に関する心理を変えるなど到底無理だと思う。絶対元本保証でなければイヤだという彼女は何が何でも元本 保証派で銀行に資産を預けている。政治的にも「何が何でも絶対自民党」派で、変わる余地などどこにもない。彼女を変えようなどという野望は私はとうに捨て ている。

 いくら、私が月々5%強の銀行に比べれば夢のような利子の投資信託を銀行の通帳まで見せて勧めても胡散臭い顔をするだけであ る。「金を増やしたい」という行き付けの寿司屋の職人さんや友人に、好意から自分の時間を削って資料を渡したり説明したりしても彼/女らの顔には胡散臭さ が浮かぶだけ。まるで私が彼らを騙して利益を得ようとしているかのような表情である。全くバカバカしいのでそういう相談にはもう一切乗らないようにしてい る。日本人の金に関する心理を変えようなど、50年早い。私の観察するところ、日本人は金が好きでありながら金について考えるのが好きではないのだと思 う。