「クシュンッ」
 
 
キョーコは夢現の意識の中で、自分の嚔に身を縮こませた。
 
すると肌布団が肩まで被せられ、その温もりの中で引き寄せられたかと思うと感じる熱。
 
その温かな熱に誘われるように顔を埋めると、ほのかに感じる柔らかい香り。
 
 
この香りは知ってる……。
一番大好きで、一番落ち着く香り……。
 
 
敦賀セラピー ーーーー
 
 
 
「……え?」
 
 
キョーコがパチリと目を開けると、目の前に見える人肌。
 
 
「……ん……キョーコ?」
 
 
「……っ!!」
 
 
この状況は一体……
 
なんで敦賀さん!?
なんで敦賀さんの家!?
なんで敦賀さんの家の寝室!?
なんで敦賀さんは服を……
 
待って……私……も……?
 
 
「○X▲◎★□~~~っっ!!/////」
 
 
「クスクス……おはよう。」
 
 
目の前の美丈夫の寝起きとは思えないほど煌びやかな神々スマイルに、キョーコは裸眼で太陽を見てしまったかのような瞬きをした。
 
 
ピンポーーーン
 
 
「あ、来たかな……。
 キョーコはまだここにいて?」
 
 
蓮はそう言うと、上半身裸の状態で寝室を出ていった。
 
 
(キョー……コ……///)
 
 
グアムでのコーンのキョーコちゃん呼びでさえ、悦びを抑えていたのに、本物の蓮からのキョーコ呼び……。
 
キョーコは肌布団を抱き抱えながら、少しずつ昨夜の甘い時間のことも思い出していった。
 
 
そして蓮が早朝に招き入れた来客は、大きな紙袋とコンビニの袋を提げた社だった。
 
蓮から連絡をもらった社が、キョーコの着替え用にと事務所の衣装を持って蓮のマンションを訪ねたのだ。
 
 
社は、受け渡した紙袋を届ける蓮が寝室に向かったのを見て……。
 
 
「蓮……お前……まさかキョーコちゃんに……」
 
 
「してませんよ。」
 
 
「ホッ……だよな……。
 流石にあんなことがあった後だし。
 それに蓮君はヘタレだも」
 
 
「最後までは。」
 
 
「…………
 
 ええええっ!!?///」
 
 
 
乙女のように頬を染めそわそわとしながら蓮の淹れたコーヒーを飲む社。
 
その顔やめてください、と小声で話しながら社と向かい合って座る蓮。
 
そこへ着替え終わったキョーコが寝室から出てきた。
 
 
「あ、社さん。おはようございますっ……///
 すみません!わざわざ着替えを……
 今から朝食の準備をすぐっ!あ!でも食材も何もっ」
 
 
「大丈夫だよ、キョーコちゃん、朝食なら買ってきたから。
 もちろんキョーコちゃんの分もあるよ。」
 
 
「そうでしたかっ!本当に何から何まですみませんっ!」
 
 
「キョーコ、まだ時間もあるから、ゆっくりとシャワーでも浴びておいで?」
 
 
「は……い///
 では、お言葉に甘えて……///」
 
 
キョーコはいそいそと浴室へ向かった。
 
 
「…………へぇぇぇ、『キョーコ』 ねぇ?るぇぇんくん。」
 
 
ニヤニヤと嬉しそうに見てくる社をやり過ごしながら、朝の穏やかな時間が過ぎていった。
 
 
 
*  *  *  
 
 
 
昨夜、生の歌番組をドタキャンしたという尚についての憶測で、ツブヤイターの話題は一晩経った今でもランキング上位を独占していた。
 
もちろんその真相を知るものはいない。
 
 
そんな尚の楽屋をノックした社を、祥子は中へと通した。
 
 
「社さん、ご連絡下さいまして本当にありがとうございました。
 この子ったら、何にも話してくれなくて……
 本当に困ってたんです……。
 もぉ、まさか番組にご迷惑をかけるなんて……。
 衣装まで何処かへやってしまうし……。」
 
 
「その衣装とやらはこちらかと……。」
 
 
「あ、それです!ありがとうございます。
 
 それで、その……キョーコちゃんの様子は……」
 
 
コンコン……
 
 
更に訪れた来客。
 
 
「あ……の……」
 
 
「あら、キョーコちゃん!
 と、……敦賀蓮……さん。」
 
 
尚の天敵であることを知っている祥子は蓮の登場に怯んだ。
 
 
「キョーコ……怪我は?」
 
 
尚がのそりと立ち上がりキョーコに近づく。
 
 
「大丈夫よ……何ともないから。」
 
 
「そうか……。
 悪かったよ…… 今度、お詫びにメシでも……」
 
 
「あんたにお詫びされるなんて、大雪でも降ったら困るから遠慮す」
 
 
「う……」
 
 
「え?」
 
 
「臭う……」
 
 
「なっ!?失礼ね!
 ちゃんとシャワー……」
 
 
「違ーよ……お前ぇ……昨日家に帰ってねーだろ?」
 
 
「かっ!?//でもシャワーは浴びたわよ!」
 
 
すると尚はギロリと蓮を睨んだ。
 
 
「コイツ……と同じ臭いがする……」
 
 
ガタンっ!
 
と尚は楽屋の椅子を突き飛ばしながら、蓮の胸ぐらを掴んだ。
 
 
「…………。」
 
 
しかし蓮は微動だにしない。
 
 
「てんめぇ……」
 
 
「尚っ!駄目よ!暴力はっ」
 
 
祥子が慌てて止めようとするのを社が制止した。
 
 
そしてその状態のまま沈黙が続いた後、蓮が口を開いた。
 
 
「……あり得ないそうだよ。
 
 君だけはーーー」
 
 
蓮は勝ち誇った表情で胸ぐらの尚の手を外すと、颯爽と楽屋を出た。
 
 
それを追うようにキョーコと社も出る。
 
 
「くっそーーーっ!!」
 
 
局の廊下にまで尚の声が響き渡ったーーー
 
 
 
*  *  *  
 
 
 
その後一日それぞれの仕事や用事を終え、事務所で再び落ち合った蓮とキョーコ、そして社。
 
社は今日の会議で決まったことだと、このまましばらくの間、蓮とキョーコのマネジメントを兼任することになったと二人に報告した。
 
 
そして、まだ事務仕事があるからという社を事務所に残し、二人で車に乗った蓮とキョーコ。
 
 
「……あの、敦賀さんは、社長さんと何話されてたんですか?」
 
 
「あぁ、それなんだけど……」
 
 
「はい。」
 
 
「一緒に……住まない?」
 
 
「え……」
 
 
「社長の許可は取った。もちろん社さんにも。下宿先には社さんからとりあえずだけど連絡を入れてくれてる。
 一緒に住めば、社さんもマネジメントしやすいし……
 
 何より、俺がいつでも君を守れる。」
 
 
そう言いながら車を路肩に停めた蓮は、修理済みのネックレスをポケットから取り出すとキョーコの首に着けた。
 
 
「……あ、プリンセスローザ様……
 
 
「それからキョーコ……俺と付き合って欲しい……。
 どうかな?」
 
 
「………………はい///
 
 よろしく……お願いします///」
 
 
キョーコは恥ずかしさから答え終わる前に俯いてしまい、そしてまた蓮の服の裾を掴んだーーー
 
 
 
マンション内に到着した二人。
 
蓮が大きな箱を入れた袋を持っていることに気がついたキョーコ。
 
 
「それは何ですか?」
 
 
「あぁこれね、社長が渡してくれたんだけど……
 キョーコとの新生活に使ってくれって。」
 
 
「開けてみましょうか?」
 
 
「そうだね。」
 
 
箱を開けた二人。
 
中にはーーー
 
 
「えーっと?何ですかね?小さな箱がいっぱい……
 サイズみたいなのが書いてありますけど……
 
 MEGAーーー」
 
 
蓮は慌てて箱を閉じた。
 
 
「うん……これは……
 
 ……後で……ねーーー」
 
 
 
 
Fin.
 

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最後までお付き合い下さいました皆さん。
何よりリクエスト下さいましたみやさん。
本当に本当にありがとうございました(*^^*)
 
途中、popipiの内に秘めたるドS魂が調子に乗りまして……
不快感を与えてしまいました方には本当に申し訳ありませんでした。。
 
それでもここまでお付き合い下さいました方々に、メッセージ、コメント、いいね!拍手等で背中を押して下さいました方々に、心から感謝致します‼
 
落ちはどうしても笑いを取りたくなるpopipiですみません( ̄▽ ̄;)
絶対蓮サン服びよんびよんだよね。←え、そっち?ww