いわゆる健康食品との因果関係が疑われる健康被害が報告されている。

■症例

・50代男性 (日本) が、にんにく卵黄を摂取したところ (摂取量・摂取期間不明) 、感冒症状が生じて医療機関を受診、昏睡型急性肝不全を診断された。DLSTにおいて当該製品が強陽性を示し、DDW-J2004薬物性肝障害診断基準で10点と高値であったため、 当該製品摂取との因果関係が強く疑われた (O317210026) 。

・末梢神経障害の74歳女性 (イギリス) が、イチョウ葉、魚油、n-3系不飽和脂肪酸、グルコサミン硫酸塩含有のサプリメントを、推奨量を超える量摂取していたところ (摂取量、期間不明) 、尿中ヒ素濃度の上昇を伴う症状の悪化が認められ、全てのサプリメント摂取中止により、改善した (PMID:23761379) 。

・41歳女性 (オーストラリア) が、体重減少を謳った中国製ハーブサプリメント「Qian Zhi Su」をインターネットで購入し約3ヶ月間摂取したところ、甲状腺中毒症を発症し、摂取中止により改善した。摂取していたサプリメントを分析したところ、トリヨードサイロニン、サイロキシン、甲状腺刺激ホルモンおよび甲状腺組織が検出されたため、当該製品摂取によるものと診断された (PMID:23250039) 。

・0.7~4.2歳の7名の小児 (トルコ) が、市販の魚油サプリメントを20日~2ヶ月程度摂取したところ、虚弱、食欲不振、嘔吐、体重減少などが生じて医療機関を受診。血清カルシウム値が16.5 mg/dL (中央値) 、25-OH-D値が620 mg/dL (中央値) と高値であった。摂取していたサプリメントを分析したところ、表示の4,000倍以上のビタミンD3を検出したため、当該製品摂取との因果関係が疑われたビタミンD中毒と診断された (PMID:24298009) 。

・インド出身の29歳男性 (アメリカ) が副甲状腺腺腫除去後の痛み用にとインドの医師が処方したアーユルヴェーダ製品を約15 g/日、6週間摂取したところ、摂取4週間後より、腹痛、吐き気、便秘、疲労、貧血などを呈し、製品中に含まれる高濃度の鉛による鉛中毒と診断された (PMID:22476953) 。

・高コレステロール血症、高血圧、精索静脈瘤手術の既往歴のある中年男性 (年齢不明、オーストラリア) が、コレステロール低下を謳った「Mustika Dewa」および性機能改善を謳った「Raja Syifa」の2つのハーブサプリメントを摂取したところ (摂取期間、量不明) 、体重増加、浮腫等を呈し、クッシング症候群と診断された (PMID:20738313) 。

・HIV感染症のため、リトナビル100 mg×2回/日、アタナザビル300 mg/日、アバカビル600 mg/日、ラミブジン300 mg/日を服用中の49歳男性 (アメリカ) が、違法なメタンフェタミン (摂取量不明) とともにハーブサプリメント (Africa Black Ant) を1カプセル摂取したところ、5日間継続する持続勃起症を呈した (PMID:23386071) 。

・米国の軍事施設からの患者において、様々なダイエタリーサプリメントとの因果関係が疑われる肝障害が48例報告された。このうち、12例 (男性11名、女性1名、平均29歳) がパフォーマンス強化を謳ったダイエタリーサプリメント「N.O.-XPLODE」を利用 (平均摂取期間55日) し、血中肝酵素値異常や黄疸、吐き気、嘔吐などの症状を訴えた。8名はATRO-PHEX、カルニチン、Hydroxycut、Muscle Milk、prohormone、testosterone booster、True-Massと併用していた。肝障害とダイエタリーサプリメントとの因果関係は、1名で確か (definite) 、3名で非常に確からしい (Highly probable) 、5名で確からしい (probable) 、3名で可能性がある (possible) と判断された。全例、摂取中止により回復した (PMID:24081297) 。

・糖尿病性腎症による慢性腎不全のため、8年間透析を受けている60歳女性 (トルコ) が、食欲増進目的にノハラガラシ (Charlock mustard、学名Sinapis arvensis) を150~200 g/日、10日間摂取したところ、黄疸、疲労、虚弱などを呈し、肝炎と診断された (PMID:23190524) 。

・小児期に気管支喘息の既往歴がある35歳女性 (日本) が、痩身用健康食品 (スーパーファットバーニング) を1カプセル/日摂取したところ、7日後より発熱および乾性咳嗽が生じ、58日後に胸部陰影悪化が認められて入院、加療および当該製品摂取中止により回復した。当該製品のDLSTは陽性であった。その後、自己判断にて当該製品の再摂取を開始したところ、17日後に発熱および全身倦怠感が出現、加療により回復したため、当該製品による好酸球性肺炎と診断された (N524300019) 。
なお、当該製品には医薬品成分であるシブトラミンが含まれており、厚生労働省および熊本県が注意喚起を行っている (当サイトにも掲載済み)。

・健康な25歳男性 (イギリス) が、体重減少を謳ったサプリメント (Hydroxycut Hardcore X (R)) を摂取し、12時間後から出血性下痢と腹痛を呈し、5日間症状が持続したため、医療機関を受診、潰瘍性大腸炎のため結腸切除術を受けた。この男性は、以前にも当該製品を1~2週間摂取し、下痢や腹痛を経験していた (PMID:23291814) 。

・高血圧症、脂質異常症、高尿酸血症の処方薬を服用している67歳男性 (日本) が、3年前から動植物粉末加工食品である新五浄心 (トウサンサイシンエキス末、ベニバナエキス末、ガジュツエキス末、スイテツ末、デンシチニンジンエキス末など) を1.5 g/日併用したところ、下腿の浮腫、動悸、こむら返りが生じて医療機関を受診、血清カリウム値が低値であった。当該製品摂取中止および加療により回復したため、当該製品による偽性アルドステロン症と考えられた (PMID:23459654) 。

・金属アレルギーのなかった76歳女性 (スウェーデン) が、強心目的にホメオパシー薬 (製品名Aurocard、製品中金濃度5μg/mL、推定摂取量449.3μg/月) を4ヶ月間摂取したところ、金アレルギーによる全身性接触皮膚炎を起こし、摂取中止と加療により回復した (PMID:23317995) 。

・50歳男性 (アメリカ) がボディービルダー用のサプリメントSuper Advanced Creatine Performance、Super Advanced Whey Protein、およびIncredible Bulk、Spartan 45 (アナボリックステロイドなどを含む) を2ヶ月間摂取したところ、水様性下痢、褐色尿、白色便を伴う進行性無痛性黄疸が生じて医療機関を受診、血中肝酵素値の上昇が認められ、加療により回復した。因果関係スコアであるRUCAMスコアが10 (Highly probable) であったため、摂取したサプリメントによる胆汁うっ滞性黄疸と診断された (PMID:23757384) 。

・54歳女性 (香港) が、外傷の治癒を目的に、サンシチソウ (学名:Gynura segetum) を用いた自家製ハーブワインを1~2カップ、3ヶ月間摂取したところ、腹部膨満および食欲不振が生じて医療機関を受診。因果関係スコアであるRUCAMスコアが6 (probable) であり、摂取したハーブワインよりピロリジジンアルカロイドを検出 (セネシオニン1.13 μg/mL、セネシフィリン0.83 μg/mL) したため、サンシチソウ摂取による肝静脈閉塞症と診断された (PMID:21146894) 。

・摂食障害の37歳女性 (アメリカ) が、減量を目的に市販のサプリメント製品Diurexを20粒 (カフェイン1 g、サリチル酸マグネシウム3.244 g相当) 摂取し、低カリウム血症を伴う中毒症状を呈した (PMID:21964836) 。

・21歳女性 (韓国) が、減量を目的にインターネットで入手したダイエタリーサプリメント (カフェインとシネフリン含有) を1週間摂取したところ (摂取量不明) 、意識障害および発作が生じて医療機関を受診し、当該製品摂取との因果関係が疑われるたこつぼ型心筋症と診断され、加療により回復した (PMID:23682231) 。

・42歳男性 (サウジアラビア) が、便秘のために混合ハーブ末を大量摂取したところ (詳細な摂取量不明) 、腹痛、嘔吐、息苦しさ、咳などの症状を呈し入院、その後、胃腸出血、低血圧などを伴い、3日後に死亡した。摂取したハーブ末の分析にて、トウゴマ (Ricinus communis) に含まれる毒物のリシン (ricin) が検出されたため、リシンによる中毒と診断された (PMID:22588447) 。

・健康な37歳女性 (アメリカ) が、体重減少を謳ったサプリメント (Hydroxycut(R)) を推奨量 (詳細不明) 、1ヶ月間摂取し、虚血性大腸炎を発症、製品の摂取中止により回復した。Naranjo Adverse Drug Reaction Probability Scale (有害事象と被疑薬物の因果関係評価指標) は7 (probable) であった (PMID:23596542) 。

・2011年~2012年に、高濃度の鉛を含有するインド製アーユルヴェーダ製品10種 (Pregnita、Vatvidhwansan Ras、Kankayan Bati、Garbhapal Ras×2、Ovarin、Garbha Dharak Yog、Laxmana
Louh、Garbha Chintamani Ras、Pigmento) による妊婦の鉛中毒の報告が6例 (24~36歳、インド出身5名、コロンビア出身1名) 、ニューヨークのNew York City Department of Health and Mental Hygieneに寄せられた (PMID:22914225) 。

・アトピー性皮膚炎の男児 (香港) に、標準的な医療を受けさせず、6ヶ月齢時からマルチビタミン、酵素、その他のサプリメントを与えていたところ、8ヶ月齢頃から発達の遅延が現れ、12ヶ月齢時に栄養不良と感染症により全身性湿疹、心停止、敗血症性ショックを呈した。男児が摂取していたのは、アイソトニック8 mL+ハーブティー60 mLを2回/日、アロエ20 mL+「Kindervital」 (マルチビタミン) 4 mL+プロバイオティック6匙+酵素錠剤8個+DHA4.5匙を4回/日、カルシウム+マグネシウム+亜鉛サプリメントを1回/日 (PMID:22947914) 。

・甲状腺機能低下症、強皮症の治療に、レボチロキシン、ニフェジピンを服用している45歳女性 (プエルトリコ) が、抗酸化サプリメントを標榜した製品Euforiaジュース (緑茶、アロエベラ、ノニ、クコなどを含有) を2 oz (約57 g)/日、1ヶ月間摂取し、中毒性肝炎を発症、製品の摂取中止により回復した (PMID:23257938) 。

・69歳男性 (オーストラリア) が、アリストロキア酸を含む植物として知られるウマノスズクサ属 (Dutchman’s-pipe) の根含有ハーブ製品を3回摂取し (摂取量不明) 、急性腎不全を発症した (PMID:22725717) 。

・セルトラリン (抗うつ剤) 100 mg/日を服用している38歳女性 (アメリカ) が、「速やかな体重減少」を標榜したカフェインを含むダイエタリーサプリメント「Zantrex - 3」を2カプセル×3回/日、2ヶ月間併用したところ、視野のぼやけ、けいれん大発作が生じて医療機関を受診、当該製品中止により回復した (PMID:23157583) (PMID:23374013) 。
当該製品と同じ名称の製品はエフェドリンを含むとして米国FDAより注意喚起されているため、注意が必要。

・複数の健康食品を摂取していた60歳女性 (日本) が、にんにく、卵黄、サフラワー油などを含む健康食品「にんにく卵黄」を1ヶ月程度摂取したところ (摂取量不明) 、黄疸、全身倦怠感、食欲不振などが生じて医療機関を受診。DLSTにおいて、当該製品のみ陽性、DDW-J2004薬物性肝障害スコアリングにおいてスコア10 (highly suspicious) であったため、当該製品摂取との因果関係が疑われる薬物性肝障害と診断された (101) 。

・統合失調症でリスペリドン、クロミプラミンを服用中の66歳女性 (ロシア) が膀胱炎のためにベニバナセンブリ、ラベージ、ローズマリー含有のハーブ医薬品“Canephron N”を2錠×3回/日、2週間摂取したところ、1週間後に黄疸が生じ、肝障害と診断された (PMID:21507780) 。

・17歳男性 (メキシコ) が、筋力増強や運動パフォーマンス向上のためにサプリメント製品“NO Xplode (R)”をスプーン2杯×2回/日、“Growth Factor ATN (R)”と“Simicarnitina (R)”をそれぞれ2カプセル/日、3ヶ月間摂取し、虚脱、食欲不振、吐き気、嘔吐、黄疸、暗色尿などを呈し、肝細胞障害・胆汁うっ滞混合型肝障害と診断された (PMID:22700641) 。

・29歳男性 (イギリス) が、インターネットで購入したハーブサプリメント製品“Universal N1-T”を1粒/日、2ヶ月間摂取し、被害妄想、攻撃性、聴覚や視覚の知覚障害、幻想などの急性精神病症状が出現し、利用の中止と加療により改善した (PMID:22678228) 。

・リンパ腫で化学療法を受けている46歳男性 (モロッコ) が、Aristolocia Longaを主成分とするハーブ製品“Barraztam”を約1ヶ月間摂取し、腹痛、乏尿、吐き気、嘔吐を伴う急性腎不全を発症したが、医師の助言を拒否して退院し、治療を受けずに1ヶ月後に多臓器不全で死亡した (PMID:22283868) 。

・15年前に急性肝炎 (非B型非C型) の既往歴があるが糖尿病加療歴のない70歳女性 (日本) が、約10年前より複数種のサプリメントを服用し、加えて2年前からメチオニンを70 mg/日摂取したところ、動悸・発汗が生じて医療機関を受診。同様の症状は夕食前や深夜に繰り返し生じ、糖質の摂取により軽減していた。空腹時血糖の低値 (32 mg/dL) および血清インスリンの異常高値 (4,660μIU/mL) が認められ、HLAハロタイプはDRB1*0406であった。全てのサプリメントの中止および加療により回復したため、サプリメント連用中に発症したインスリン自己免疫症候群 (IAS) と診断された (M423050010) 。

・健康な53歳男性 (アメリカ) が"天然の抗生物質"と謳ったサプリメント (硝酸銀の希釈溶液) を6時間ごとに1/2オンス、約8ヶ月間摂取したところ、進行性の顔面色素沈着が生じ、摂取したサプリメントによる急激な銀中毒と診断された (PMID:21883362) 。

・35歳女性 (ロシア) と27歳男性 (ミャンマー) が、体重減少のため、チロキシン (甲状腺ホルモン) を含有したダイエタリー・サプリメント (10~15錠/日) を2~3週間摂取したところ、低カリウム性甲状腺中毒性周期性四肢麻痺を発症した (PMID:20068442) 。

・2003年~2010年9月に、Herbalife(R)製品による肝障害の報告が20例  (平均49歳、女性16名) 、スペインのSpanish Pharmacovigilance Centres' database に寄せられており、このうち12例が入院、1例が肝硬変となった。患者が摂取した数種のHerbalife(R)製品を分析したところ、既知の肝毒性成分の特定はできなかった (PMID:21751292) 。
※この報告の関連情報
・サプリメントとの因果関係が疑われる1例の急性肝障害(症例報告)(091209)
・フィンランド食品安全局(EVIRA)がハーバライフ社製品との因果関係が疑われる肝毒性を調査(080117)
尚、この報告は過去の症例を解析したもので、現在販売されている製品における問題ではありません。

・58歳女性 (アメリカ) が糖尿病のコントロールの為にアーユルヴェーダ製品「Jambrulin」を2粒/日、5~6週間摂取したところ、腹痛、貧血、肝機能異常などを呈し、製品中に含まれる高濃度の鉛による鉛中毒と診断された (PMID:22185092) 。
※この報告の関連情報
・カナダ保健省が高濃度の鉛を含んだアーユルヴェーダ医薬品について注意喚起(060920)

・“天然ハーブ薬”と謳った製品を摂取し、4~6時間後に動悸、倦怠感、低血圧、心室不整脈、心房ブロックなどの心毒性を示した症例が12例 (17~60歳男女、インド) 報告されている。摂取したハーブは、アシュワガンダ、Asparagus abscendensが各2名、トリカブト、ビンロウジュ、グッグル他26種含有製品が各1名、不明が5名であり、3名は死亡した (PMID:21262956) 。

・バセドウ病治療で131I内用療法を受け、甲状腺機能低下の定期経過観察中に前立腺がんを発症した73歳男性 (アメリカ) が、前立腺がんの放射線治療後、ホルモン療法の代わりにハーブ製品(製品名PC-SPES、2002年に医薬品成分の混入により市場から回収)またはこれと類似の製品 (ノコギリヤシ、サンシチニンジン含有) を摂取したところ、血中L-チロキシン濃度の低下、前立腺特異性抗原濃度 (PSA) の低下、エストロゲン感受性肝臓タンパク質の増加が認められた (PMID:22232148) 。