体外受精の治療成績―妊娠率にもいろいろ見方がある?? | NPO法人 umi ~卵子の老化を考える会~

こんにちは。

培養士の“みの”です。

今回は「体外受精の治療成績の見方」をテーマにお話させていただきます♪

色々なクリニックのHPをご覧になられた方は、ご存じだと思いますが

一言に“体外受精の妊娠率”といっても、色々な計算の仕方があります。

クリニックによっては、詳しく丁寧にデータを開示しておられるところもあります。

でも「たくさんグラフとか数値が並んでてよくわからないー」と思われる方も多いのでは??

まず“妊娠率”とはほとんどのクリニックでは“臨床的妊娠率”として出していると思います。

これは、妊娠4~5週に確認出来る「胎のう」と言われる小さな赤ちゃんを包む袋がエコーで見えたかどうかで判断する妊娠率です。そのうち2割ほど(年齢によって変わります)の方は流産という悲しい結果となってしまうこともあるため、実際に出産まで至る確率“出生率”は臨床的妊娠率と比べてもう少し低くなります。

この“妊娠率”は、もちろん分子は“妊娠した方”で、分母は“治療した方”となりますが、この分母は大きく分けて二種類。

1つ目の分母は“採卵周期”:(採卵をおこなった場合の妊娠率)=(妊娠した人/採卵周期数)

2つ目の分母は“胚移植周期”:(うまく育ってくれた受精卵をお腹に戻した場合の妊娠率)

=(妊娠した人/胚移植周期数)

違いがわかりますか?

1つ目の採卵周期あたり、つまり一回の採卵をした場合の妊娠率なので、低刺激や自然排卵周期で卵が採れなかった場合や受精しなかった場合、また移植に適した卵に育たなかった周期も分母に入ります。

一方、2つ目の移植周期あたりの妊娠率では、卵が採れなかったり、うまく卵が育たずに移植出来なかった周期は除いた分母になります。つまり、「ちゃんと受精卵が育ち移植が出来た場合の妊娠率」となるので、一般的には採卵周期あたりの妊娠率に比べて、移植周期あたりの妊娠率の方が高い値が算出されます。

また、同じ移植周期あたりの妊娠率でも、採卵の方法(刺激周期か低刺激/自然排卵周期)によっては、採卵あたりの妊娠率は変わってくると考えられます。上記で述べたように、低刺激や自然排卵周期では卵が採れない場合や、採卵できても数が少ないので受精しない、その周期は移植キャンセルになってしまう場合が多くなります。一方、注射で卵巣刺激をして沢山の卵を採卵する刺激周期では、卵が採れないなんてことも起こりにくいですし、沢山卵が採れれば、それだけ移植に適した受精卵が育ち、移植するチャンスも増えます。例えば、胚盤胞での移植を考えた場合、胚盤胞まで育つ確率は30-40%(これも年齢によって違いますし、個人差があります)ですので、単純計算で10個採卵場合は3,4回移植するチャンスが得られます。1個しか採卵出来なかった場合は、その1個が胚盤胞まで育つ確率が30―40%ということになりますので、移植出来ない可能性もあります。

つまり採卵周期あたりの妊娠率は、刺激周期よりも低刺激や自然排卵周期では低くなる傾向にあると言えます。刺激方法によって、育ってくる卵の質は変わらないと言われているので、うまく受精卵が育ってくれれば、移植周期あたりでの妊娠率は変わらないのです。

その他にも、妊娠に大きく関わる年齢別のデータや、受精方法別(体外受精や顕微受精)、新鮮胚移植か凍結融解胚移植、胚のステージ別など色々な集計の仕方によって妊娠率は変わってきます。

また、クリニックによって治療を受けている方の年齢層や背景、また妊娠率の算出の仕方が違ったりするので、妊娠率のデータだけで一概に「クリニックの善し悪し」は判断できないかなーとも思います。

HPなどで公開されている治療成績を参考にする場合は、分母が何なのかや、年齢別なのかどうかなどなど、色々と注意して見てみてくださいね♪