先日森鴎外の「安井夫人」を読んだ。かの人の夫・安井息軒という人物を調べてみた。彼は飫肥藩士であったという。ここで自分は思い出した。自分は彼の名を目にしたことがあったが調べるまでは忘れていた。幕末、宮崎県の著名な志士として、宮崎八郎や宮崎滔天 とともに司馬遼太郎の「翔ぶが如く」で紹介されていたということだ。


さて、この森鴎外の「安井夫人」という作品について、森鴎外は「緩慢な叙述を恥じて、淡々とした安井息軒とその妻・佐代の生涯を描いた」とある。自分は、歴史書と言うものはこのように事実が淡々と述べられるものだと解釈している。司馬遷も「史記」の中に於いて「歴史とは述べられるべきものである」と記述している。もしかしたら、この安井夫人と言う作品は、安井夫人の生涯に意味があるのではなくて、その記述スタイルが森鴎外の歴史観を表しているのかもしれないと感じた。