<<読売新聞より引用>>

119番通報の急増に対応するため、東京消防庁は来月1日から、

救急隊員が現場で救急搬送の必要のない患者を選別する

「トリアージ(患者の選択)」制度を全国で初めて試験運用する。

 社会の高齢化もあり、搬送の遅れが重大な結果を招くケースが

増えていることから、軽度の患者や救急車をタクシー代わりにしようと

する通報者には民間搬送の利用を求める。これによって年間約5000件の

搬送が不要となる見込みで、同庁は、通報から平均7分30秒かかっている

救急車の到着時間の短縮につなげたいとしている。


<<引用終わり>>


救急隊員がトリアージによって、重症か軽症かを

判断できるようになるそうです。


医師の立場としてコメントさせていただくと、これは

非常にありがたいわけです。コンビニ外来と化している

夜間救急の改善に少しでも役立てば、医師としては

非常に働きやすくなります。


ただ、違う視点でコメントさせてもらうと

救急隊員の責任が非常に大きくなったわけですね。

少し前に、救急隊員が挿管できるようになりましたが、

先日、救急隊員の挿管失敗が問題として取り上げられて

いました。

この流れで行くと、必ずトリアージミスで救急隊員が

訴えられる日がきます。これだけは確実ですね。


例えば、何だか食欲がない老人が救急車を呼んだとします。

血圧やら心拍数やら呼吸数やらを測ってみても異常値ではないし、

話している感じでも重症そうではない、そう判断した救急隊員が

軽症ですから大丈夫、と言ってしまったら・・・・


もし、その老人が肺炎だったとしたら

もし、その老人が心筋梗塞を起こしていたら

もし、その老人が・・・・・


とかく、老人と言うものは症状が出にくいものです。

大した胸痛を訴えない心筋梗塞患者もいるのです。

(さいわい、そんな患者を診たことはありませんが・・・・)


ですから、救急隊員がほとんど何の検査もせずに

感覚だけで判断するのは非常に危険です。



もちろん、重症なのか軽症なのかを90%以上の確率で

判断することはできるでしょう。

いや、99%以上の確率でしょう。


しかし、今の日本では、たった1%でも、たった0.1%でも

判断ミスがあれば、確実に訴えられます。

下手をすれば刑事罰です。


医師だけではなく、救急隊員にまで

立ち去り型サボタージュの波が押し寄せないことを

祈るばかりです。