LAST song -one-




今日は、一月の某日。


まだ肌寒いその日、久々に会った黒髪の美女が

珍しく絶叫しながら、ラブミー部の部室へと入ってきた。



「キョーーーーーーーーーーーーーーコォォォォォーーーーーーーーーッ!!!!!!!!」



入ってくるなり、私が座っていた椅子の前にあったテーブルを

ドンッ!!!

と大きな音をたてて手をついた。



「・・・・・・な・・・・・なぁに??モー子さん??」



あまりのことに、さすがの私も、声が小さくなる。



「ちょっとっ!!!!!いったいどういうことよっ!!!!!!

コレ、アンタじゃないわよね?????」



といって差し出されたのは、何もラベルのついていない

真っ白なCDが一枚入った、透明なプラスチックケース。



「こ・・・・・・コレが、どうしたの??」



「とりあえず・・・・・聞いてくれるかしら??」



そういって、モー子さんが自宅から持参したCDプレイヤーを

出して、イヤフォンをひとつ、耳にかけた。


そのCDは、ラジオをダビングしたものなのか、

人のナレーションが入っていて、少し聞いていると

その男の人は、こういっていた。



”じゃあ、次の曲は・・・・・

○○さんからのリクエスト。


俺もなぜこの曲がこの世に出回ったかは知らないけど

とっても気に入っていて、ぜひともCD化されて欲しいと思っています。


キョーカで・・・・『For you』”



えっ??キョーカ???



そして、そのまま曲のイントロが流れ、歌が始まると――――――



っ!!!!!!!!!



私は、歌を聴きながら、固まっていた。


モー子さんの、刺すような視線を感じつつ、私はその曲を、ずっと聴いていた。




*




「キョーコ・・・・・・・終わったわよ。」



CDから流れてきた歌が終わっても、私は呆けていた。



「キョーコ・・・・・・私が聞きたいこと・・・・・・わかるわよね??」



私は、モー子さんの質問を聞きながら、言葉を発しない代わりに

軽く頷いた。



「コレって・・・・・・・アンタなの??」



モー子さんのこの質問は・・・・・妥当だと思う。


さっきの歌声は、まさしく私の声、そっくりだから。

でも・・・・・・・・・


私はあんなに上手に、歌えない。


音痴、とまではいかないけど・・・・・

あそこまで情緒豊かな歌声も持っていないし

あんな風に、人をひき付けるような歌は歌ったことが無い。


私はゆっくりと、首を横に振った。



「じゃあ・・・・・・他人のそら似って訳??

名前まで、似せてきて・・・・・

あんたのこと、意識してるのかしら??」



「・・・・・・・違うよ、モー子さん。」



今まで、歌を聞いた後何も発しなかった私が

言った、その言葉に、モー子さんは不思議に思ったようだった。



「・・・・・・・えっ??」



「キョーカは・・・・・・”杏果”って書くの。」



「何で・・・・・・知ってる、の??」



「私の・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

双子の、姉、なの。」



「はぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~~?????」



モー子さんが驚くのも無理は無い。


私に双子の姉がいるなんて・・・・・・

誰にも言っていないから。


知っているのは・・・・・ショーちゃんくらい。



「私たちの家族・・・・・・

私たちが3歳のときに離婚して・・・・・・

私が母方に、そして杏果ちゃんは、父方に引き取られたの・・・・・」



「・・・・・・・双子なのに、離れ離れにされたの??」



「・・・・・・・・うん・・・・・・・・・

離婚の原因が・・・・・・・

杏果ちゃん、だったから。」



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・へっ???」



モー子さんの、その驚いたような声に、私は微かに首を横に振った。



「・・・・・・そんな言い方したら、杏果ちゃんが悪いことになっちゃうね。


違うの・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


杏果ちゃん、小さい頃から病気持ちで、体が弱くて・・・・・・・・

いつも病院に入院してた。


お父さんは、そんな杏果ちゃんを助けたいって思っていたのに、

お母さんは・・・・・・・・

そんな杏果ちゃんに、構ってられないって・・・・・・・

それで、別れたの・・・・・・・」



「なっ!!!!!!!!」



「ひどいのは、お母さん。

お父さんも、杏果ちゃんも・・・・・・・私も、被害者なの」



そう・・・・・・・・

離婚した後、私はお母さんの期待を一心に背負って

がんばっていた。


勉強も、運動も・・・・・・

杏果ちゃんの分もがんばれば、いつかまたみんなで暮らせるって。



――――――――――――――でも


私は、出来損ないだったみたいで・・・・・・・・

お母さんの期待には、こたえられなかった。



昔のことを思い出していたら、涙が浮かんできた。


すると、モー子さんが、少しだけバツの悪そうな顔をしつつ



「・・・・・・変なこと、思い出させて、ゴメン。

その代わり、今日この後、ケーキでも食べに行きましょ!!!ねっ!!!!!!」



笑いながら、私の肩に手を置いて、励ましてくれたモー子さんに

少しだけ感謝しながら、私は思った。



久しぶりに思い出した、双子の姉、杏果ちゃんのこと。


今、いったい、どこで、何をしているのだろう・・・・・・・・・・



――――――――会いたい。


会って、元気にしているのか、

今、何をしているのか、知りたかった。






でも――――――――私は、知らなかった。


杏果ちゃんのことを思い出したこのとき、

私の運命の歯車は・・・・・・・・

軋み始めていたんだって―――――――――――――――――





つづく





久々に小説を書きまして・・・・

ちゃんと書けているのか、心配ですが、とりあえずここで今日はおしまいです。

一章のサブキャラ。いきなり名前だけ登場です。

キョーコちゃんの双子の姉、杏果ちゃんです。

もう少し話が進めば、もうちょっとちゃんとしたことがわかると思うので

もうしばらくお待ちくださいね。


後、私事なんですが、今日は、娘が始業式のため、午前中に帰ってきます。


・・・・・おかげで新年早々、3連休は更新できません。


次回更新は、一応11日の予定でございます。


連休明けも、バタバタと忙しくなりそうなので

もしかしたら毎日更新はできないかもしれません。



お休み宣言をしていた中、毎日訪問していただいた皆様。

ペタをつけてくださった方々。


本当にありがとうございます。


今年一年も、私のペースで、私の好きな妄想小説を書いていこうと思っていますので

お付き合いのほど、よろしくお願いいたします。



一応、今回も切ない話になってしまうと思うので

ラブラブが書きたいっていう禁断症状が出てきたら・・・・・


ラブラブ話を書くと思います。

(でも、基本、ラブラブは実は苦手です)


そして、ここでこっそり。

リクエストがあるなら受付しますんで・・・・

蓮キョっぽくない話を毎日更新されるのは、つらいというのであれば

こっそりと教えてくださいませ。



長々とあとがきにお付き合い、ありがとうございました。