前回のお話→one -








LAST song -two-




まさか、こんなことがきっかけで、あの人に連絡を入れるなんて、思わなかった。

・・・・・・でも、あの人しか、杏果ちゃんの居場所は知らないと思っていたから。


だから・・・・・・・・・・

自分から、電話した。



―――――母親に



電話越しでも、あの人は相変わらずで・・・・・・・・


苦しかった。


でも、やっぱりあの人は、知っていた。

杏果ちゃんのこと。


ただ、まさか・・・・・・・


お父さんが再婚して、とある県で幸せに暮らしているなんて、知らなかった。



私はオフの日を利用して、電車で二時間かかる、都外のそこへ出かけた。


教えてもらった住所を片手に・・・・・・・・


きっと、会えると信じて―――――――――








駅について、交番で道を尋ねた。

ここからそんなに遠くないみたい。


ただ・・・・・・今日は平日だから、普通はみんな学校がある。

かくいう私も・・・・・・本当は学校だった。

仕事がない日は、必ず登校していたのに・・・・・・・

杏果ちゃんのことを思い出したら、どうしても会いたくなった。


だって・・・・・・・・あんな歌、歌ってたんだから・・・・・・・・・



”ありがとう”って・・・・・・・


いったい、誰を思って、歌ったんだろう。


どうしても、聞きたかった。



私は、夕方まで駅前のビルで時間をつぶした。









夕方・・・・・・


街中に高校生たちがうようよ歩き出し、私は教えられた道を歩き出した。


目的地まで、大体20分くらい、だそうだ。


どれくらい歩いたかわからないけど、

次の交差点を曲がれば、後はまっすぐ進むだけって言うところで

後ろから、声がした。



「・・・・・・・キョーコ?」



私と、よく似た、透き通るような高い声。

こんな声を出す人は、私は一人しか知らない。


振り返ると、私にそっくりな女の子が一人。


サラサラの黒髪のストレートなロングヘアで

顔には若干の化粧を施している。


私と同じような顔つきなのに、なぜか私と違って大人っぽい感じだった。



「・・・・・・杏果、ちゃん??」



私がたずねると、その女の子はたちまちパァと笑顔になって



「そうだよぉぉぉぉ~~~!!!!!!」



こういうなり、いきなり私に抱きついてきた。



「久しぶりだねっ!!!!!どうしたの?急に・・・・・・

私、キョーコがテレビに出るようになって、ビックリしたんだよ??」



ニコニコと笑いながら言う杏果ちゃんは、とてもかわいらしくて

ホントに私と双子の子なのか、ビックリしてしまう。



「・・・・・杏果ちゃんにね・・・・・・会いたくなったから、来ちゃった。」



「・・・・・私に??でも・・・・・・急に、どうして??」



なんて言えばいいか、考え込んでいると



「・・・・・・もしかして・・・・・・

東京でも、あの歌、流れてる、の??」



すごく困った顔をしながら、杏果ちゃんに問いかけられ、私は軽く頷いた。

杏果ちゃんの言う”あの歌”っていうのもすぐに察しがついたから。



「最初はね・・・・・友達が教えてくれたの。

私が歌ってるんじゃないかって・・・・・・。

でも・・・・・・・あれは杏果ちゃんが歌ってるんだよね??」



「・・・・・・・・・・あれ、ね・・・・・・・・・

確かに、私が歌ってるんだけど・・・・・・・・・・

友達に、CDをあげたの。

その子だけに、一枚だけ。

他にもまったくCDに吹き込んでないの。

その子のためだけに、歌にしたのに・・・・・・・・・」



「・・・・・・・・・杏果、ちゃん??」




「いつの間にやら、こっちの地方のラジオ局でかかるようになって

そうしたら、リクエストがくるようになって・・・・・

私は、みんなに聞いてほしくて作った曲じゃないのにっ!!!!」



声を荒げながら、杏果ちゃんの目には涙が浮かんでいた。



「・・・・・キョーコ・・・・・・・私、ね・・・・・・・・

もう、あまり、長くないの・・・・・・・・・」



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・へっ??」



一瞬、何のことを言われたのか、わからなかった。



「お父さんとお母さんが離婚したのって、私の治療を優先したいおとうさんと

子供の教育に力を入れたいお母さんとのすれ違いが原因でしょ??

生まれた時からあった病気・・・・・・・・

あれ、治らないの。

もって、後2、3年、らしいわ。」



そんなこと・・・・・・・・知らなかった。


離婚した後、お父さんと杏果ちゃんは、杏果ちゃんの病気の治療に最適だとされる

アメリカへ渡ったけれど、2年ほどで帰ってきた。


そして、その年から、夏休みは私が住んでる京都へ遊びに来てた。


夏休みは、お父さん仕事で面倒見切れないからって・・・・・

行きと帰りはお父さんも一緒だったから、ちょっと会えるのがうれしかった。


でも・・・・・・それも10歳で終わった。


理由は知らなかったけど。

もしかしたら・・・・・・


再婚、しかたらだったのかな?



「この街に住んでるのは・・・・・

私の病気に詳しい先生が、ここに住んでるからなんだ・・・・・

アメリカの先生に教えてもらって、ここに住んだの。

少しでも、病気がよくなるようにって考えだったのに・・・・・・

病気は、治らなかった。ただ・・・・・・

私が生きている時間が、少し延びただけ。


お父さんは、それでも十分だって言ってくれるんだけど、ね・・・・・」



「・・・・・・・杏果??こんなとこで、何してるんだ???」



道端で話し込んでいた私たちに走りながら近づいてきた男の子がいた。


・・・・・・・・・誰??



「リュウッ!!!今日は部活は??」



「・・・・・・・・サボった」



「ダメじゃないっ!!!!来年もレギュラー、取れないわよ?!」



「大丈夫だよっ!!!ってそれより、何で泣いてんの??

それに・・・・・・・・こいつ、誰??」



こういうなり、思いっきり私をにらんできた。



「えっ??リュウ、わかんない??

いつも一緒にテレビ観てて教えてたじゃないっ!!!!

双子の妹の、キョーコ。

タレントの京子、でもあるわよね?!」



「はぁ???こ・・・・・こいつがぁ~~~?????」



何気に・・・・・失礼じゃないかしら??


驚きの声の後、マジマジと見つめられ続け、こっちもつらいんですけど・・・・・??



「で、この子は、再婚相手の連れ子で義理の弟君になった、龍生(りゅうせい)。

私はリュウって呼んでるの。龍生って・・・・長いじゃない。

私たちの一こ下で、バスケやってるんだよ??

結構、背高いからねっ!!!身長、いくつだっけ??」



杏果ちゃんに問いかけられても、目線はまだ私に向けたまま



「・・・・・183」



ぶっきらぼうに、そう答えた。



「それに、かっこいいから学校ではかなりもてるのに、いまだに彼女ゼロ。

・・・・・・・いったい、何がいけないんだろうねぇ~~・・・・・・・」



腕を組みながらしみじみという杏果ちゃん。



「へぇ~・・・・・・、そうなんだ・・・・・・」



芸能界、という特殊な世界で活動しつつある私から見ても

彼はかなりかっこいい。


顔も小さく、手足も長い。

そんじょそこらのモデルとかより・・・・・かっこいいかも。


まぁ、モンスター級の、某有名俳優様は別格だけれども・・・・・・・



「ねぇ、キョーコも・・・・・・リュウかっこいいと思わない??

芸能界で目の肥えたキョーコから見て、どうなのかなって思って・・・・・・」



「・・・・・・普通にかっこいいと思うよ?!」



「すごいじゃないっ!!!リュウ!!!!!!

姉として、鼻が高いわよっ!!!!!!」



私の言葉に、杏果ちゃんはキャッキャと喜んでいる。


話を聞いていたリュウ君は・・・・・・顔を赤くして照れているようだった。

でも、すぐに・・・・・



「そろそろ帰らないと・・・・・体を冷やすぞ?!」



こういって、私のほうをちらりと見た。



「あっ・・・・・でも・・・・・・・・・せっかくキョーコに会えたんだし・・・・・・・」



「なら、こんなとこで立ち話じゃなく、家に上がってもらえばいいだろ??」



「あっ!!!!!そうだねっ!!!!!!!!

キョーコは時間、大丈夫??」



そういわれて、チラッと時計を確認してから



「まだ電車の時間に余裕があるから、大丈夫。

でも・・・・・・少ししかお邪魔できないけど、いいかな??」



「キョーコなら、大歓迎だよぉ~~~!!!!!」



そういって、杏果ちゃんは私の手をとって

二人で手をつないで歩いた。


幼いときに数回、あるかないかのことを

まさかこの年になってできるとは思わなかった。



なぜか、ジンワリと心が、温かくなった。





つづく。




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何気に、二人の会話が長くなってしまいました。


ホントは立ち話でキョーコちゃん帰るはずだったのに・・・・・・

杏香ちゃんが、思いのほかフレンドリーで話しかけるので

長い長い。


2章でメインで登場するであろうリュウ君も出てきましたね。

彼の身長やら見た目とかは・・・・・

まぁどうしてこういって書いてあるのかは、

皆さんの想像通りになると思いますよ~。


どうして家に上げたのかは、今回の訪問で

重要な話をまだしていないからなんですねぇ~。


それがないと話が成り立ちませんから・・・・・


次回、余計なネタを入れないようにかけるように、がんばりますっ!!!!!



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