LAST song -six-
<杏果side>
今、目の前に、いつもテレビで見ていた俳優、敦賀蓮さんが居る。
どうして、彼をいつも見ていたのか、
どうして、いつも彼を応援していたのか・・・・・
その理由は、リュウしか知らない。
だから、今私が彼に言ったその言葉に、
本人もはじめ、私とリュウ以外が固まってしまったことに
私は予想していた。
―――今人気の俳優に、初対面でなんて失礼なことを言ってるんだろう―――
そんなことくらい、わかってる。
でも、まさか・・・・・・
俳優活動以外の、普段からも、あんな笑顔を張り付かせていたら・・・・・・
彼が、もたないじゃないっ!!!!!
彼は、いつ、本当の自分に戻れるの??
ちゃんと、心の安らぐときはあるの??
いつまでもそのままじゃ・・・・・・
いつか、あなたの心が、折れてしまいそう―――――
・・・・・・・・・そんなこと、口に出しては言えないけど。
だって、私は、一ファンだし・・・・・・
彼に、私の秘密は、教えられないから―――――――――
「・・・・・・きょ・・・・杏果、ちゃん???」
キョーコが顔を青くしながら、私のそばに来た。
(どうしてあんなこと言うのよぉぉぉぉぉ~~~!!!!
大魔王が光臨したら、どうするのよっ!!!!!)
耳元で誰にも聞こえないように話してきた。
(・・・・・大魔王って、何??)
(敦賀さん、本気で怒ると本当に怖いのよっ!!!!)
(・・・・・失礼かも知れないけど、さすがに本気で怒ることはしないんじゃないの??)
(わっ・・・・わからないわよ??敦賀さんの怒りポイント、
人と若干ズレてるから・・・・・)
(怒りポイント、ねぇ・・・・・)
(それにしても、杏果ちゃんっ!!!!
敦賀さんのファンじゃないの??
”ファンなんですっ、握手してくださいっ!!!キャーーーー!!!”
とか言うんだと思ってたけど・・・・)
(そんなこと言うために、会いたかったわけじゃないわよ・・・・)
(・・・・・・じゃあ、何のため???)
(それは・・・・・・・・・・、教えられない)
「えぇぇーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!!!」
二人でこそこそ話をしていたのだが、最後にいきなりキョーコが
大声を出したから、敦賀さん以外の人はいっせいにキョーコのほうを見ていた。
「杏果ちゃん、それ、ずるいよっ!!!!」
顔を膨らませて怒ってるキョーコは、全然怖くない。
というより、そんな顔してたら、可愛いわよね??
「(ボソッ)・・・・・・気づいてない、キョーコが悪い。」
「えっ?!杏果ちゃん???今、なんて・・・・??」
聞こえていなかったのか、キョーコは聞き返してきたが
「・・・・・何も言ってないわよ??」
私は、うそをついた。
気づいていないキョーコに言ったところで、きっと信じないから。
だから、私は言わない。
本当は、彼にだけは真実を教えておきたかったけど・・・・・
それよりも、まずは・・・・・・
敦賀さんが本当に、心の底から笑ってくれるように、願おう。
彼の、貼り付けたような笑顔が、本物の笑顔に変わるように・・・・・・
*
<社side>
今日、蓮の仕事の合間の時間を都合をつけて
キョーコちゃんに頼まれて、キョーコちゃんの双子のお姉さん、という人に会ったのだが・・・・・・
確かに、確かに顔も、声も似ていた。
けど・・・・・・まさか、
あんなことを蓮に言うとは思わなかったっ!!!!!!
キョーコちゃんには
”敦賀さんのファンみたいで、ぜひ一度会ってみたい”って
せがまれちゃったからって言ってたけど・・・・・・
本当のファンなら、あんなことを言うもの、なのか???
普通は・・・・・
”ファンなんですっ!!いつも応援しています。がんばってください!!!”
とかだよなぁ~~???
でも彼女は
”営業スマイルが怖い”とか言ってたし・・・・・
最初、怖がって本当に震えていたもんな・・・・・
本当に、蓮のファンだったんだろうか・・・・???
初対面の蓮に言いたいことだけ言って、さっさと帰っちゃうし・・・・・
って、実際のところは
蓮があまりにもショックを受けてしまって、
全く話すことができなかったから、なんだけどな・・・・・・
蓮があまりのショックで、移動するのも大変で
尚且つ今日の残りの仕事を何とかこなせたけれど
張り付いた笑顔ってヤツは、一度も出せなかったから、な・・・・・。
・・・・・・残りがドラマの撮影だけで、本当に良かったよ・・・・・・
明日からも、ちゃんと仕事できるのかなぁ・・・・・???
心配だよ、蓮―――――――――――
*
<キョーコside>
・・・・ハァ~~~
口から出てくるのは、ため息ばかり・・・・・
いったい、どういうつもりで杏果ちゃんは、敦賀さんに会いたかったんだろう・・・・・
確かに、似非紳士スマイルは・・・・・怖いわよ?!
でも・・・・・今までもずっとテレビで見てきたはずなのに・・・・・
部屋にあんなポスターまで貼っておいて、
初対面でいきなりあんな・・・・・・失礼なことを言うなんて・・・・・・・・
私の知っている杏果ちゃんでは、ありえないんだけど・・・・・・・
杏果ちゃん達が帰り、呆けたままの敦賀さんを引っ張るように出て行った社さんと
仕事があるというモー子さんと別れた後、
私はだるまやのお手伝いをして、今は部屋の中。
もう、お風呂にも入り、後は寝るだけ、なんだけど・・・・・
今日のことを考えると、なかなか寝付けなかった。
――――――今度敦賀さんにお会いしたら
杏果ちゃんの代わりに、謝っておこう――――――――
そんなことを考えていたら・・・・・・
♪~
携帯の着信音が響き渡る。
手に取り、画面を見て・・・・・・・・
思わず固まった。
”敦賀さん”
からだったから――――――――――
つづく。
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今回の話は、若干短め?です。
一応、杏果ちゃんの気持ちをメインに持ってきました。
これからは、杏果ちゃんと蓮がメインで更新することになると思います。
・・・・・キョーコちゃんは?とお思いのあなた・・・・・・
話の中では出てきますが、今回のこの話では、杏果ちゃんが一応主役(?)扱いです。
彼女と蓮の気持ちをメインに書いていきたいから、ですね・・・・
そして、次回は、キョーコちゃんと蓮の電話の会話からではありません。
(先に書いておきます。)
さ、どうして、キョーコちゃんの携帯に電話があったのか・・・・・・
次回をお楽しみにぃ~~♪