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LAST song -ten-


<杏果side>



私は、夢を見ていた。


私は、薄いピンク色の世界にいて、そこに

大きくなったコーンが会いにきてくれた。


コーンは、私に向かって


”杏果ちゃん”


といって、あのころと変わらない、満面の笑顔を見せてくれた。



キョーコちゃん、ではなく

杏果ちゃん、と言われたことが


あのときと同じ、変わらない笑顔で言われて


・・・・・・涙が出るほど、幸せだった・・・・・・







目が覚めると、まず飛び込んできたのは、白い無機質な天井。



「・・・・・・あっ!!!」



声のしたほうを見ると、目を赤くしていた、リュウが座っていた。


少し驚いた顔をしていたけど、すぐに笑顔になって



「よかった・・・・・・目を覚ましてくれて・・・・・・

倒れてから、4日も目を覚まさなかったんだぞ?

今、先生と父さんと母さんも呼んでくるから、

ちょっとだけ待っててくれよ??」



そういって、私の手から握っていたと思われる両手を離し

病室から出て行った。


手・・・・・握ってくれてたのかな??


あんなに目を赤くして・・・・・

泣いてたのかな・・・・・??


目を覚ました後で、なかなか働かない頭を使い

さっきリュウに言われた言葉を思い出していた。


・・・・・倒れてから、4日・・・・・???


えっ?!み・・・・・・4日って・・・・・・っ!!!!!!!!


きょ・・・・・今日はもう・・・・・・・・


2月13日、じゃない・・・・・・・・



私が呆然とする中、先生と看護士さんと両親が駆けつけて

私が目を覚ましたことに喜んでいた。







先生の診察を終え、両親は私が目を覚ましたことに

泣いて喜んでくれた。


今回は、かなり危なかったらしい・・・・・


そりゃあそうだよね・・・・・・


前から先生に言われてたんだもん。


”今度発作が起きたときは、覚悟をしていたほうがいい”と・・・・・・



私も、心から喜んでいた。


だって・・・・・・まだ死ぬわけにはいかない。


ちゃんと、私の気持ち伝えてないもの・・・・・・


私の、伝えたい気持ち。


ただ・・・・・・・・


敦賀さんの誕生日が寝ている間に過ぎてしまったのは

残念だけど・・・・・・



両親が席をはずしていて、リュウと二人きりになったときに

私はリュウに、お願いをした。



「ねぇ・・・・・リュウ、お願いがあるの・・・・・・」



「ん??何??」



椅子に座っていたリュウは、優しく私の顔を覗き込んだ。



「あのね・・・・・キョーコに、もう一度会いたいの。

会って、ちゃんと話がしたい。

キョーコと、二人だけで・・・・・・」



「キョーコって、あの・・・・??」



「うん・・・・・・タレントの、京子ちゃん。

前に、会ったでしょ??」



「あぁ・・・・・・でも、どうやって連絡すれば・・・・・・」



「私の携帯に、番号登録してあるから、

私の携帯からでもいいから、電話してくれる??

キョーコには、私がもうあまり長くないこと、言ってあるから・・・・・」



「・・・・・・・・わかった。」



「ありがと。」



「じゃあ、今からちょっとかけてくるから

待っててくれるか??」



「いいけど・・・・・今の時間だと仕事中かもしれないから・・・・・・

夜にしたほうがいいんじゃない??」



「・・・・・忘れるといけないだろ??」



そう言って、リュウは私の携帯を持って病室から出て行った。






<リュウside>



俺は、前に2度ほど会っただけの

杏果の双子の妹だと言う、タレントの京子に電話をするため

杏果の携帯をもって、病院の外の人気の少ないところへやってきた。


話の内容が内容だけに・・・・・

あまり人のいないところがいいと思ったからだ・・・・・


それにしても、何気に緊張する。


杏果と、同じ顔で同じ声。

性格は・・・・・

まだ2度ほどしか会ってないからわからないけど

彼女は、杏果と違って、未来がある―――――


どうして杏果は、うらやましいとか思わないのだろう。


・・・・・って、俺は杏果じゃないんだから

そんなこと考えてちゃ、ダメだろ???


周りに人がいないかもう一度確認をして

杏果の携帯を開いた。



―――不在着信 一件―――



友達は、杏果が倒れたこと知ってるはずだから、

大体メールで送ってくるはずなのに・・・・・


そう思って、着信履歴を見る。



”02/10 23:48  非通知”



・・・・・・そんな遅い時間に、いったい誰が・・・・・・??


後で、杏果に聞いてみよう。


そして俺は、携帯のアドレスから

キョーコと登録されている番号に、電話をかけた。






<杏果side>



戻ってきたリュウは、少し暗い顔をしていた。



「・・・・・どうだったの??」



「・・・・・留守電だった。」



「そっか・・・・・・・

じゃあ、メールでもしようかな??」



「あぁ・・・・・・そうだな」



そういって、私の携帯を渡してくれた。


携帯を開くと、新着メールがたくさん届いていた。

開いてみると、大体が学校のお友達から。


その中に、一件。


キョーコからもメールが届いていた。



読んでみると



”昨日、敦賀さんの誕生日だったの。

それで、杏果ちゃんにまた電話をしたんだけど

また出てくれなかったって言ってた。


・・・・・敦賀さん、落ち込んでるから

早めに連絡してあげてね?!”



――――――っ!!!!!!!!!


で・・・・・・電話、してくれたの????


ずっと、待ってたのに・・・・・・・・・・


携帯を持ったまま固まってしまった私に



「どうした・・・・・??」



リュウは心配そうに声をかけてくれた。



「な・・・・・なんでもないよ??」



と言いながらも、あまり見られたくない内容だったから

とっさに携帯を隠した。


すると―――――



「そういえば、不在着信が一件あって、

結構遅い時間だったんだけど・・・・・・

心当たり、ある??」



あっ、それだ・・・・・・・・・・・・



「う・・・・・ううん???べ、別に・・・・・・・

間違い電話、じゃない????」



「そう??ならいいけど・・・・・・??」



そういわれて、私はすぐに携帯にもう一度目線を戻した。


そして、キョーコへのメールを作りながら

チラリとリュウの様子を覗き見ると

椅子に座りながら、雑誌を読んでいた。


・・・・・・うまく、ごまかせたかな???


ちょっとホットして、もう一度携帯に目線を戻し

メールの続きを作成する。


チラリとリュウが怪しげに見つめているとは知らずに―――――





つづく。





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少しずつ、ですが話が進んできました。


今回、リュウ視点も初めて書きましたが・・・・

彼は本当に重要人物なんで、一応チェックしておいてくださいねぇ~。

でも、きっと・・・・・

皆さんにとっては好かれないやつになるの、かも・・・・??

2/8に修正しました