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LAST song -eleven-



<杏果side>



次の日。


今日は2月14日。


俗に言う、バレンタイン・デーである。

この日は学校があるから、リュウは学校帰りに

病院に寄ってくれることになった。


部活はしばらく、休むらしい。


・・・・・・私に遠慮しなくていいのにね・・・・・



そして夕方・・・・・


リュウは息を切らしながら、病室へと入ってきた。


開口一番



「昨日、電話かかってきたぞ??」



それが誰のことかはすぐにわかった。

昨日、リュウが帰るときに、私の携帯をリュウに預けたのだ。

・・・・・キョーコからきっと、電話がかかってくるからって・・・・・

キョーコは、優しい子、だから、絶対に電話してくれる。

・・・・・・会いにきてくれるって、信じてるから・・・・・・



「ホント??なんて言ってた??」



「あぁ、それが・・・・・・

今、ドラマの撮影中でなかなかオフが取れないらしい。

3月の中旬くらいなら、オフが取れるからって言ってたけど・・・・・」



「じゃあ私が、それまでがんばるしか、ないね?!」



私は笑ってこう言ったのに・・・・



「えっ???そ・・・・・そんなんでいいのかよ???

血の分けたたった一人の姉が、もうすぐ死ぬかもしれないのに

駆けつけない妹って・・・・・・」



リュウは腹立たしそうに、こういった。



「リュウ・・・・・ここは病院だから、もうちょっと落ち着いて、ね?!

私は、それでいいと思ってるわよ?!」



「・・・・・・えっ??」



「キョーコは、今仕事をしているの。

自分ひとりだけの都合で、早々休めるわけないわ。

ましてや・・・・・

私は、まだ死んでいないもの。生きてる、から・・・・・・」



「・・・・・・・・・・・・杏果・・・・・・・・」



「私のためを思って言ってくれてありがとうね?!リュウ・・・・・

でも、キョーコのことを、悪く思わないでくれる??

キョーコは・・・・・・

私の大好きな、たった一人の・・・・・妹、だから・・・・・・」



「・・・・・そう・・・・・・だな・・・・・・・」



リュウはそう言ったっきり何も話さずに

下を向いたままジッとしていた。


この重い空気に耐え切れなくなった私は、

リュウの荷物の中に、いつもと違うものを見つけた。



「あっ!!!!今日、バレンタイン・デーだったね!!!!

今年もたくさん、チョコもらってきたんだね!!!!」



少し明るめの声で言ったのに、リュウは何も返事しない。



「今年は・・・・・・本命チョコ、もらったの??」



まだリュウは、ピクリとも動かなかった。



「・・・・・・・リュウは・・・・・・

彼女とか、本当に作らなくて、いいの・・・・・・・??」



リュウはもてるのに、何故か彼女を作らない。


私が一緒に生活しだしたのは、リュウが9歳のときからだけど

リュウの好きな子の話は、今まで一切出てこなかった。


同じ学校で、たまに誰かがリュウのことが好きらしいってうわさは聞くけど

一度だって、リュウの好きな子っていうのは聞いたことがない。



「・・・・・・・・リュウ??」



私がいくら呼びかけても、リュウは返事をしてくれなかった。








その日の晩。


リュウから返してもらった携帯に、一通のメールが届いた。


相手は、キョーコから。


内容は・・・・・・・・・・・


―――――えっ?????



”杏果ちゃん、お体の具合、どうですか?

すぐに会いにいけないこと、本当にごめんなさい。

ドラマの撮影が終わったら、必ず会いに行くから

それまで、がんばっててね?!


ところで、話は変わるだけど・・・・・


今日はバレンタイン・デーだね?!

杏果ちゃんは、あげたい人にあげれなくて

やきもきしてるんじゃないか、と思って

杏果ちゃんの変わりに、敦賀さんに

とあるプレゼントをしてきましたっ!!!


きっと、その内容はすぐにわかると思うから

お楽しみにねっ!!!


あ、それと敦賀さんには、

杏果ちゃんの病気のことは伏せてあるから・・・

今は体調を崩して入院中ってだけ言っておいたよ?

誕生日の日に電話に出られなかったのは

そのせいだって、言っておいたから、安心してね!!


じゃあ、おやすみなさい♪”



・・・・・・・・ぷ、プレゼント???


な・・・・・・何したって言うのよ?!


キョーーーーーーコーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!!!!




そして、そのキョーコが敦賀さんに渡したプレゼントは

次の日の朝、わかることになった。







次の日の朝、

昨晩寝る前に、電源を落とした携帯に電源を入れると・・・・・・


一通、メールが届いていた。


中を確認すると・・・・・・・・・・


えっ????????


そんな、うそ―――――――――???



”こんばんは、敦賀です。

最上さんに、アドレスを教えてもらい

メールしました。


何でも今、入院中で電話はできないみたいで・・・・

まだ寒い日が続くから、体には気をつけて。


また、メールします。


追伸、このアドレスを登録するときは

必ず登録名を変えること。

どんな名前でもいいけど・・・・・

きっと君は”コーン”とつけるのかな?


このメールは、一応、削除しておいてください。

・・・・名前、載せちゃったから。


次からは、偽名で書きます。


敦賀 蓮”



最後のほうを読むときには、涙が溢れて

なかなか読むことができなかった。



・・・・・・ありがとう、キョーコ。


・・・・・・・・・・・ありがとう、コーン・・・・・・・・・・・・



私は、しばらく携帯を握り締めながら、泣いていた。



落ち着いたころ、私はさっきのメールアドレスを

登録した。


もちろん名前は・・・・・・


”コーン”



リュウに見られたら、ばれちゃうけど

リュウ以外にはばれないから、大丈夫よね?!



そして、初めてもらったメールは、

私の心の中に刻み込んで・・・・・・・



削除した。





私、キョーコと再会できて・・・・・

コーンと再会できて

本当に、幸せなんだよ?!


うれしすぎて・・・・・・

死ぬのが、怖くなったんだ―――――



初めて、もっと生きていたい、と思った。




つづく。





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蓮って、メールするのかな?

と何気に思いながら、書いてしまいました。


・・・・・するんだろうか??

するんだよね???


一応彼、まだ若いんだし、健全な男子、だし・・・・???


・・・・・・うう~~~ん・・・・・・


さて、この話の次回はいよいよ・・・・・

杏果ちゃんとキョーコちゃんのお話、書きます。