・・・今までの話・・・・

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☆一年生 春☆ no.1no.2  ・






この空の向こうがわ ☆一年生 春☆ no.3



章吾さんはきっと・・・・・・

私だって、気づいた。


でも・・・・・・どうして???



<章吾side>



俺は、日野章吾。22歳。


この春めでたく大学を卒業してそのまま、

自分の母校の高校教師として就任することができた。


それはひとえに・・・・・

自分の努力の結果、だと思ってる。


どうしても・・・・・・

最初は、この学校がよかったから。


俺は、どうしても知らなくてはいけないことがあったから・・・・・・


あの当時の、先生たちがまだ残っているうちに

俺の、彼女だったあいつの・・・・・

抱えていた本当の悩みを、知るために――――



5年前、高校生活最後の夏休みの最中、それは起こった。


2年の終わりから付き合っていた彼女、

葉月 愛菜(ハヅキ マナ)が、早朝学校の屋上から飛び降りた。


遺書も発見されたから、自殺と断定されたけれど・・・・・


俺は正直戸惑っていた。


そのとき、俺は・・・・・・

とある理由で、愛菜と距離を置いていたから。


あいつがあの時、何に悩んでいたのかわからないまま――――



葬式の後、愛菜の両親に呼び出された俺が告げられたこと、

それは・・・・・・・


愛菜の、妊娠。


おなかの中の胎児はまだ、3ヶ月にも満たなかったらしい。


父親はお前なのか、となじられた。


俺は、そんなの知らなかった。

父親は、俺では決してありえなかった。


あいつはいったい、誰と・・・・・??



相手を探そう、と思った。


けれども、高校3年の俺には、無理な話だった。



だから俺は・・・・・・


教師になり、もう一度この学校に来て

一から、あの事件を調べなおそう、と思ったんだ・・・・・・



それなのに――――――――


どうして、君が、ここにいるんだ???



”連条 萌香”と名乗っている君。


君は、愛菜の妹の萌香ちゃんなのは、見てすぐにわかった。


この学校の制服を着ていると・・・・・・

当時の愛菜に、本当に

よく似ていたからだ・・・・・・・・・・・・



俺は、君と、どう接すれば、いい???






今日の授業を終え、職員室に戻る途中、話しかけられた。



「初授業はいかがでしたか?・・・・日野先生??」



先生の部分をわざとらしく言うのは、

美術講師の、橘 啓悠(タチバナ ケイユウ)先生。


彼は・・・・・・俺が生徒のときからここの講師をしていて

美術部だった愛菜と、仲がよかった。


愛菜は、とても絵が上手でコンクールで入選もしていた。

だから講師の橘先生としても、鼻の高いことだったんだろう。



去年、教育実習で来たときも

何度となくいやみを言われていたから・・・・・・



「何事もなく終わりましたよ?!」



そういってそのまま立ち去ろうとしたのだが・・・・・



「今日・・・・・・1-Cの授業も、あったんですよね??」



っ!!!!


その言葉を聞いて、思わず立ち止まってしまった。



「あそこには、かわいい子が、いるはずなんですよ。

確か・・・・・・・・・あなたの、好きそうなタイプの子が・・・・・・・・」



俺は、ここでグッとこらえて立ち去ろうとした。


でも・・・・・・・



「彼女、美術部に入るそうですよ?!

楽しみですねぇ~~~せ・ん・せ・い」



その言葉に、思わず橘先生のほうを振り返ると



「おっとっ!!!!そんなに睨み付けないでくださいよ・・・・・

あなたも、彼女が何者か、気づいてるって・・・・・ことですね。」



「~~~っ!!!!!」



「どうして彼女がココに来たのか、

俺は思いのほか興味がありまして、ね・・・・・・・

彼女にとっても、ココは、つらい過去の場所でしかないはずなのに・・・・・」



「・・・・・・・これ以上、何か言うのはやめてもらえませんか?」



「(クスリ)・・・・・そうですね。

一応、同じ職場なんですから、これ以上あなたを怒らせないほうが

自分の身のため、ですね・・・・・

それでは、また。」



そういうと、職員室とは反対側へ歩いていった。


きっと、彼のことだから美術室にでも行くのだろう。



・・・・・・ハァ~~~~~~。


こんなんで、やってけるのかな?俺・・・・・・・







<萌香side>



放課後になり、今日から二週間、部活の仮入部期間が始まった。



「ねぇ、萌香はどこの部活にするの?」



後ろの席から美波が聞いてきた。



「・・・・・・・美術部」



「えっ???な・・・・何で???

うちら芸術の選択、音楽にしてるのに・・・・・・

何でまた美術??」



「・・・・・・絵に興味があって・・・・・」



「じゃあ、どうして芸術は美術じゃなくて、音楽にしたの??」



「・・・・・・・・音楽のほうが、成績いいから・・・・・・」



「・・・・・・そう、なの??」



「そうなの・・・・・・・・

そういう、美波は何部にするの??」



そういうと、美波はニヤリ、と笑って・・・・・



「ホントは、女子サッカー部があれば最高なんだけど

ないから、同好会を作るか、サッカー部に入ろうと思って・・・・

今から男子のサッカー部に見学行くんだっ!!!」



サッカー部、かぁ・・・・・


確か章吾さんも、高校時代サッカー部だったよなぁ~、

・・・・・・・って、何思い出してんのよ?!

私・・・・・・・・・・・


私の初恋は、あの時終わったの。


お姉ちゃんの、死とともに―――――



それ以降、私は誰も好きになることはできなかった。


―――――怖いのだ。


また、誰かを傷つけるのが・・・・・・・・・・・・・




no.4へ、つづく・・・・・






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ちょっとずつ明らかになっていく、過去。

そして、それぞれ抱える心の傷。


今回は、章吾さん視点です。

いかがだったでしょうか?


彼がどうして愛菜と距離を置いていたのか、は・・・・・

いずれわかります。


では、また次回、お楽しみにしてくださいねぇ~^^