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LAST song -twelve-



<杏果side>



病院に運ばれてから、一ヶ月が過ぎたころ、

キョーコが私に会いに、入院中の病院に来てくれた。


今日は、リュウも学校と部活があるから、病院に来るのは遅いだろうし

おば様も、用事があったから、ちょうど誰もいなくて

二人きりで話をすることができた。


キョーコは、お見舞いの花を花瓶に生けなおしてくれた。



「・・・・・杏果ちゃん・・・・・・具合、どう?」



「・・・・・・・わかんない」



「えっ??」



私の言葉に、だんだん顔を青くしていくキョーコ。



「前に、今度倒れたら危ないよって言われてたの・・・・・

今回、倒れたとき、実は結構危なかったんだって。

でも、私、まだ生きてるから・・・・・」



キョーコは、私の言葉に何もいえないでいた。


・・・・・そうよね。


最近、久々にあった双子の姉が、もうすぐ死ぬなんて

いきなり言われちゃ、困っちゃうわよね。


何年も前に言われてて、覚悟を決めていた私とは、違うから・・・・・・



「キョーコを呼んだのは、キョーコのこと、心配だったから・・・・」



「・・・・・・心配??」



「そう・・・・・・・」



私はここで、キョーコの顔をジッと見つめた。


キョーコの顔には、多少の戸惑いが広がっていた。



「・・・・・・な・・・にが・・・・・心配、なの・・・・・・???」



「だって、キョーコ・・・・・・”ラブミー部”なんでしょ??」



「・・・・・えっ???」



「私を愛してって・・・・・・・あの人の、せいじゃないかって。

同じ親から生まれたのに・・・・・育てた人の違いで

私には好きな人がいて、キョーコには・・・・・・

好きっていう概念から、遠いところにいる。」



「・・・・・・・杏果、ちゃん・・・・・・」



「・・・・・・ゴメンね。

元はと言えば、私の病気のせいだったね。

両親の離婚。

でも・・・・・・きっと、私の病気がなくても、両親は離婚してたんだと思う。

ただ・・・・・・そうしたらきっと、あの人はキョーコじゃなくて、私を選んでた。

そうしたら、キョーコにも、親に愛されることを知ることができたんだね・・・・・・」



キョーコは、私のこの言葉に、何も返さないでいた。


あの人・・・・・・

私たちを産んだ母親は、私たちを愛してなかったわけじゃない。

けど・・・・・

どれだけ優秀か、そうじゃないかにとらわれすぎてただけ・・・・・


その教育方針に・・・・・キョーコは逃げたいのに、逃げられなかった。


愛されたいのに・・・・・

その愛を感じることができなかった。



「キョーコ・・・・・・・・」



私は、こんなことを言うために、呼んだんじゃないんだよ??



「今から言うこと、よぉ~~っく、聞いてほしい。」



キョーコの両手を取り、ジッとキョーコの目を見ながら言うと

キョーコは何も言わない代わりに、コクンと頷いてくれた。



「私・・・・・・・・敦賀さんのこと、好きなの。

芸能人にあこがれる、一般人のファンとしてではなく・・・・・

一人の男性として、好きなの。」



私のこの言葉に、キョーコの表情は、かすかに揺れた。


驚きと、戸惑いと・・・・・不安。


そんなものが、感じられた。



「でも、ね・・・・・・

私は敦賀さんに、自分の想いを伝えるつもりもないし

敦賀さんと思い出を残したいとか、そういったことは何もないの。


ただ・・・・・・私が、彼を好きなだけ。

それだけで、十分なの。


・・・・・・・私としては、ね・・・・・・・・


私は、もうすぐ死んじゃうわけだし・・・・・・

私の今の望みって言ったら、

敦賀さんの幸せと・・・・・・・


キョーコの幸せ。


ただ、それだけなんだ・・・・・・・」



キョーコ、これから言うこと、ちゃんと聞いて??

そして、ちゃんとあなたの心に、届いてほしい。



「敦賀さんが、今、誰を好きなのか・・・・・わかる??」



こういうと、明らかにキョーコの表情が変わった。



「わ・・・・・・・わからないし・・・・・・・・

実は・・・・・・・・・・・

杏果ちゃん、じゃないの??


最近、敦賀さんにお会いしても、いつも杏果ちゃんのこと聞かれるし・・・・・」



キョーコは、今の言葉を、どんな顔をしながら言っているのか気づいてないのかしら??

とっても・・・・・不満そうな顔、してるのよ??



「私は、東京で会わせてもらった時に、すぐわかったよ??

敦賀さんが、いつも誰を見ているのか・・・・・

誰のことを、想っているのか・・・・・・・


そして、キョーコの気持ちも・・・・・・。」



「・・・・・えっ??」



「ショーちゃんとのことで、恋する気持ちを鍵をかけてしまいこんでしまったからって

恋をすることをとめることは、できないんだよ??

・・・・・・自分の気持ちに、正直になってほしいの・・・・・・」



「な・・・・・・・・何を・・・・・・・言ってるの???」



「私は・・・・・・・・

二人の幸せを願ってる。これからも、ずっと・・・・・・・

だから、キョーコに、自分の気持ちに素直になってって言いたかった。」



「・・・・・・ちょっと待って???

私はいつだって、自分の気持ちには素直だよ??

今までだって、これからだって・・・・・・・・

だから・・・・・・・・・」



「なら、敦賀さんに、自分の気持ちを伝えること、できるよね?!」



「・・・・・・・・えっ????」



「好き、なんでしょ???」



私のこの言葉を聞いて、呆然と立ち尽くすキョーコ。

かすかに


”・・・・・ちが・・・・・”


つぶやく声が聞こえる。



「敦賀さんは、キョーコのこと、きっと好きよ?!」



するとキョーコは、顔を真っ赤にしてしまった。



「そ・・・・・そんなわけ、ないじゃないっ!!!!!!」



「絶対に、そうだって。

信じてよ・・・・・ね?!」



ムムムゥ~~~~ッとした顔をして考え込むキョーコ。


この後、何度言ったって、彼女は私の言葉を聞き入れてくれなかった。



そして、電車の時間に遅れるといけないから、と

そのまま病室を後にした。


私の、伝えたかったことは、ちゃんとキョーコに届いているのか、わからぬまま・・・・・





<キョーコside>


杏果ちゃんのお見舞いにやってきた。


前よりも一段と青白い顔をして・・・・・

いかにも病人、といった感じだった。


そして、彼女に言われたのだ。


”敦賀さんのことが好き”

でも

”敦賀さんは、私のことが好き”

で・・・・

”私も敦賀さんのことが好き”

なんだろうと―――――


私は、そんなこと、わからないから

その言葉には、戸惑うしかなかった。


杏果ちゃんの望んでいることは

敦賀さんの幸せと、私の幸せ・・・・・・・


杏果ちゃんにしてみたら

私たちが結ばれるのが、一番うれしいみたいだけど・・・・・・


そんなこと、できないよ。


だって、私は・・・・・・・・


”敦賀さんが好きなのは、杏果ちゃん”だと思っているから・・・・・・


最近、敦賀さんに会うと、必ず杏果ちゃんの話題になる。


”まだ入院しているのか”とか

”元気にしているのか”とか・・・・・・


その話題をされるたびに・・・・・

何故か心が苦しくなるの。


どうしてなんだろう―――――



「・・・・・・あっ・・・・・・・」



考え事をしながら、病院から出ようとしていたときに

前から来た、リュウ君に会った。



「・・・・・・もう、帰るのか??」



「電車の時間があるから・・・・・・」



「・・・・・・・話があるんだけど・・・・・・・・

駅まで一緒に行っても、いいか??」



私は軽く頷き、リュウ君と一緒に駅まで行った。


彼の話を聞くために―――――





つづく。





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杏果ちゃんがキョーコちゃんにお話することって

前からずっと決めていたんですが

いざ話をさせてみると

思いのほか淡白な話になってしまいました。


この話で、杏果ちゃんが、

もし病気がなかったら、お母さんが引き取ったのは

私のほうだって言っていたのは

杏果ちゃんのほうが、小さいときに何でもできた、という設定だからです。


キョーコちゃんは、確かに勉強もスポーツも料理も

何でもこなしちゃうような子ですが

お母さんにかまってほしいから、と小さいながらに努力をしていたからだと

思うんですよね。


そして、お母さんが、そのキョーコちゃんの努力に何も言わず

結果だけにしか目にとらわれているので

身近にいる杏果ちゃんが努力もせずにできちゃう子なら

比較されて、ほめてもらえないんじゃないのかな

と思ってるんですね。


あんまり、そんな子供時代の話をすることができないので

今回はココで補足、とさせていただきました。


ちなみに、私は努力家のほうが、好きです。