・・・今までの話・・・・

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☆一年生 春☆ no.1no.2no.3no.4






この空の向こうがわ ☆一年生 春☆ no.5



章吾さんに言われた言葉が本当だと確信したのは、次の日のこと。


この日は、初めての選択の芸術の授業

私たちのクラス1-Cは”音楽”の授業があった。


音楽の授業が終わり、音楽室から教室へ移動しようと席を立ったときに、

音楽の講師、白石 理子先生に呼び止められた。



「・・・・連条さん。ちょっと、お話したいことがあるから

放課後、この第一音楽室ではなく、第二音楽室のほうに来てもらえないかしら?」



「・・・・・・第二音楽室、ですか・・・・・??」



入学してまだ二週間足らずの私は、

まだ第二音楽室がどこにあるのか、わからなかった。



「第二音楽室は、こことは違って、B棟の3階の一番奥にあるわ。」



「・・・・・3階の、一番奥、ですか・・・・・」



何でそんな遠いところに・・・・



「昔は、そっちで音楽の授業をしていたのよ?!

このA棟が改築されたときに、音楽室を増設して

今は新しいこちらを使うようになったのよぉ~~?!」



「・・・・・そう、なんですか・・・・・」



昔の学生さんは、そんな遠いところまで移動して、大変だったんだなぁ~。


なんて思いながら、私は放課後、第二音楽室へ行くという約束をした。







そして、放課後・・・・・


部活が始まって初日以外は、毎日部活に遅刻なんて

顧問の先生に怒られそうだな、と思いながら

B棟の第二音楽室へと向かう。


軽くノックをして入ると、白石先生が待っていた。


第二音楽室は、日ごろ使われていないせいか、机や椅子は隅に片付けられていて

教室の中にピアノがポツンとひとつおいてあるだけだった。



「・・・・・・ここ、寂しいでしょ。」



「はい・・・・・」



「連条さん・・・・・・

私、あなたとちょっとお話がしたかったの。

いきなり、本題を言い出すけど、いいかしら??」



「・・・・・はい。」



何を言われるのだろう、と固唾を呑んで待ち構えた。



「あなた、ホントは・・・・・・

葉月 萌香さん、でしょ??」



「えっ・・・・・・」



ど・・・・・・どう、して???



「実は・・・・・5年前の夏に行われたピアノコンクールにね、

私の生徒が出場していたの・・・・・

あなたが、グランプリをとった、あのコンクールに。」



「そ・・・・・・そう・・・なんです・・か・・・・・・」



「あの時の演奏は、本当に素晴らしくって・・・・・

大きくなってピアニストになるのが楽しみだって

勝手ながらに、楽しみにしていたの・・・・・・。


でも・・・・・・・その後、お姉さんの事件があって

ピアノが弾けなくなった・・・・・って伺って、ね・・・・・」



「・・・・・・・いったい、誰から・・・・・・??」



「あらっ!!!!

連条くんよ?!あなたが入学してくるからって相談されたの。

彼、あなたがもう一度ピアノを弾けるようになってほしいって

気にしていたわ。」



「えっ?!・・・・・・透唯が・・・・・・???」



「そう・・・・・・・・

だから、もし今萌香さんが抱えている心の傷が癒されて

もう一度ピアノを弾きたい、と思えるようになったら・・・・・・

ここのピアノを、あなたに貸そうかと思って・・・・・」



「この・・・・・・ピアノ、ですか???」



「そうよっ!!!今は・・・・・誰も使ってないけれど

第一音楽室のピアノと一緒に、定期的に調律してもらってあるから

全然大丈夫よ?!

それにここだと、B棟であまり目立たないから・・・・・

あなたが個人で練習していようと、見つからないでしょ?!」



「で・・・・・でも・・・・・・・

私、まだ・・・・・・・」



「今は全然弾く気が無くたって、

この3年間の間に、弾きたくなると・・・・・・

いいえっ!!!絶対に弾きたくなるはずっ!!!!!


だって、ここに来たのは、5年前のお姉さんの事件に向き合うため

なんでしょう???」



「っ!!!!!知ってるんですか???」



「私も・・・・・当時ここの先生をしていたのよ?!

だから、あの時自殺した生徒が葉月さんだって知って・・・・・

あなたのお姉さんだとわかったの。


それに、今のあなたは、5年前のお姉さんに良く似ているわ。


きっと、当時から残っている先生方はみんな・・・・・

あなたが愛菜さんの関係者だって、気づいているのかもね・・・・・・」



「・・・・・・・・」



昨日、章吾さんが言っていたのは、コレだったんだ・・・・・・


”似ている”って・・・・・・・


お姉ちゃんと、似ているんだ・・・・・・・


全然、気づかなかった。



「・・・・・・白石先生・・・・・・

ありがとうございます。

今は、私はピアノを弾きたいとは思えないんですが

もし・・・・・・気持ちが落ち着いて、弾きたくなったら

ここのピアノ、借りてもいい、ですか??」



「ええっ!!!!もちろんっ!!!!!!

ここの鍵は、私が管理しているから、いつでも言いに来てねっ!!!!!」



白石先生とお話して・・・・・・

少しだけ、心が軽くなったような気がした。







いつになったら、もう一度

大好きなピアノに触ることができるのだろう・・・・・


傷ついた心のままで奏でた音は・・・・・・

あまりにも、悲しすぎるから―――――





no.6へ、つづく・・・・・





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今日は短めになってしまいまして、すいません。


ちょっと出かけておりまして、PC触る時間が短かったのと・・・・

軽い風邪症状が出始めまして・・・・・

ちょっぴり頭が働きません。


誤字脱字はないとは思いますが・・・・

あったら是非教えてくださいね。