・・・今までの話・・・・

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この空の向こうがわ ☆一年生 春☆ no.6


5月になった。

部活は仮入部の期間も終わり、私はそのまま美術部員になった。


そして、美波が立ち上げようとしていた”女子サッカー部”は

なんと、10人以上部員が集まり、正式に部になったのだが・・・・・


”日野先生目当て”の人がほとんどらしく、美波は、ちょっと不満げだった。


ゴールデンウィークも過ぎ、しばらくしたら、初めての高校での試験。

中間考査、が始まる。


試験一週間前から、部活動は活動休止になるから

今日は最後の休み前の部活、と思い、美術室へとやってきた。


ガラン、とした美術室。


いつもは、先輩数人が必ず先に来ているのに

とりあえず何もすることの無い私は

美術室にかかっている一枚の絵を眺めていた。


澄んだ青い空の絵。


この絵は、私のお姉ちゃん

葉月 愛菜が高校時代に入賞した絵なんだそうだ。


大体、出品して入賞した絵は、卒業のときに本人に返されるのだが

お姉ちゃんは、卒業できなかったから、ココに飾ってある。


私が美術部員になったのは・・・・・

こうやっていつでも大好きだったお姉ちゃんの絵を

眺めることができるから、だったりする。


しばらく眺めていると


ガラッ・・・・・


扉の開く音がして振り返ると、顧問の橘先生が入ってきた。



「・・・・・あれっ・・・・・・、連条。

・・・・・どうした??」



私がいて驚いた様子を見せながらも、先生は私のほうに近づいてきた。



「えっ??先生。どうしてそんなに驚いてるんですか??」



「だって・・・・・今日から部活は休みだぞ??」



「えっ???部活が休みなのは、明日からじゃあ???」



「・・・・・・美術部は、今日から休みにしたんだけど・・・・・・

お前、この前の話、ちゃんと聞いてなかったな??」



へっ???

・・・・・・全然、知らなかった。


他の部活同様、明日から休みだとてっきり思っていたのに・・・・・



「・・・・・すいません・・・・・・、聞いてませんでした。」



ペコリと頭を下げ謝ると、クスクスと微かに笑い声が聞こえてきた。

ガバッと顔を上げると、橘先生が、笑っていた。


実は、この先生が笑っている姿は、はじめてみた。


橘先生は、今年30歳になる人なのだが

ちょっととっつきにくい感じのあるくせに

妙に色っぽいとかで・・・・・

女子生徒の中で、実は結構人気がある。


美術部員が女子が多いのは、そのせい。

でも、大半は途中で辞めていくか、幽霊部員へとなってしまうそうだ。

コレは、2年生の先輩に教えてもらった知識、だけど・・・・・



「先生でも・・・・・笑うんですね」



ボソッと小さな声でつぶやいたのに、それを先生は聞き逃さなかった。



「俺だって、笑うときには笑うよ??

まぁ、確かに・・・・・・普段はあまり笑わないな・・・・・。」



「・・・・・どうして、笑わないんですか??」



気づいたら、問いかけていた。

答えを聞いて、どうするわけでもないのに・・・・・・



「・・・・・・・・・」



先生は案の定、困ったような顔をしながら少し考えていたけれど



「・・・・・ただ、生きているだけ、だからじゃないか??」



「・・・・・・・・・・えっ???」



「今の俺には、夢も希望も・・・・・未来さえ無いからな・・・・・・

ただ今を生きているだけ・・・・・

そんなの、つまらないだろう??」



先生の言葉が、妙に私の心に重くのしかかった。


夢も

希望も

未来までも

なくしてしまった―――――


それは・・・・・・・・

悲しすぎませんか??



「っ!!!!な・・・・・泣くなよ、な??」



橘先生があわてて駆け寄ってくれた。


私はいつの間にか、涙を流していたようだった。


先生は私の前まで来ると、頬に手を伸ばし

涙を指で拭ってくれた。



「・・・・せん・・・・せ??」



急に触れられてビックリした私は

ビックリして先生を見上げたけれど

先生はいつもよりも真剣な眼差しで私を見つめていた。


何度も流れ出る涙を、指で拭いながら

先生は私の頬を撫でてくれる。


こんなこと、今まで誰にもされたことが無いから

微かにほほが上気して・・・・・

心臓もかなりドキドキしていた。



「・・・・・連条は・・・・・・

どうして、ココに、来たの???

アイツと、一緒??

真実を今更知ったって・・・・・・

どうしようもないのに。」



一瞬、何を言われたのかわからなかった。



「愛菜は・・・・・・・戻ってこないのに・・・・・・」



苦しげな表情でこうつぶやく橘先生を前にして

私は・・・・・・何もすることもできず

声をかけることもできずに・・・・・

ただ呆然と、立ち尽くすことしかできなかった。


橘先生が、お姉ちゃんのことで傷ついているということは

十分にわかった――――






私は、

夢をなくしてしまったけれど

まだ・・・・・・

希望は捨てていない。


いつか、もう一度・・・・・・

ピアノを弾きたいと思えるときが来る。


心の傷が癒されるときが来ると・・・・・・信じてる。


だから、私はお姉ちゃんがどうして、

あの日自殺をしたのか、知りたかった。


あの日、あの朝、屋上で

何を考えていたんだろう。


青い空の下・・・・・・

何を想っていたの???


あの、空の絵を見れば

少しはお姉ちゃんの心に、近づけるのだろうか・・・・・・




つづく・・・・・・






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今回は、先生は先生でも、顧問の橘先生のお話です。

一応彼は萌香ちゃんのお姉さま、愛菜が

美術部のときにも顧問をしていたんですねぇ~。


ちょっとずつ明らかになる、過去の人間関係。


そして、萌香ちゃんはこの中でどんな恋をしていくのでしょうか??


ちゃんと、仕上げられるようにがんばりたいと思います!!