前回のお話→one - two -three - four -five -six -seven -eight -nine -ten -eleven -twelve -thirteen -








LAST song -fourteen-



キョーコが私のところに来てくれた日から数日がたち

今はもう、4月になっていた。


今日は朝から体の調子がよかったから

久しぶりに外へと連れ出してもらった。


今年は例年よりも早く陽気が温かくなったからか

もう、病院にある桜は、満開を迎えていた。



まだ春休みで、リュウは午前中から部活があるからと

今日は、看護師さんに車椅子を押してもらっている。


桜並木のそばまでつれてきてもらうと

看護師さんの胸ポケットから、バイブ振動のような音が聞こえてきた。



「あっ・・・・、杏果ちゃん。

ちょっと呼び出し入っちゃったから、病室戻ろうか??」



申し訳なさそうに看護師さんに言われたのだが



「今日は、体の調子も良いし、もう少し綺麗な桜を見ていたいから

しばらくココに居ても、良いですか??」



ちょっとだけ、わがままを言ってみた。

すると、看護師さんは



「・・・・・じゃあ、用事が終わったらすぐに戻ってくるから

体、冷やさないようにしていてよ?!」



「はぁ~~~いっ!!!ありがとうございますっ!!!」



私のお礼を聞いて、看護師さんは急いで病院の中へと駆けていった。



「・・・・・・ホントに・・・・・・綺麗・・・・・・」



青空の下、下から見上げる形で見る桜は

空の青で淡いピンクが引き立っていて

うっとりするほど、美しい。


しばらく眺めていたとき、

急に大きな風が吹き、

あたり一面、桜の花びらが風に舞い上がった。


風に舞う、桜吹雪を眺めていると

その遠めに、一人の人影が、近づいてきていた。


・・・・・・・あ・・・れ・・・・・・・・・・



「・・・・・・・・ど・・・・・し・・・て・・・・・??」



近づいてくる人が、誰かわかると同時に、私はつぶやいてしまっていた。


もう、会うこともないと思っていたその人が

今、私の目の前に居るのだから・・・・・・・


桜の花びらが地面に全部ついてしまう頃、

彼は私の前に立ち

微笑みながら、こう、言ったんだ・・・・・・



「・・・・・・久しぶりだね・・・・・・杏果ちゃん。」



私は、たったその一言で・・・・・・・

泣いてしまった。


だって、だって・・・・・・・・・

あなたに、私の名前を言ってもらうことは、初めてだったから。


いきなり泣き出してしまった私を、

あなたは何も言わず、そっと近づき

頭をポンポンとあやすかのように叩いてくれた。


その、あなたの優しさで・・・・・

もっと涙が溢れてしまったのは、仕方ないでしょ??


ホントは、いろんなことを話したかった。

私のことを知ってもらいたかったし・・・・・

あなたのことも、知りたかった。


でも、最後にもう一度会えたことが

うれしくて、うれしくて・・・・・・

どうしようもないほど、涙が溢れて・・・・・

私は、何も言うことができなかったの。


しばらくして、ちょっと涙が収まりかけたころ



「・・・・・もう、時間が無いんだ・・・・」



この言葉に、顔をあげると

本当に残念そうな顔をしたあなたがいたから

心がズキンと痛くなった。



「今から、戻って・・・・・・仕事があるから・・・・・・」



私は、目の前に居るあなたの服を少しつかんでしまった。


まだ、行ってほしくない・・・・・


いけないことだとは思ってる。

けど・・・・・・・・

今日できっと、最後だって、わかっているから。


おさまりかけていた涙がまた滲み始めたとき

ギュッと・・・・・・

きつく抱きしめられた。



「・・・・・・・・・・・・・ゴメン・・・・」



その一言は、何に対して謝ったのか

私にはわからなかったけど・・・・・


滲んでいた涙が、またこぼれしまった。


スッと体を離したあなたは



「・・・・・・もう・・・・・行くよ。」



泣いてくちゃくちゃになった私の顔を見ながら

言ったあなたの瞳は・・・・とても悲しそうだった。


立ち上がって背を向けて歩き出したから・・・・・



「・・・・・コーンッ!!!!!」



今のあなたの名前を呼んだ。


あなたは立ち止まって、振り向いてくれた。



「・・・・・もう一度会えて、うれしかった。

本当に・・・・・・あり・・・・が・・・と・・・・・ぅ・・・・・・」



最後のほうは涙声で何を言っているのか聞こえづらかったと

思うけど、コーンは笑ってくれたから・・・・・

きっと私の言葉は伝わったんだと思う。



いつもは漆黒の髪と瞳でみなを魅了しているあなたが

今、この瞬間だけ・・・・・

昔のコーンになって、私に会いに来てくれたこと・・・・・・・


ホントに、ホントに・・・・・・

うれしかったんだよ?!


ありがとう、コーン。

・・・・・・・・・・・・大好きだよ


――――――――さようなら―――――――――






<キョーコside>



今日は4月になって初めての日。

所謂、”エイプリルフール”って言われている日。


一日仕事をしていて、いろんなところでうそを疲れて

辟易していたところに・・・・・

一本の電話が入った。


電話の相手は・・・・・・・・リュウ君だった。


今日という日が何の日か知っていての言葉だと

最初は思った。


けど・・・・・・それは、真実だったんだ。



「杏果が・・・・・・・・息を引き取った」



ずっと会っていなかった、双子の姉が

久々に会えたと思ったのに・・・・・・


会えて一年も足らずに、

今度は永遠に会えなくなるなんて、思わなかった。


頭の中が、真っ白になる。


私の半身が、居なくなってしまったかのような

虚無感が漂ってくる。



次の日の朝、気づいたら電車に飛び乗っていた。


―――――杏果ちゃんに、会うために。




つづく。




web拍手始めました♪

よろしければ、ポチっと押してみてください。

作者の励みになります。








ちょぉ~~っと時期はずれな話になってしまいましたが

どうしても、最後は桜の木の下が良かったんです。


話でも少し触れましたが

青い空には、淡いピンクの桜の色が良く生えます。


そして、その下には金髪碧眼のコーン(クオン)。


・・・・・・色彩的にばっちりですっ!!!!

(ただ単に、私のビジョンがこうなってしまっただけです・・・///)


実は、この桜のくだりは、去年から考えていたもの・・・・

どうしても、桜の木の下で最後のお別れをしてほしかった。


杏果ちゃんが旅立ってしまい・・・・・

この話も、もうちょっとで終わりです。

この後も、いろんな人に嫌がられるかもしれませんが

続けますっ!!!!続けるんだぁぁぁぁぁ~~~っ!!!!!!!!