・・・今までの話・・・・

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この空の向こうがわ ☆一年生 春☆ no.7


中間考査も無事終わり、部活動がまた始まった。

美術部ももちろん始まったわけだが・・・・・

橘先生にどう顔をあわせればいいのか考えていたのに

実際会ってしまうと、今までと変わらずに接してくれて

少しだけ安心していた。


そんな、5月の終わり・・・・


今日は初めての日直だったのだが

何故かこんな日に限って・・・・・・

日直の仕事があるのだ。


それは、数学のノートを集めて、数学準備室に居る先生に届けること。


数学の先生・・・・・・日野先生に・・・・・・・。


かぁ~なぁ~り~、イヤなのに、

一緒に日直だった男子はそそくさと帰っちゃって

一人数学準備室までやってきてしまった。


コンコン・・・


扉をノックすると、中から”どうぞ”と呼ばれたから



「・・・・失礼します」



ガラッと扉を開けると、そこには・・・・・

章吾さんしか居なかった。



「・・・・・・連条。どうした??」



まさか章吾さん一人しか居ないなんて思ってもいなくって

(他の数学の先生が居るもんだと思っていた)

入り口で固まってしまった私に、章吾さんは驚いて聞いてきた。



「あ・・・・あの・・・・・・数学のノートを・・・・」



「・・・・・今日の日直って・・・・・連条だけ??」



「イヤ・・・・その・・・・・和田くんなんですが

用事があるとかで帰っちゃって・・・・・」



「・・・・・一人じゃ重かっただろう??

悪かったな・・・・・」



と言って、私が持っていたクラス全員分のノートを持っていった。



「・・・・じゃあ、失礼します。」



ノートも届けたし、さっさと立ち去ろうとしたそのとき、

ガシッと腕をつかまれてしまった。



「・・・・・・・」



あまりのことに、何もいえないでちょっとパニックになっていると



「・・・・・ちょっと話があるんだけど・・・・・・」



後ろから、小さな声で言われて振り返った。


そこには、少し顔を赤くして真剣な眼差しの章吾さんがいた。



「・・・・・話って・・・・・なんですか??」



ジッと章吾さんの目を見つめながら言うと



「そこ・・・・座ってくれる??」



小さな対面式の応接セットみたいなソファを指差されて

私はおとなしくそこに座ると

開けっ放しになっていた数学準備室の扉を閉めて

章吾さんがやってきた。


前のソファにドカッと座ると



「なぁ・・・・・どうして、ココに着たんだ??」



これ、前にも誰かに聞かれたような気がする・・・・・・



「ココって、この学校ってこと、ですよね?!」



「あぁ・・・・・・・連条にとっては、つらいだけの場所じゃないのか??」



「・・・・・・」



まぁ、普通はそう考えるんだろうね・・・・・

でも・・・・・・・・



「それはそのまま、日野先生にお返しします。」



「っ!!!!」



「先生がまだ大事にその指輪をしている時点で

この場所で先生をしてらっしゃることのほうが

私には理解しがたいんですがっ!!!」



実は、章吾さんは指輪をしている。

左手の薬指に・・・・・・


でも、その指輪は、お姉ちゃんとのペアリング。


他の生徒たちは、実は先生は結婚してるんだなんて

思ってるけど、実際は違う。


だって、その相手はもう・・・・・・

この世界には居ないんだから・・・・・・・



「・・・・・・俺のことは、いいだろう??」



「先生がどうしてココに居るのか私がわからないように

先生にとっても、私がココに居るのかがわからないんですっ!!!

それなのに、自分だけ知ろうだなんて、ずるいんじゃないんですか??」



「・・・・・・」



私の言葉に、何も言い返せないのか

章吾さんは黙ってしまった。



「何も無いようでしたら、私は部活に行きますね?!」



「っ!!!!ま、待ったっ!!!!!」



「・・・・・・・じゃあ、教えてくれるんですか??」



「・・・・・連条 萌香には、教えられない・・・・・・。」



「ハァァァッァァ~~~???」



「俺が教えられるのは・・・・・・

愛菜の妹の、萌香ちゃんだけ、だから・・・・・・」



「・・・・・・・・・・・

私が誰か知っていて、わざと言ってるの??」



「・・・・・萌香ちゃんは、俺のこと”先生”なんて

呼ばないだろう??

昔みたいに・・・・・・呼んでくれるはず、だけど・・・・・??」



ちょっと頬を赤くしながら言うあなたは、本当に成人した大人なんですか?

と聞きたくなってきてしまう。



「・・・・・章吾、さん・・・・・・////」



5年前と同じ用に呼ぶと、

章吾さんは、うれしそうに笑った。



「・・・・・二人きりのときは、今度からそう呼んでくれる、かな??」



うれしそうにこういうものだから・・・・・

これからあまり二人きりにはなりたくないと思いつつも

頷いてしまっていた。



「俺がココに居る理由は、簡単だよ・・・・・・

愛菜がどうして、ココで自殺をしたのか

知りたいから・・・・・・」



「章吾さんは・・・・・どうしてか知らないってことだね??」



そう言うと、章吾さんは軽く頷いてくれた。



「あの頃、俺は愛菜としばらく距離を置いていたんだ・・・・・

そのことは、萌香ちゃんは知ってた、かな??」



私は頷くと、章吾さんは再び話し出した。



「理由は・・・・いろいろあるんだけど

距離を置いてたもんだから、愛菜が何に悩んでたのかとか

全然知らなかったんだ・・・・・

ちゃんと愛菜と向き合っていたら、とか

考え始めたらきりが無いんだけど・・・・・

後悔だけが残っているから、さ・・・・・


これからのためにも、俺は真実を知りたいんだ。

・・・・・愛菜は、何に苦しんでいたのか・・・・・・」



「・・・・・・・・そう・・・・・・・」



私は、章吾さんのその話に、それだけしか返せなかった。


本当は、私の知っている情報は全部教えてあげたかったけれど

まだ・・・・・・・章吾さんを全て信用できるわけではないから。


章吾さんの、本当の心が、まだ見えていないから・・・・・・・


もしも、あの時と変わらない気持ちがあるのならば、

私の、傷ついて無くなりそうなこの気持ちも

もう一度・・・・・・取り戻すことができるかもしれない・・・・・・



「で、俺は言ったんだから、萌香ちゃんは

どうしてこの学校に来たの??」



「・・・・・章吾さんと、同じ。」



「へっ???」



「同じ理由。

お姉ちゃんが自殺した理由が知りたいの。」



「・・・・・・どうして??」



「私が、前に進むために・・・・・・」



そう。

これ以上過去を引きずらないために。

これからの未来を、考えるために―――――



「そう、か・・・・・・・・」



こう章吾さんがつぶやいたのを聞いて、私は立ち上がった。



「じゃあ、部活遅れるんで行きますね?」



こういって数学準備室から出ようとしたんだけれど



「萌香ちゃんっ!!!」



もう一度腕をつかまれて、その場で立ち止まった。



「・・・・・・橘先生には・・・・・気をつけて。」



「へっ???」



一瞬何を言われたのか、わからなかった。



「美術部なんだろ??

あの人・・・・・・・愛菜と、何かありそうだから・・・・・・・」



・・・・・・って、この前ちょっとそんな話をしたんですけど???


なんて、いえるわけ無いか。



「わかりました。気をつけますね?!」



ニッコリと笑って、その場から立ち去ることができた。


今の私には、いったい誰を信じればいいのか

わからなかった。


昔好きだった、章吾さんなのか――――

お姉ちゃんのことを良く知ってそうな、橘先生なのか―――――


それとも・・・・・・・・・・・・・・・・


いつも私を信じてくれる、透唯なのか――――――



真実はまだ、闇の中。




つづく。







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まだまだ恋愛要素、少なめですね・・・・。


これから徐々に、増やせるといいなぁ~、とは思うのですが、ね・・・・・