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LAST song -fifteen-



<キョーコside>



今私は、杏果ちゃんの家にお邪魔している。


駅についた私は早速、リュウ君に電話をして杏果ちゃんが

今どこに居るのか教えてもらったからだ。


杏果ちゃんは、1階の和室で布団の中で眠っているように

安らかな顔をしている。


まるで、今すぐ目を覚まして、かわいらしい声で

”キョーコ?!会いに来てくれたの??”って

言ってくれそう。


私のお父さんも、私の知らない杏果ちゃんの新しいお母さんは

かなり憔悴しきっていて、元気がなかった。


もちろん、リュウ君も・・・・・



「・・・・・・明日、出棺なんだ・・・・・」



お通夜やお葬式より先に、出棺して遺体を灰にしてしまうんだって・・・・・



「最後に・・・・・ちゃんと杏果ちゃんに会えて、よかったよ。」



これは、本当の気持ち。


やっぱり灰になってしまう前に会いたかったじゃない。



「ねぇ・・・・キョーコちゃん。

今日、仕事がないんだったら、最後の一日、杏果のそばに居てあげてくれない??

杏果は本当に、双子の妹のキョーコちゃんのことが好きで・・・・

テレビに出るようになってからは、本当にうれしそうに全部の番組をチェックして。

とっても生き生きしていたのよ?!」



まだかすかに涙が残っている、杏果ちゃんの今のお母さんに

お願いをされた。


――――――今日、本当は仕事あったんです。


といっても、ラブミー部の仕事で事務所内の雑用だけだったから

お休みもらってきたんだけど・・・・



「・・・・・・わかりました。」



了承をすると、お母さんに腕をつかまれ

杏果ちゃんの写真をいっぱい見せてもらいながら

お母さんの思い出話を聞いてあげた。


・・・・・杏果ちゃんは、いっぱいこの人に愛してもらったんだ・・・・・


心が、少し折れそうだった。


最後に、杏果ちゃんの言っていた言葉を思い出す。


”私が病気じゃなかったら

キョーコが親の愛情を受けて育ててもらえたかも・・・・”


・・・・・杏果ちゃんは、いっぱい愛情を受けて育ててもらえたんだね?!


本当に・・・・・・本当に・・・・・・・

愛情いっぱいに育ててもらってよかったね。杏果ちゃん・・・・・・・






結局明日仕事があるからと、夕方に帰ろうとした私を

リュウ君が、杏果ちゃんの部屋へ連れてきた。



杏果ちゃんの部屋は、前に来たときと同じようにきれいにされていて

とても女の子らしい部屋だった。



「あの、さ・・・・・・・・」



きょろきょろと部屋を眺めていた私に、リュウ君は

小さな声で話しかけてきた。


私はそのままリュウ君のほうへ向き直った。



「・・・・・・・何??」



「・・・・・・・昨日、杏果が言ってたんだけど・・・・・・

アイツが・・・・・会いに来てくれたって。」



「・・・・・・・へ???」



「だから・・・・・・・・アイツ。

杏果の、初恋の相手。」



「・・・・・・・・・・・・・・敦賀、さん???」



「じゃなくって・・・・・・・・・・コーン。」



「えっ???

だって、敦賀さんが初恋の人でコーンなんでしょ??

だから、敦賀さんが・・・・・」



「だから、コーンなんだってっ!!!!!

杏果の看護師の人が言ってたけど

遠めで見たら、金髪の背の高い男の人と話してたって

言ってたから、間違いないよ。」



「・・・・・・・・・・・・・・うそ・・・・・・・・・・・」



だって、敦賀さんは敦賀さんで・・・・・・

とっても毎日忙しくお仕事されてて、杏果ちゃんに会いにくるなんてこと

できないもんだと思ってた。



「でも・・・・・・・・会いに来たんだ。

杏果は、うれしそうに笑ってた。

何を話したんだって聞いたら・・・・・・・」



「・・・・・・・・・・・聞いたら??」



「”ありがとう”だとさ・・・・・・・

もう一度会えるなんて思ってなかったから、

泣きすぎてほとんどしゃべれなかったんだと・・・・・・・

でも、さ。

昨日俺が会ったときは、本当に杏果は

すっきりした顔してたんだ・・・・・


だから、かな??

きっとアイツ、もう、死んでもいいって思っちまった、ん・・・だ・・ろ・・??」



「・・・・・・・リュウ、くん??」



「後に残される人たちのことなんかお構いなしで

アイツはいっちまったんだよっ!!!!!!

自分だけスッキリして、俺の気持ちなんてまったく気づかずにっ!!!!!!

どうしてっ!!!!!どうしてアイツなんだ?????

どう・・・し・・・て・・・・・・・

俺じゃ、ダメ・・・・なんだよぉ・・・・・・・」



リュウ君の悲痛の叫び。


リュウ君は、杏果ちゃんのこと、好きだったんだ。

なんとなくそうかな?とは思っていたけど・・・・・

でも・・・・・・・



「リュウ君は・・・・・・・

どうして、杏果ちゃんに自分の気持ち、言わなかったの??」



この言葉を聞いて、リュウ君が手をぎゅっと握ったのがわかった。



「・・・・・・・一応、義理の兄弟だから・・・・・・・・

言えねぇよ・・・・・・・・


ずっと、ずっと・・・・・そばで見守ってきた。

アイツが好きだとしても、どうせ手の届かない

雲の上のようなやつだから・・・・・

夢をみさせているような気分だったんだ。


でも・・・・・・・・・杏果は、本気だった。

最初から、ずっと・・・・・・・・・・・」



こういうと、リュウ君は杏果ちゃんの部屋にある

勉強机の一番上の引き出しを開けて、

中からあるものを取り出した。



「コレ・・・・・・・・・・・

杏果から、敦賀蓮に。

何でも誕生日プレゼントにって用意していたらしいけど

倒れたから、渡せなかったんだって。

自分が死んだら、キョーコにお願いして本人に渡してほしいって。」



それは、リボンが付いた、小さめの紙袋。



「・・・・・何が入っているの??」



「・・・・・・・CD」



「えっ???」



「杏果の歌が入った、CD。」



ポンとリュウ君は、私の手の上に載せた。



「でも・・・・・・・」



コレを敦賀さんに渡してしまって、いいのだろうか??

だって、コレってきっと・・・・・

杏果ちゃんの敦賀さんへの想いが詰まった歌なんでしょ??

杏果ちゃんは、敦賀さんに自分の気持ちを伝えないままなくなってしまっているから

今さら伝えなくたって、いいんじゃないのかな?

なんて思っていると



「・・・・・・ちゃんと渡してくれよ??

杏果の・・・・・最後のお願いだったから・・・・・・」



「でも、リュウ君はそれでいいの??」



「・・・・・・・・・・・・・いい」



「っ!!!!!!だってっ!!!!!!!!

そんなに、つらそうな顔をしてるじゃないっ!!!!!!!

本当は、渡したくないんでしょ???

杏果ちゃんの歌声が入ってるんでしょ???

たった一枚しかないんでしょ???

それを・・・・・敦賀さんに渡してしまって、いいの???」



「わかってるっ!!!!!!!

・・・・・・・・・・・・わかってるよ・・・・・・・・・・・

でも、やっぱり俺は・・・・・・・・・・杏果の気持ちを無視、できねぇーよ・・・・・・」



・・・・・・・・・・リュウ君。


私が来たときからずっと、つらい顔をしたまま。

しょうがないよね。

大好きな人が・・・・・・・

わかっていたとはいえ、先に旅立ってしまった。


気持ちの整理もあまりつかないまま、

私に杏果ちゃんの話をしてくれてる。


・・・・・・・・本当に、ありがとう。


いつの間にか私は、リュウ君に近づき

優しく抱きしめていた。



「無理、しなくていいんだよ??」



「・・・・・・・・・・な、何のこと・・・・??」



「悲しいときは、男だって泣いていいんだよ??

我慢しなくて・・・いい・・ん・・・・・だ・・よ???」



最後のほうは、私まで涙声になってしまっていた。


胸に顔を押し当てていたから、みなかったけど

私の言葉の後に、リュウ君は

かすかに震えていたから・・・・・

きっと声を殺して泣いていたんだろう。



涙がかれるまで、二人抱き合っていた。




つづく。





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さて、次回ですが・・・・・

きちんと想像通りに書けるのか、もっぱら自信がありません。


私の伝えたかった話がちゃんと書けることを祈りつつ・・・・・


どんな話にいってしまうのか

想像にたりるような書き方を今回はした、つもりです。


ま、きっと・・・・・・

誰か一人はわかってもらえるといいなぁ~と思いつつ

私の好きなように、書かせていただきますっ♪


それにしても、今回のキョーコちゃんの考えが

かすかに黒い気がするのは気のせいでしょうか??

(書いてて妙に黒くなった)



では、深夜作成のため、いつも以上に誤字脱字が多いかも知れませんが

いつもながらのご愛嬌でよろしくお願いします^^