・・・今までの話・・・・

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この空の向こうがわ ☆一年生 春☆ no.8



――――6月


衣替えで、制服が夏服へと変わった。


ただ、うちの学校は合服があって、結構その日の気温で個人の自由で

好きなように組み合わせれるのが、好きだったりする。


今日は、半袖の水色のシャツに、サマーニットの白いベスト。

夏服の薄手のスカート。


今日もいつも同様に透唯と一緒に登校すると

校門にの前に、少し人が集まっていた。


数人の生徒の腕には、赤色の腕章をつけている。



「・・・・・もしかして・・・・・」



「今日は、風紀委員のチェックか・・・・」



二人ため息をつきながら、校門を通り過ぎようとしたところで



「っ!!そこの女子生徒っ!!!!待ったっ!!!!」



大きな声で呼び止められてしまった。


駆けながら近寄ってきたのは・・・・

なんと、風紀委員長殿っ!!!!!



「君、クラスと名前は??」



「・・・・・・1年C組、連条萌香です。」



私の言葉に、目の前に居た風紀委員長殿は

私の隣に居る透唯を一度チラッと見た後



「・・・・・君が、うわさのコ、ね・・・・・」



小さな声でこうつぶやいた後、

私の後ろに回り、いきなり首の後ろを触ってきた。


ヒヤッと手の冷たい感触がして

思わず体がビクッとなる。


そして・・・・・



「コレ、没収ね。」



後ろから声がしたので振り返ると、

風紀委員長の手には、私の・・・ネックレスがあった。



「あっ・・・・・」



「アクセサリー類は校則で違反になってます。

放課後、風紀委員の部屋に取りに来て。

反省文書いてもらうから。」



淡々と説明を受け、しぶしぶうなづくと

風紀委員長は、隣の透唯のほうへ向いてこういった。



「生徒会長も・・・・妹には甘いんだな。」



なっ!!!!!!!

ムッカァーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!


な・・・・・・何様のつもりよっ!!!!!!


私はあまりの言葉に怒っていたけれど

言われた当の本人は、何も感じていなかったみたい。



「・・・・・萌香、行くぞ?!」



そういって、一人先に校内へと入っていってしまった。







放課後。


今朝没収されたネックレスを取りに、私は一人風紀委員会室へとやってきた。

中には、何故か風紀委員長、ただ一人。


なぜ・・・・・???



「コレ、とりあえず書いてくれる?」



そういって渡された用紙に名前とかを書いていた時に

話しかけられた。



「なぁ、この”S”って・・・・・誰??」



いきなりの言葉に、思わず書類から目を離し、

顔を上げると、いつの間にか

私の目の前まで来て、私のネックレス

・・・・・・・・いや

チェーンに通された指輪をしげしげと眺めている。



「・・・・・・・・・・・あなたには、関係ありません。」



そういってもう一度書類を書こうとすると

すぐ上からまた、声がした。



「コレっていわゆるペアリング、でしょ??

見るからにあまり新しそうにないし

toは”M”だから、モカの”M”なんだろう??

じゃあ、相手のfromの”S”が誰なのか、知りたいなぁ~、

と思ってさ・・・・・」



その言葉を無視してどんどん書いていくと



「・・・・・・コレ、どこかで見た事あるような気がするんだけど・・・・・」



っ!!!!!

ま、まさか、ホントに気づいてない、よね・・・・・??



「・・・・・・」



ジーッと私の様子を伺っているのか

しばらく何も言ってこない風紀委員長。


私は何も言わずに黙々と書き続け

渡された書類を書き上げると、さっさと渡した。



「出来たので、それ、返してもらえませんか??」



「・・・・・質問の答え、聞いてないから返せないなぁ~。」



ニヤリと笑いながらこういうので



「それ、私のじゃないんです。

・・・・・・・形見で、とても大事なものなんです。

だから、本当に返してもらえませんか??」



そう。

コレは、章吾さんからお姉ちゃんに贈られたペアリング。

今も、章吾さんの指にはめられている物と、同じもの。


そしてコレは・・・・・・

お姉ちゃんの形見として、私がもらったものだから、

今まで肌身離さずずっとつけていたもの。



「・・・・・形見、ねぇ・・・・・・」



そうつぶやくと、指輪とチェーンを握り締めた。



「っ!!!!!ホントなんですっ!!!!!だから・・・・・・

返してくださいっ!!!!!!!」



書類も書いたら返してくれるって言ってたのに・・・・

どうしてすんなりと返してくれないのよぉ~~~っ!!!!!



「・・・・・そんなに返してほしいんだったら・・・・・

キス、したらいいよ?!」



・・・・・・・・・・・・・・・・・ハイッ??????


私、今、変な言葉を聞いたんです、けど・・・・・・・・???



「あんたさぁ~~~~、透唯の妹じゃないでしょ。

アイツと小学校から同じ学校だったのに

急に妹が出来たなんて、信じられないんだよねぇ~~~。

あんな堅物な男が、毎日一緒に登校してるなんて

どんな女なのかなって、ちょっと興味があったんだよな・・・・・」



・・・・・・・・・・・・



「・・・・・・・・俺、アイツ、嫌いなの。

だから、アンタにちょっかい出したら

アイツの面白いところが見えるかなって思って、さ?

・・・・・・・・・・・どうする??

もしかして、”好きな相手じゃないと、キスできないのぉ~”って

いまどき珍しい、キモイ女、とか??」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ブチッ!!!


そんな音が、頭から響いてきたかと思うと

私は、何も考えずに、委員長の首のネクタイをクイっと引き寄せると

そのまま、そいつの唇に・・・・・・押し当てた。



一瞬の出来事で、何もわかっていない委員長の手から

私の大事なものを奪い返すと

そのまま私は、何も言わずに風紀委員会室を後にした。


最初は歩いていたけれど、どんどん苦しくなって

私はいつの間にか走り出していた。


廊下を走っちゃいけないことはわかっているのに・・・・・


気づいたら、第一音楽室に行き、白石先生に第二音楽室の鍵を借りていた。


先生も付いていくって言ってたけど、私は一人になりたいからと

お願いして、一人で第二音楽室の鍵を開けると

部屋に入るなり・・・・・・


涙が溢れた。


嫌だった。


たとえ、大事なものを返してほしいからといって

好きでも何でもない相手と

ファーストキスをするということは。


さすがに、もう恋はしなくないって思っている私でさえも・・・・・

苦しくて、悔しくて、仕方がない。


とめどなく溢れる涙をぬぐうこともいとわずに

私はそのまま、ピアノへと向き合った。



悲しみに溢れる私の心を癒すかのように

私は、自分の中にあふれ出る曲を、そっと

ピアノで奏でた。



――――5年ぶりのピアノ。


久しぶりに弾いたその曲は

悲しみの音を響かせていた――――




つづく。







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※本日より、お礼画面変更しました^^

なんと、誕生日SSを2/10まで載せております。

11日当日は、その話をこっちのブログにも載せますので

ぜひ、お楽しみください^^






ファーストキスは好きな人と。


させてあげたかったのに、させてあげられませんでしたね。

なんて鬼のような作者なのでしょうか??


前回にちょっとだけ出てきた指輪。

今回も出てきました。


大事なものを守るためなら、ファーストキスもいとわないような

強い彼女が結構好きなんですよねぇ~。

(ほんとに、鬼です)


で、今回名前の出てこなかった風紀委員長様。

この後まだまだ出てきます。

名前は次回にでも出てくるといいなぁ~、なんて。

(まだ考えてないので)


最後に、悲しみにくれる中、涙を流しながら弾いたピアノの曲は

何なんでしょうねぇ~??


・・・・・・私はあまりピアノに詳しくないので

なんともいえないのですが

一応、皆さんの好きなようにご想像いただければいいかな、と思います。


まぁ、無難はショパンの『幻想即興曲』とか・・・・

あ、でも。ベートーベンの『月光』も好きです。


あえて曲名を書かなかったのは、皆さんの好きな曲で

想像してもらいたいから、ですね。