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LAST song -nineteen-



<蓮side>



俺は、最上さんから渡された

杏果ちゃんからのCDを聞いていた。


すると、しばらく無音の再生の後に

メッセージが入っていた。



「敦賀さん。杏果です。


お会いしてお話しすることが恥ずかしいので申し訳ありませんが

ここにメッセージを残させていただきます。



私は、幼いころから病気を持っていて・・・・

治らないとずっと知って生きてきました。


毎日毎日、つまらない・・・・灰色のような日々。

そんな中で、妹のキョーコと過ごす夏休みは

私の唯一の楽しみだったんです。



そこで、コーン・・・・・あなたに出会いました。

最初、キョーコは”妖精さんに会ったんだ”って教えてくれたのだけど

私は到底信じることが出来なかった・・・・・

私は現実主義者だったから・・・・・



だから、一度キョーコのふりをしてあなたに会いに行き

キョーコに”妖精なんていないのよっ”ってきっぱり言うつもりでした。


結局、キョーコは私の言葉を聞き入れてくれなかったけど・・・・・

でも、あの、数日は私にとっても、変えがたい思い出です。


その後、私がテレビであなたをはじめて見かけたときは


本当にビックリしてしまいました。

だって・・・・・・コーンがテレビに出ているんだから。


ただ、あのころとは違って、どこか偽りの笑顔のままだったけど・・・・

それからは、あなたを応援することが私の生きがいだった。


そんなことを見つけないと、生きていけないくらい

私の心は、どんどんすさんでいった。


私だって、みんなと一緒に、生きたかった。

恋だってしたかったし、デートもしたかった。


でも・・・・・・・・・


私はそれを声には出さなかった。

決して、誰にも・・・・・・言わなかった。


私はつらくない、という顔をして

みんなの前で笑って・・・・・・

死ぬことが怖くないって、平気な顔をしていた。


だって・・・・・・私がいなくなって、残された人が悲しむのは

私が、つらいから・・・・・・・・・


グスッ・・・・


私は、もう一度キョーコに会えたこと、

もう一度・・・・・コーンに会えたことを

神様からのプレゼントだと思っています。


だから、残されたわずかなこの時間に

どうしても、あなたに・・・・・・

伝えたかったんです。


私の・・・・・・気持ち。


本当に、あなたに出会えてよかった。



――――ありがとう――――



キョーコは鈍感だから、きちんと言わないと伝わらないよ?

ずっと、応援しているから・・・・・・

キョーコを、離さないでねっ!!!!!


大好きだったよっ!!!!!!!



―――――さようなら、コーン―――――」



彼女の、最後の言葉に・・・・・・・・

俺は、こらえ切れないものを、吐き出していた。


やりきれない思いを抱え

俺は、何度も床をこぶしでたたいていた。




「・・・・・・・・ど・・・・・し・・・て・・・・・・」



何で、生きている間にもっと話が出来なかったのだろう。

電話も、メールも出来たのに。



彼女はあんなに

自分の死に、怖がっていたんだ・・・・・・


彼女だって、普通の人間なんだから・・・・・・・





その日、俺は夢を見た。


桜の木の下で、涙を流しながらも笑って

”ありがとう”といった少女が

立ち上がって、俺のそばまでやってきてくれた。


「敦賀さんっ!!!会いに来ちゃいましたっ!!!!」



「・・・・・・・・歌、聴いたよ?!ありがとう」



ふわりと微笑むと、彼女はちょっと目を見開いた後

ふんわりとかわいらしく、笑った。



「・・・・・その笑顔は、本当に素敵ですっ!!!

よかったぁ~~~。」



ニコニコと笑っていた彼女が、どんどん表情を曇らせていく・・・・・・



「・・・・・・・・どうかしたの??」



「・・・・・敦賀さん・・・・・・

これから起こることに、決して負けないでください。

私は、もう一度、あなたに会えることを望んでいます。

いつまでも、あなたを、想っていますから・・・・・・」



「・・・・・・・えっ??もう一度・・・・って??」



「・・・・・・・・・これ以上は、いえません。

私はもう・・・・・・・・・会いにこれませんから。

もう、会えません。

でも・・・・・・・・・・・忘れないで。

きっと、もう一度会えます。

夢じゃなく、生きて、もう一度。

だから・・・・・・・・・・・・・

これからの自分の運命を

自分の思うように決めてください。」



「いったい、何を言っているんだ???

まるで、未来がわかっているかのように言ってるけど・・・・・」



「・・・・・・・キョーカに、もう一度、会ってください。

会って・・・・・・・・・抱きしめてあげて??」



その言葉を言う、彼女はとても悲しそうで

目の前の、杏果ちゃんを、思わず抱きしめてしまっていた。



「っ・・・・わ、私じゃないですっ!!!!」



「(クスクス)君も・・・・・・杏果ちゃんだろ??」



「・・・・・・・そうです、けど・・・・・・・」



そういいながら、まったく抵抗せず

腕の中で顔を赤くしているから、かわいらしい。

(ほんとに最上さんそっくりだよ。)



「・・・・・・・・・・約束、するから・・・・・・・・」



ジッと彼女を見つめると、視線を気にしたのか

真っ赤にしながらも俺を見つめ返してくれる。



「最後に・・・・・・・・・・・・キス、してくれますか???」



「・・・・・・・・・・夢の中で???」



「はい。夢の中で・・・・・・・・」



頬を赤く染めながらも笑ってこういってくれるから

顔自体は最上さんなのに、性格はちょっと違うんだな、

と少し思ったのだけど、

うう~ん、と考え込んでしまった。


夢の中とはいえ、最上さん以外の人とキス、というのは

プライベートではいかがなものなんだろう、

と思っていると・・・・・・・・・・・・


チュッ


思いっきり背伸びをした杏果ちゃんが

俺の唇に触れるか触れないかの、キスをした。


驚きのあまり、目を見開いていると

彼女は笑いながら



「ゴメンね」



というと、体中からまぶしい光が溢れ

淡いピンク色の光の粒になって

・・・・・・・・・・・消えてしまった。





正直、まさか、こんな不思議な夢を

ずっと覚えているなんて、信じられなかった。


でも・・・・・・・・

何故か覚えていた。


それは彼女の意味深な言葉のせいか、

それとも・・・・・・・・

不意に奪われてしまった、キスのせいか・・・・・??


彼女の、その言葉の意味を本当に理解をしたのは

これから数週間後。


一件の、ニュースからだった。



”人気タレント京子 突然の芸能界引退”



その日は朝から事務所の電話は鳴り止まず

対応に追われていたようだった。


俺は、社長室へ乗り込んだが

社長は”知らない、わからない”の一点張りだった。


琴南さんに聞こうとしても逆に睨み返され

”私も知らないんですっ!!”と泣き出す始末。


誰にも何も言わず、いったい、どうしたっていうんだ???



最上さんが俺の前から姿を消して・・・・・・・・・・・・


まるで、世界の光を、失ってしまったかのような気分になった。






LAST song


―endー



第二章 『輪-rin-』 へ、つづく・・・・





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今回で、とりあえず・・・・・


『LAST song』はおしまいです。

(別れで終わりなんて・・・・

ちょっと悲しいですね。)


続いて、第二章 『輪-rin-』が始まります。



まぁ・・・・・勘のいい人なら

タイトルとキョーコちゃんの感じで

なんとなく、どんな話になるか、わかると思います^^


多少、ヒントを残しました。


さて、この後の話のラストを・・・・・

実は最近、迷い始めました。


相変わらず、こうなってくると蓮キョがつらくなってくる。

というのも・・・・・・”男のロマン(?)”といわれるような

話にしてみたら、面白いなぁ~って・・・・^^


まぁ、ちょっとだけ話が出始めたらわかると思います。



それでは、明日は・・・・

前々から書いてました、敦賀蓮氏誕生日企画(?)

の短編をアップする予定です。


お楽しみにぃ~~^^