S side
 
 
 
 
フレンチトーストのいい香り
布団の中で雅紀がモゾモゾ動いてる時から起きてた。
 
 
 
てか、触ってたら雅紀が目を覚ましたんだ。
 
 
 
白くてフワフワな長い耳の肌触りは
雅紀の素肌ぐらい手触りがいい。
 
 
 
綿菓子みたいな甘い香りがする雅紀だから
その耳まで食べれちゃうの?と本気で思う時があった。
 
 
 
どこもかしこも美味しそうな奴。
俺はいつも狼状態。
 
 
 
雅紀が俺の寝顔見てるのも知ってる。
俺も数分前に同じ事してたしね。
お触り付きで。
 
 
 
マシュマロを食べさせてあげたくなるような
ぽわぽわな唇が半開きでパクパクしてるもんだから
余計に目が離せない。
 
 
 
可愛いなぁ。
ずっと見てられる。
 
 
 
朝からそればっかり。
四六時中か。
 
 
 
愛おしくて堪らない
仕事行きたくなくなるのも、しょっちゅう。
 
 
 
「ニノー仕事休んでいい?」
 
 
「俺達、餓死したくないよ?」
 
 
 
しっかり者のニノが居るからズル休みなんて
TABOO
 
 
 
「しょうちゃん!いい子で待ってるから頑張って!!」
 
 
 
両サイドからペット達のキスを受け、
ちぇーっと言いながら毎朝玄関のドアを渋々閉めた。
 
 
 
 
 
 
 
 
ある日、親友の智くんから連絡がはいる。
自分からあまり連絡してくるようなタイプじゃないからビックリするけど
 
 
 
「この人、翔くんの事大好きなんだよ。家でもよく翔くんの話してるよね、智くん?」
 
 
 
智くんの飼い猫、ゴージャスペルシャ猫の潤がニヤニヤしながら言うと
 
 
 
「お前の今日のご飯、鰹節オンリーな」
 
 
 
静かな口調で言いながらも智くんの耳が真っ赤だった時の事を思い出した。
 
 
 
家で俺の話とか嬉しいじゃん。
 
 
 
 
 
 

 
 
 
「もしもし、智くん?どうした?」
 
 
 
会社の昼休憩のタイミングで智くんからの着信
 
 

近くまで来たから飯でも食わない?って
ほんと、この人は前もって約束するってのが苦手な人だから「今から」が、めちゃくちゃ多い。
 
 
俺が好きそうな蕎麦屋があるよって智くんが名前出してきた蕎麦屋は昼休憩の時、俺もよく通ってる店。
そこで待ち合わせして、一緒に蕎麦とミニ丼のセットを食べた。
 
 
 
「どうなの最近」
 
 
「普通」
 
 
「いやさぁ、あなたの普通は普通じゃない時あるからね?」
 
 
「普通普通。平凡に暮らしてるよ」
 
 
「仕事は?まだ掛け持ちしてんの?」
 
 
「んー、まぁね、仕事ってほどじゃないけど、知り合いの手伝ったり色々やってる。絵が売れれば少し休んだりして適当にやってるよ」
 
 
「なんか、カッケーね」
 
 
「そう?」
 
 
「かっこいいよ」
 
 
「あんまそうゆう事言うなよ」
 
 
「すぐ耳赤くする!」
 
 
「褒めなれてないからさ」
 
 
「またまた~。才能の塊でしょ」
 
 
「今度翔くんの絵描かせてよ」
 
 
「だから、それはやだ」
 
 
「なんで?いいじゃん別に」
 
 
「それこそ、恥ずい」
 
 
「減るもんでもあるまいし」
 
 
「だって、ヌードでしょ?」
 
 
「え!話したことあった?」
 
 
「あなたの飼い猫さんが言ってましたよ」
 
 
「あいつ。おしゃべりだな」
 
 
「智くんの誕生日付近にさ、いきなり潤が家に来てお願いされたんだよ」
 
 
「え!なんて?」
 
 
「誕生日当日全裸にリボン巻いて家まで来てくれませんか?って」
 
 
「ぶっっ」
 
 
 
鼻からネギ出そうになったわ!と
智くんが口を押さえる。
 
 
 
「何、やってんだアイツは」
 
 
「飼い主思いじゃん」
 
 
「お宅さんには負けますよ」
 
 
「うちの子達も無邪気で可愛いですからね~」
 
 
「うちの潤も美形で可愛いですからね~」
 
 

蕎麦を食いながら親バカ合戦
 

 
「てか、1番モデルに相応しい人がいるじゃん?」
 
 
「潤?」
 
 
「そう」
 
 
「潤はもう何回も描いてるし」
 
 
「ヌード?」
 
 
「そうだよ。普段から家ん中、裸でウロウロ、ブラブラしてるしね」
 
 
「ブラブラって!でも潤は綺麗そう」
 
 
「めちゃくちゃ綺麗だよ」
 
 
「余計やりずりーわ」
 
 
「翔くんモデルやってくれないなら相葉ちゃんにやってもらおう」
 
 
「ダメ!だって……それはダメ」
 
 
 

鼻で笑う智くんは
 
 
 
「服着ててもいいからやってよ」
 
 
「…………」
 
 
「綺麗な顔が描きたいんだ」
 
 

 
スっと俺の頬に伸ばされた手が
 
 
 
「なんか、翔くんは潤に似てるよ」
 
 

ゆっくりと口元に……
 
 

「え……」
 
 
「こうゆうところに、ご飯粒つけるとことかね」
 
 
「なんだよっ」
 
 

付いたご飯粒を智くんはそのままパクリと食べて、
 
 

「そうそう。これニノは参加しないかな?」
 
 

モグモグと口を動かしながら
船酔い強化合宿と言う案内を手渡してきた。
 
 

「なにこれ」

「俺、こうゆうのもやってんの」

「ほら!普通じゃねーじゃん!!」



はははと笑う
陽だまりみたいな笑顔は
仕事の疲れも吹き飛ばし



同時に、うちに居る陽だまり達にも会いたくなった。