魚住陽子の本は昔から好きだ。
いつから読むようになったのかは記憶にないけれど、多分図書館に通いつめていた時期に出会ったんだと思う。

「雪の絵」はもう少し寒くなったら読んだらよかったかもしれない。
題名の如く、冬っぽい作品集だった。
4つ短編が入っており、1作品目の『別々の皿』は第105回芥川賞候補になったものだそうだ。
全体的に、薄墨のような印象の作品で、魚住陽子らしいタッチ。
答えは読者の想像にお任せする、というタイプの終わり方をするのもいつもどおり。

表題作の『雪の絵』は小学生の主人公“私”が両親と妹を語る。ちょっと変わった絵描きの父親と染色家の母親。
父が作品を書き始める度に、母親は姉妹を連れて旅にでる。さびれた安い温泉宿が多く、そこで過ごす時間について淡々と、せつない香りを漂わせて綴られていて、私にとって、とても好きな1冊になった。

ちょっとしんみりしたり、せつなかったり、その気持ちを引きずって読書したいなぁと思った時にはぴったり。

<新潮社 1992年発行>

著者: 魚住 陽子
タイトル: 雪の絵