10年前、バブルの煽りを受けた後、独身女性たちは自分達の資産をどう使うか考えた。
やっぱり不動産を手にするのが一番じゃないかと思った。
そんな数名の女性を物語風の語り口で紹介するのがこの『マンションを買う女性たち』である。

33歳で大手不動産会社の営業をする女性は西新宿のマンションの最上階を1,500万で購入する。ワンルームで夜景は抜群、利便性も最高といううたい文句である。
常にトップクラスの営業成績を上げる彼女は、投機目的と節税対策の為にワンルームを所有していたオーナーの部屋を借りていたがオーナーは定年を迎えるにあたって借主の彼女に「購入しないか?」と持ちかけてきた。

雑誌の編集者の35歳の女性はは仕事柄、残業も休日出勤も多く、酒もたしなむ。仕事の量も酒の量も多い彼女は通勤が楽なところにマンションを持ちたいと思うようになり物件探しからスタート。中古から新築まで見回り、契約寸前で断る等の段階を踏んであるマンションを手にする。

音楽製作に携わる42歳の女性は結婚もこの先無いだろう的な発想から母親を連れて新築物件を見てまわり自分に相応な物件を探そうと必死になる。
今は都営住宅で暮らしているが近所付き合いが厄介だと感じるようになり、分譲を求めるようになる。

そんな様々な女性の購入にいたる経緯などが詳しく描かれている。
マンションを買うというのは大変な作業だ。
お金の工面だけではなく、それまでの下準備、予備知識などがたっぷり必要となる。お金があれば全て金で片付くんだろうけれど、ローンを組みギリギリでやっていく女性たちには一大事なのだ。
そんな様をリアルに描くノンフィクション。

自分の生活に変化を求める女性、不動産に興味のある女性、昨今の都市マンションブームに便乗したい女性には予備知識として読んでみては?とおすすめしたい。
10年前でもこれだけ苦労するのだ。10年後の今も、苦労するんだということを肝に銘じながら不動産を探してみてはどうだろうか?
時代錯誤な点はあるものの、不動産を手にする大変さ、女が不動産を持つということの重みと思いがわかる1冊だ。

<太田出版 1994年>

著者: 矢崎葉子
タイトル: マンションを買う女たち