君の風景は僕の風景 Landscape.34
たった数日、正確に言えばそんな大袈裟な事を言う程離れても無いのに、目の前に座った見慣れた服を着た彼に対する気持ちに、非情なほど線引きしている自分に驚いた。それと同時にたった数日なのに、どう見てもヤツれてしまってる彼に心から
………………謝罪した。
「仕事、休まなくても良かったのに」
「………………うん」
「忙しいんで、しょ」
「まあ、うん」
土曜日に会う約束が突然の電話により平日の昼間になり、それはイコール有給を滅多に使わない彼がどれだけの気持ちでここにきたのかも、痛いほど伝わる。
ろくにご飯も食べてないのもわかる。
クリっとした可愛い目の下に薄ら隈が出来てるのは、間違いなく寝不足のせい
そしてほんのり顔が浮腫んでるのは、
………………飲みすぎてる、せい。
「俺がいう事じゃ、そのないけど、身体、大事にしなきゃ駄目だよ」
「………………じゃあ、」
あの部屋に
戻ってきてよ
聞こえるか聞こえないかのか細い声は間違いなく心に痛く突き刺さり、注文したカフェラテとブラックコーヒーはどんどん目の前で冷めていく。
「その話を、しっかり、そのしたくて、」
「………………戻って、きて?ニノ」
「翔ちゃん、、、」
「お願い、俺、変わるからっ、ニノの為ならニノが好きでいてくれる自分に
………………変わってみせるから」
俺の風景は
俺が作りだし
お前の風景は
お前が作るもの
頭を過った。
昔言われた智からのその言葉。
ようやく意味がわかった気がする。
間違いなく俺は翔ちゃんが好きだったし、今でもきっと好きで。だけれど今の翔ちゃんが好きだからこそ、変わって欲しくない。
俺なんかの為に、今の自分らしさを無くさないで欲しい、、、
変わらないで
欲しい
単なる我儘かもしれない
智とは間違いなく状況が違うし、単なる別れるための一つの口実なのかもしれないけれど、その言葉で薄く、細く、繋がってた想いはプツンと音を立てて、
………………消えた。
悪いのは自分
それも重々承知
詳しく言うつもりなどなかったけれど
言わなければならないと思った。
きっと智も
そうだったんだろうな。
好きな人が
自分の好きな人が
いい意味でも悪い意味でも自分依存で変わっていく姿は、
………………辛かったから。
今更ながらに、
若かりし智の苦悩に気がつけた、瞬間だった。