君の風景は僕の風景 Landscape.41
酒の力を借りてしまったのが果たして良かったのか、それとも悪かったのか、なんて、それは結局
………………後の、ま、つ、リ。
智、今どこ?
受話器から聞こえた大好きな声は、間違いなく自分ではなく他人の名前を指し示してて、その名前が嫌なほど耳に残り、同時に暗く、深い迷路に突き落とされてく気がした。
「それ、誰?」
その言葉を言うのが精一杯で、その後受話器の向こう側でコクンと唾を飲む音が聞こえた。
間違いならば、それでいい、
偶然ならば、それでいい、
むしろ、
………………違って欲しい。
そう思えば思うほど、隣で静かに酒を飲む男の名前が脳裏に浮かぶ。
『昔ね、大好きだった人が俺を置いて
海外に行っちゃったの。』
合致する点があちらこちらで紐を結び始め、さらにその不安は増していく。
「今から会える?」
この状態でニノとあったら一体どうなるのだろう、
俺の結い方が正解か不正解、それがはっきりするのはいいとして、万が一にでも正解だとしたら、俺はどうしたらいいのだろう。
整った顔立ち、そして物静かで大人な雰囲気が男としてからも魅力的で、さらに秀でた才能があるその男が
万が一
ニノが放った
その名前の本人だったら
俺は、、、
俺は、、、
「やっぱりいいや、俺、今酒入ってるから何言うかわからないし、あ、でもニノにとって必要な荷物がマンションに残ってたりするなら、昼間俺が家に居ない時にとりあえず持って行って?その後、うん、…………もう一度落ち着いて、話し合おう?」
オチツイテ
ハナシアオウ
………………か。
俺はいつからこんな嘘を平気でつくようになったのだろう。
受話器をカウンターに置いた後、『酒飲んだ時は、やっぱりダメですよね』なんて軽く話を振ってみたら『え、あ、まあ』と、軽く相槌を打った後、相変わらず静かに酒を飲み始めた男から俺の視線はずっと、ずっと
………………離れることは、なかった。