◆コナミ日本シリーズ2011第7戦 


ソフトバンク3―0中日(20日・福岡ヤフードーム)


ソフトバンクが、2003年以来8年ぶり5度目(南海、ダイエー時代を含む)の日本一に輝いた。3勝3敗で迎えた第7戦、地元ヤフーDで先発・杉内が7回無失点の好投。打線も3回に押し出し四球で先制すると、4、7回にも追加点。投手陣は4人の継投で中日打線を無失点に抑えた。交流戦V、11球団勝ち越し、リーグ優勝を経た史上初の「完全日本一」となった秋山監督は、就任3年目でチームを頂点に導き、8度宙に舞った。

 体の底から心地よかった。一塁ベンチを飛び出すと、秋山監督の涙腺が緩んだ。「福岡のファンの前で日本一になれた。本当にうれしい。感謝しています」。交流戦V、全11球団勝ち越し、リーグ優勝、CS突破、そして8年ぶりの日本一…。史上初の「完全V」を果たした指揮官は、ナインの手に身を委ね8度、宙に舞った。

 激闘だった。監督として初の日本シリーズ。本拠地で、まさかの連敗スタートだった。1点差で第2戦を落とすと今季、一度もしなかった全体ミーティングを開いた。「切り替えていこう。やられたらやり返そうや」。奮起を促し、ナゴヤDで3連勝。第6戦で逆王手をかけられても、最後まで選手の力を信じた。

 迎えた最終決戦。試合前練習で、球団関係者がマウンドに一輪の白いバラを置いた。花言葉は「両想い、純粋な愛」。一致団結だった。「日本中が注目するなかで野球ができる。幸せなことだよ」。重圧を楽しんだ。

 エースの杉内が7回無失点の好投。本拠地の3試合すべて1点だった打線も、内川の適時打などで奮起した。9回にファルケンボーグが負傷降板すると、森福へつなぎ、2死後も守護神の馬原ではなく摂津を指名。「調子のいい人を優先した」と最後まで勝負に徹し、逃げ切った。

 中日を、落合監督を倒す。その決意はちょうど1年前に固めた。昨年11月18日。都内で開かれたプロ野球コンベンションで、敵将から痛烈なひと言をもらった。「アキ、何やってんだ。ロッテに負けちゃダメだろ」。CS最終Sでロッテに敗退。シリーズに進出できなかったことへの叱責だった。

 ずっと超えられない壁だった。「あの人はほんとに頭がいい。俺なんかが、かなうわけがないだろ」。現役時代、落合監督が3冠王に輝いた86年、自身はリーグ2位の115打点をマーク。1打点差でタイトルを逃した。翌87年には初タイトルとなる本塁打王を獲得。落合監督がロッテから中日へ移籍した年だった。

 09年から監督に就任。多くを語らないスタイルは「オレ流」から学んだ。「落合さんがしゃべらないんだから。俺もしゃべんないよ」。今年5月31日の交流戦後、福岡市内の寿司店に落合監督を誘った。カウンターで肩を並べ、深夜まで語り合った。監督業を知り尽くす大先輩。多忙な毎日を癒やす、大切な時間だった。

 あこがれの人に初めて勝ち、最後は2人で抱き合った。球場全体から拍手に包まれ「3月11日には、大変悲しい震災が起きました。12球団が一丸となって、元気、勇気を与えようとやってきました」と力を込めた。25日にはアジアシリーズ(台湾)が開幕する。日本球界の「冠」を総なめにした頂点。「2011・11・20」は、忘れられない涙の味となった。