「うぶめ」という妖怪は、漢字で書くと「産女」と「姑獲鳥」というようにふたつあり、それぞれ別の姿形をしています。『今昔物語』にも登場し、難産で死んだ女が死後「産女」となって現れると伝わる、少々見た目も怖い妖怪です。もうひとつの「姑獲鳥」は、江戸時代初期に、児童を誘拐する「姑獲鳥(こかくちょう)」と混同されたとされます。

 

昨年末、12月26日に新たに加わった妖怪ブロンズ像のひとつは後者の方の

 

姑獲鳥(うぶめ)

山陰百貨店―山陰ぐらし☆右往左往―-姑獲鳥(水木しげるロード) 2013.01.12

 

見た目、ゆるキャラチックな鳥の姿をしておりますが、戦闘能力は相当高くて強いです!!赤子を拐(さら)って育てるという習性を持ち、干してある布団に足型を付け、その布団を使った子供におねしょをさせるという一風変わった趣味もお持ちです。「姑獲鳥」は普段「姑獲鳥石」という石像の姿をしており、ねずみ男に特殊な羽毛をかぶせられることにより鳥の姿をした妖怪「姑獲鳥」となりました。元々、羽毛を着せると「怪鳥」になり、羽毛を拭うと「女怪」になるとされています。武器はヘッドライトのような眼光と、溶岩のようなフン。さらに、巨大な口で相手をひと呑みにしてしまいます。

 

初出は講談社『週刊少年マガジン』(1968年6月23日)「姑獲鳥」で、それを見ると「姑獲鳥石」のモデルはどうやらこれのようです。

 

山陰百貨店―山陰ぐらし☆右往左往―-修那羅峠の石仏群・猫神像 2007.8.26


長野県筑北村安宮神社境内にある、修那羅峠(しょならとうげ)の石仏群の中にあるひとつで「猫神像」とされるものです。実はこの「猫神像」、他のお話にも登場しています。講談社『週刊少年マガジン』(1967年9月10日・17日・24日)「見上げ入道」で、見上げ入道の棲家である入らずの山の洞窟入口にも鎮座しています。子供の頃に見たその姿形は、なんとも神秘的に感じました。

 

そして時は流れ・・・

 

『妖怪Walker』(2002年・角川書店発行)の158頁に「姑獲鳥石」を発見!!

 

これは遭いに行かなければ!!

 

でもそれがあるのは、長野自動車道麻績(おみ)ICから車で20分ほど走った山中、遠かった。そして、道を間違えてエライ目に遭った・・・

 

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著者は、角川書店の雑誌『怪』のレギュラー執筆者のひとり村上健司氏です。氏は日本全国の妖怪伝説地を巡るのが趣味で、それを題材とした著書を数多く執筆されています。「姑獲鳥(うぶめ)」のモチーフとなったと考えられる「姑獲鳥(こかくちょう)」は、中国に於いて子供に害をなすとされる怪鳥です。しかし、乳幼児虐待の報道が耳に満つ、荒んだ風潮の昨今に於いては、「姑獲鳥」妖怪ではなく神様の使いかもしれません。


◆参考文献

『鬼太郎くんの仲間たち 妖怪「対比」図鑑』 水木しげる監修 株式会社やのまん発行

『妖怪Walker』 村上健司著 株式会社角川書店発行

『怪』VOL.0028 株式会社角川書店発行