神戸-高松-小豆島を運航するジャンボフェリー「あおい」。

 

 

2022(令和4)年10月22日就航。

 

 

1989年12月竣工の「こんぴら2」の置き換えとして、1990(平成2)年7月の「りつりん2」竣工以来、32年ぶりに建造されたピカピカの新造船。

 

 

少し長い記事になりますので、船内放送をお聴きになりながらお読みください。

 

〽風が恋を運ぶ 海を遠くわたり 二人を結ぶジャンボフェリー

 

 

小豆島は瀬戸内海に浮かぶ島では二番目の大きさで、小豆島町と土庄町の2町から成り、人口はおよそ2万8,000人。

 

関西との玄関口であった小豆島東南部に位置する坂手港は、古くから関西―九州の海上物流の中継点として栄えた。

 

 

小豆島は醤油やそれを利用した佃煮などの産地として、また風光明媚な観光地としても有名で関西から多くの往来があった。

 

 

戦後、関西汽船による阪神航路や別府航路の寄港地として栄えてきたが、高速道路網の整備や瀬戸大橋や明石海峡大橋の開通などによる関西汽船の経営不振、またレジャーの多様化による観光客の減少などから航路の撤退や休止によりその役割を一旦終えた。

 

 

就航中は神様目線で言いたい放題、ところが航路廃止になってからも神様目線で大騒ぎするのが島民の常。慌てて航路誘致に乗り出すが、海運業界は高速道路千円キャンペーンや原油高のダブルパンチで大不況。各船社に繰り返し談判したが返事はNO。

 

その潮目が変わったのが2008年9月15日、アメリカの投資銀行リーマン・ブラザーズが経営破綻したことに端を発する世界同時不況。これによる旅客減少で、神戸―高松間を2隻1日5往復体制で運航していたジャンボフェリーは減便を余儀なくされた。

 

これにより折り返しまでの時間が長くなったジャンボフェリーは、高松港沖でアンカーを打って停泊。

 

 

その光景を見た塩田幸雄小豆島町長(当時)が改めて寄港を要請。これを受けて同社で検討の結果、寄港を決定。2011(平成23)年7月6日、ジャンボフェリー就航。

 

 

2012(平成24)年4月20日、徒歩客専用の可動式乗降設備を整備。

 

 

2013(平成25)年7月27日 、自動車専用架道橋の運用開始。高松―小豆島間での車両航送が可能となる。

 

 

〇坂手港の歴史

1947(昭和22)年、関西汽船の阪神-高松航路で坂手寄港開始

1975(昭和50)年、阪神-別府航路の坂手寄港を1便から2便に増便

1989(平成元)年、阪神-高松航路のジェットフォイル(関西汽船・加藤汽船共同運航)が寄港を開始

1995(平成7)年2月、阪神-別府航路小豆島経由の廃止し、阪神-小豆島航路季節便を新設

2000(平成12)年、ジェットフォイル廃止。10月より阪神-小豆島-高松航路を高速船びっぐあーす(五島産業汽船)運航開始

2005(平成13)年8月、別会社びっぐあーすライン設立、高松-小豆島運航休止。

2006(平成14)年4月27日、五島産業汽船航路廃止(2018年11月13日破産)。同年8月ラ・ベルメール(セラヴィ観光汽船)が神戸-坂手間運航開始

2007(平成19)年11月、ラ・ベルメール運休

2008(平成20)年4月13日、ラ・ベルメール航路廃止。同年6月2日、セラヴィ観光汽船が東京地方裁判所に自己破産を申請し、破産手続開始決定

2011(平成23)年7月6日、神戸-坂手にジャンボフェリーが就航、定期旅客フェリーが復活。同年10月、関西汽船が季節便を休航

2022(令和4)年10月22日、ジャンボフェリーあおい就航、坂手みなとまつり開催

 

ジャンボフェリー「あおい|Aoi」の船名由来は、碧い海、蒼い空、青い風、光あふれる瀬戸内海をイメージしたもの。

 

 

船体のカラーリングは青と白の2色。光り輝く穏やかな波間を白い船が静かに進み、その向こうには美しい島々が浮かぶ。そんな瀬戸内海の日常の風景をイメージしたデザイン。

 

 

青と白のストライプ(縞|しま)は、公開の安全を祈願して、船首に7本、ファンネルに5本、船尾に3本という「七五三」の吉数。

 

 

「縞」模様の由来は、16世紀に舶来品として縞の織物が流行した際に、当初は「島渡り」「島もの」と呼ばれていたのが転じたもの。縞と島には深い関係があり、海を介した人と文化の交流が「しま」という2文字に込められている。

 

 

その特徴は輸送力・快適性向上、燃費向上、安全性向上、感染防止対策強化、大規模災害時対応の5つ。

 

 

全長がこんぴら2の116mから132mへ、総トン数が3,700トンから5,400トンへ、旅客定員を475名から620名へ、車両積載能力を大型64台から84台へと増加して輸送力を向上した。

 

 

客室シートのファブリックやクッション、リクライニング機構など国内フェリー初となる先進的な仕様のものを採用して快適性の向上を図っている。

 

 

燃費向上策として2サイクル1機1軸推進システムなどを採用している。

 

 

また、大型外航船に搭載するようなディーゼルエンジンを採用して船体大型化に伴う負荷軽減を図っている。

 

 

次世代の損傷時復元基準クリアや最高等級A-60パネルを床材に使用するなど安全性の向上に配慮している。

 

 

高い寒気能力とUV-C殺菌可能な高機能空調システムの導入による感染防止対策の強化を図っている。

 

 

また災害時の支援活動を想定し、ストレッチャーごと搬送できる大型エレベーターを装備している。

 

 

◆概要

船名:あおい|Aoi

総トン数:5,200トン

定員:620名

車両搭載数:大型トラック84台

諸元:全長132.0m×型幅21.0m×喫水5.60m

航海速力:18.50ノット

主機:MAN B&W 8S35ME-C9.7型

主機関:ディーゼル1機1軸

連続主機出力:6,640kw

建造所:内海造船瀬戸田工場

運航会社:ジャンボフェリー

竣工日:2022(令和4)年5月28日

就航日:2022(令和4)年10月22日