先月13日、島根県唯一の百貨店である一畑百貨店が、来年1月14日に営業を終了し閉店することが発表された。
JR松江駅前に立地する一畑百貨店は、ピーク時の売上高は2002年3月期に108億円を計上。
大型店の出店やインターネットショッピングなどとの競合激化に加え、人口減少による市場縮小で、14年度以降9期連続で赤字を計上。
2023年3月期には43億円にまで減少。新型コロナウイルス感染拡大による打撃に加え、テナント誘致に失敗し改装計画が頓挫したことから経営継続は見込めないと判断した。
閉店により、運営会社の一畑百貨店と、会員制積み立てサービスを提供する特定取引会社の一畑友の会(会員数8千人)は自主廃業する。
また、社員およびパート、契約社員を含めた118人の従業員は、一部を除いて1月末で解雇。
一畑グループ各社のほか、行政の支援を受けて再就職を進めるとしている。
百貨店業界は都市部にある一部の基幹店を除いて苦戦しており、日本百貨店協会加盟の百貨店は、ピーク時の1999(平成11)年には311店あったが、現在はその4割減となる181店舗となっている。
なお、日本百貨店協会加盟の百貨店がゼロとなるのは山形県、徳島県に続いて3県目となる。
一畑百貨店は、一畑電気鉄道と三越が提携し、鉄道の直営事業として1958(昭和33)年10月に松江城に近い松江市殿町に開業。
1964(昭和39)年4月には出雲市駅前に出雲店を開店(2019年2月閉店)。
1971(昭和46)年4月増床。1982(昭和57)9月には、山陰中央ビルの一部を旧新館として入居。本館と空中通路で結ばれていた。
業績は順調に拡大し、1984(昭和59)年8月に株式会社一畑百貨店として独立。
1988(昭和63)年10月には3度目の増床。同年、浜田店が開店した(2016年2月閉店)。
1994(平成6)年5月1日に開店した松江サティの影響で、打撃を受けたジャスコ松江店が閉店。同店を核とする商業施設ピノも閉鎖。一畑百貨店も松江サティの影響で、94年度以降は三期連続で赤字を計上。
当時、一畑百貨店が立地する殿町は旧市街で、本館・新館の二館体制。
売場面積は12,000平方メートル。百貨店の顔である1階の売り場面積は650平方メートル。
店舗前の道は一方通行で一車線のみだった。
駐車場は260台とモータリゼーションの波にも取り残されていた。
そこで起死回生策として打ち出したのが、JR松江駅前のジャスコ松江店跡のピノビルへの移転・増床計画。
これに伴い1996(平成8年)年10月に新会社松江ターミナルデパートを設立。
親会社の一畑電気鉄道がピノビルを50億円で買収。一畑百貨店は10億円を投じて改装。
1998(平成10)年3月22日に旧法人の株式会社一畑百貨店が営業していた旧松江店を閉店。
同年4月1日、新会社松江ターミナルデパートが営業する新松江店が開業した。
地上6階・地下1階、衣食住のすべてを網羅したフルラインの高質な品ぞろえで、開業当初は想定以上に掛け軸などの美術品やリビング用品が売れたという。
1階にはラッキースポットが点在。それぞれの入口で奇妙な像がお出迎えしてくれる。
1階正面入口には『昇運童子』
「起きる刻だよ 朝日のように 運も昇るよ」
1階シャミネ側入口には『追い風童子』
「こんな小さな私だけれど いつも頑張るあなたの背から そっと風をおくりましょ」
2階駐車場連絡口には『火伏せ童子』
「きらりと光る金の目で 火難のもとを睨み付け 曇の穴からふりかける 小雷公のご霊水」
作者は平城遷都1300年事業のマスコット「せんとくん」の制作者、彫刻家の藪内佐斗司。
2001(平成13)年9月、大田ショップオープン(2018年9月閉店)。
なお、旧店舗は閉店後に解体され、現在は県民会館駐車場として利用されている。
また、新館の塔屋には今も当時の名残が見られる。
開業から65年、移転からおよそ四半世紀を経た街の顔。
今日からちょうど半年後にその灯りが消える。
◇店舗データー
〇2017年度
名称=一畑百貨店松江店
所在地=島根県松江市朝日町661
TEL=0852-55-2500
営業時間=平日・土曜日10時00分~19時00分|日曜日・祝日午前10時~18時30分
売場=B1~6F
売場面積=19,880平方メートル
年商=8,471百万円
売上順位=145/199(2017年度百貨店店舗別売上ランキング)
ホームページ=一畑百貨店-Website
※参考数値
〇2000年度
名称=一畑百貨店松江店
売場面積=14,438平方メートル
年商=11,348百万円
売上順位=298/1000(2000年度大型店舗ランキング)
◆参考文献
『流通・サービスの最新常識2019』 日経MJ[流通新聞]編 日本経済新聞出版社 発行
『流通経済の手引2002』日経MJ[流通新聞] 編 日本経済新聞出版社 発行