島根県唯一の百貨店、一畑百貨店が14日、営業を終了し、65年の歴史に幕を下ろした。

 

訪れた閉店前日は、典型的な山陰の冬といった鉛色の空に覆われたみぞれの降る寒い日。

 

 

閉店まであと01日

 

 

長年市民に親しまれた松江の玄関口の顔。


 

翌日の閉店セレモニーは、駅側の正面玄関で実施された。

 

 

赤い大時計と一畑百貨店の看板。

 

 

くにびき大橋南詰交差点に面した外壁にも65年の感謝を告げる懸垂幕が掲げられていた。

 

 

1階エスカレーター横で一畑百貨店の歴史を振り返るパネル展が催されていた。

 

 

踊り場のご案内。

 

 

1階正面入ってすぐの吹き抜け。

 

 

6階エスカレーターの天井。

 

 

装飾がそごう広島店の外壁に似ている。

 

閉店1日前の日が暮れた。

 

 

切れ間なく発着する路線バスと高速バス。

 

 

その向こうに一畑のあかりが灯る。

 

 

松江駅前交差点より。

 

 

くにびき大橋南詰交差点より。

 

 

島根県道253号宍道湖公園線に面したウインドウ。

 

 

昨年10月5日よりはじまった閉店セールも明日1日を残すのみ。

 

 

およそ24時間後にはすべての営業を終了する。

 

 

一畑百貨店は、一畑電気鉄道と三越が提携し、鉄道の直営事業として1958(昭和33)年10月に松江城に近い松江市殿町に開業。

 

1971(昭和46)年4月増床。1982(昭和57)9月には、山陰中央ビルの一部を旧新館として入居。本館と空中通路で結ばれていた。

 

業績は順調に拡大し、1984(昭和59)年8月に株式会社一畑百貨店として独立。

 

しかし商業地しての地盤沈下から、JR松江駅前のジャスコ松江店跡のピノビルへの移転・増床を決断。1996(平成8年)年10月に新会社松江ターミナルデパートを設立。1998(平成10)4月1日、新会社松江ターミナルデパートが営業する新松江店が開業した。

 

 

ピーク時の売上高は2002年3月期に108億円を計上。

 

しかし大型店の出店やインターネットショッピングなどとの競合激化に加え、人口減少による市場縮小で、14年度以降9期連続で赤字を計上。

 

2023年3月期には43億円にまで減少。新型コロナウイルス感染拡大による打撃に加え、140社と交渉したテナント誘致に失敗。これにより改装計画が頓挫したことから経営継続は見込めないと判断。2023(令和5)年6月13日、松江店を閉店し営業の終了を発表。同店の閉店により、本邦の百貨店ゼロ店の3例目となる。

 

振り返ってみると、その予兆がかなり前からあったことに気づいた。

 

6階のレストラン「イチバタダイニング」は、2022年8月31日を以て閉店。

 

 

一畑百貨店別館の再開発。

 

そして、土産物販売事業などを取り扱う観光営業部を2023(令和5)年2月1日付で分社化。なお、出雲市と松江市で土産物などを扱う店舗の営業は継続される。

 

最後の営業日となった先週日曜日は、前日までの荒天が嘘だったような雲ひとつない快晴。

 

10時前はに多くの客が列を作り、最後の開店を待ちわびていた。

 

最終日の来店客は1万2千人を数え、売上は8,100万円を計上した。

 

 

カウントダウン横断幕が同店のキャッチフレーズ「人が好き、街が好き。」に掛け替えられている。

 

 

いよいよ最後。

 

 

すべての営業を終えた18時40分ごろ、1階正面玄関であった閉店セレモニーには、一畑百貨店の最後を見届けようと多くの人が集まっていた。

 

 

錦織要社長のあいさつにつづき、勤続43年の井上智弘専務の閉店宣言でシャッターが下りはじめ、集まった人たちの万雷の拍手と感謝の声を浴びながら、65年に亘り灯され続けたあかりは静かに尽きていった。

 

 

おつかれさまでした。従業員のみなさんのよい再就職先が見つかりますことをお祈りいたします。

 

◇店舗データー

〇2017年度

名称=一畑百貨店松江店

所在地=島根県松江市朝日町661

TEL=0852-55-2500

営業時間=平日・土曜日10時00分~19時00分|日曜日・祝日午前10時~18時30分

売場=B1~6F

売場面積=19,880平方メートル

年商=8,471百万円

売上順位=145/199(2017年度百貨店店舗別売上ランキング)

ホームページ=一畑百貨店-Website

※参考数値

〇2000年度

名称=一畑百貨店松江店

売場面積=14,438平方メートル

年商=11,348百万円

売上順位=298/1000(2000年度大型店舗ランキング)

 

◆参考文献

『流通・サービスの最新常識2019』 日経MJ[流通新聞]編 日本経済新聞出版社 発行

『流通経済の手引2002』日経MJ[流通新聞] 編 日本経済新聞出版社 発行