スパッツの時代
お店にかわいいシャツワンピがあった。
すごいかわいいけど、丈が短い。
店員さんは、
「下にレギンスとか履けば、大丈夫ですよ。」
一緒にいた妹に、
「スカートの丈が短くて、階段登るときに、レギンスのお尻が見えるのはありなのかな?」
と聞くと、
「下はスパッツしか履かないファッションが流行ってた時代もあるんだから、大丈夫じゃない?」
異様な説得力があって、笑ってしまった。
昔の流行ったファッションって、
(テレビのアイドルお宝映像とかで)今見るとこっちが恥ずかしくなるけど、当時はそれが憧れだったから面白い。
レギンスのお尻が見えるのは、「あり」ということにしてみた。
おいしい苦味
とある外資系コーヒーメーカーA社のグループ会社の人が来社。
あんまり面白くない仕事の打合せだから、気分がのらなかったかったんだけど、
唯一、面白かったこと。
「あたしA社のコーヒーは好きじゃないのよね」
部屋には、ドトールの豆で入れたコーヒーのにおいが漂っている。
苦味がいつもよりおいしく感じられた。
我が家が壊れた。
金曜の朝、
会社に行こうとすると家の玄関が水浸しだった。
お母さんを起こすと、
「まぁ大変!」とマンガみたいに騒いでいた。
私は、水を踏んでタイツがぬれたまま会社にいくことになったから
ちょっと不愉快だったけど、
その光景は客観的にみてやっぱりマンガみたいだった。
金曜の夜、
会社から戻ると、玄関にバケツが4個並んでいた。
天井がぶち抜かれて、壁には大きなビニールが貼られていて、
ビニールの中を水がバケツに向かって滴り落ちていた。
工事は再来週で、来週いっぱいはこのままらしい。
土曜の夜、
家に戻るとバケツが9個に増えていた。
大きい順に並んだバケツが、小学校の音楽室にあった木管のパイプみたいで面白かった。
家の2階にはお風呂が2つあるんだけど、
どうやら玄関の上のお風呂が水漏れを起こしたらしい、ということになり
家族は玄関の上にあるお風呂に入るのをやめた。
日曜の夜、
バケツにどのくらい水が溜まったか、のぞくのが日課になってきた。
溜まってるとなぜかうれしい自分がいる。
お母さんは、「困ったものよ」と文句を言っているので
大家さんに連絡したり面倒だったんだろうな、と察して聞き流しておいた。
月曜の夜、
つまり、きょう。
会社から帰ると、さらに天井が激しくぶち抜かれていた。
どうやら、水漏れしていたのは玄関の上の風呂ではなく、もう1つの風呂だったようだ。
家族が5人で代わる代わる水漏れしてる方のお風呂を使ったから、
水漏れはますますひどくなったらしい。
自分たちが滑稽だ。
きょうは玄関の上のお風呂に入ると、
浴槽の底が抜けて裸のまま玄関まで落ちていきそうな気がしてドキドキした。
「花より男子」でつくしのぼろアパートの床が抜けたシーンみたいに。
自分たちがマンガの登場人物に思える。
家の玄関がギャグみたいなことになっている。
玄関は、ひたひたと水の滴る音がする。
天井裏から冷気が染みてきて、修学旅行で行った秋芳洞みたいだ。