東日本大震災時の日本を海外主要メディアはこう報じた。
「有史以来最悪の地震が、世界で一番準備され訓練された国を襲った。
犠牲は出たが、他の国ではこんなに正しい行動はとれないだろう。
日本人は文化的に感情を抑制する力に優れている」
日本人として誇りを感じると共に、どこか違和感もあった。
大切な人の命を失った人には、慰めにもならない。
犠牲者は震災関連死を含め2万2千人を超えた。
当時、思春期だった彼らは’大人’になっていた。
(残ってできることもあるし、外に出てできることもある。)
故郷を離れる友人への言葉。
(人を助けられるようになりたい)
警察官、自衛官、医療に進む人。
(東京でなら最先端の医療を学べる。でも故郷から、家族から離れてしまう。)
迷っていた彼女は震災当時、20歳の自分に書いていた
(お母さんを助けてあげて)
という言葉を見て故郷にとどまることにした。
(福島が超好き、土も全部好き)
福島のYoutuberギャル。
’福島’というだけで蔑まれてきた。
そうしたのは’大人’だったという。
(歌で故郷を支えたい)
高校生で演歌歌手デビュー。
高校卒業後、夢を追い上京した。
たくさんの’大人’に助けられているとのことだった。
(故郷で人の役に立ちたい)
被災地で生まれ育った彼らの価値観。
揺るがない信念を得たなら、傷つき、迷っても、腐らず、潰れず、生きていけるだろう。
やがては地域行政、国政へと、伝播していくだろう。
その頃、あの違和感は消えているだろうか。
(人を創っています)
松下電器は営業先でこう言えと言われていたそうだが、震災は皮肉にも人を育てもした。
戦後荒廃から、世界2位の経済大国となった昭和。
豊かな生活の中に安穏と生きることが’平和’とされていた。
豊かな生活 ≒ 高学歴+高収入 ≒ 勝ち組、という価値観が支配した。
経済成長の代償は、核家族化、高度経済成長期・バブル期・就職氷河期と3世代にわたる分断だった。
平成に入り、ほどなくバブル崩壊、大企業神話が終焉し、分断された世代間の修復どころの騒ぎではなくなった。
日本存亡の危機が足音を立てて忍び寄ってきた。
弱肉強食のハゲタカ、詐欺など犯罪の悪質化、地下鉄サリン事件といった犯罪の凶悪化、日本はガンに冒されていった。
「政治が悪い」とマスメディアにミスリードされた国民は平成21年9月16日政治史初、民意によって政権を交代「させた」。
それから1年半、平成23年3月11日、混沌とした時世の最中、東日本大震災は起きた。
この窮状はインターネット・TVを介し世に広く浸透した。
震災当時、携帯電話は繋がらないが、インターネットを介したSNSは繋がった事が契機に高齢層にもスマホが普及。
インターネットを駆使する情報化社会に育てれられたゆとり・さとり世代は、情報リテラシーの格差があったが良くも悪くも’覚醒’した。
ネット空間に依存する者、離れる者、戦後レジーム世代は未だ眠ったまま、時代錯誤だった。
震災から8年、世の中は明らかに変わったように思えた。
今まで観ていなかった(観えていなかった)世界が見えはじめた。
「主体的に観る世界を選べる」ことが、情報リテラシーの差を生むようになった。
世界は、血液よろしく’金’に動かされている。
株式市場は、金を世界全体に循環させる人工心臓のようだし、デリバティブ・信用取引は、実態経済(実力)を超えた、延命措置、ドーピングのよう。
’働く細胞’の如く堅実な人々は、競争が激しくなるにつれ、他者を蹴落とす者が席巻したが、多くの場合この組織は死んだ。
他者を蹴落とし高学歴を目指す’大人’になるまでの教育は、’ガン細胞’になるトレーニングかのようだった。
他者を蹴落とすことに長けた者が、国家の中枢を支配し、司法・立法・行政を司り、教育者はその下僕、末期ガンの様相だった。
ガン細胞に冒された組織・国家は意図的な外科手術によって、統治機構を変え、生かさず殺さず延々、医療費を払い続ける様相・・
この欺瞞に満ちた社会のシステムは生まれ変わろうとしている。
そうしないともうこの体(社会そのもの)がもたないほどリスクを抱えてしまった。
かつての日本が評価された武士道、清貧、といった価値観は蘇るだろう。
まだ社会に旅立つ若者や、弱った人をつけ狙う毒牙は潜んでいる。
脱皮する時、動きは鈍く最も危うい。
これを守り、育てるのもまた、’大人’の勤め、正念場だ。
自然災害はこれからも尽きない。
オウムサリン事件のような無差別テロを行う’大人’がいることも知った。
力無き正義は無能、という先生がいた。
そもそも力とは何だろう。
現代における力とは、創造力ではないかと思う。
もし創造力が自分に無ければそれを持つ人を発掘すれば良い。
製造業、土木建築、芸能界、サービス業、行政、どの業界も創造力を発揮できる世界になってきた。
旧態依然としたままでは、評価されない世界になった。
電球を発明したエジソンも、飛行機を飛ばしたライト兄弟も、数々の家電製品をヒットさせた松下電器も、アイデアを実現させた。
創造力を持つ人は、広める術、カタチにする術、人脈、金脈、それらを埋めてくれる人・組織を探せば良い。
それが人を活かす、という事になる。
逆も然り。
生まれる時はひとりで生まれ、死ぬ時もひとりで死ぬと言った先生がいた。
元々、何もできなかったし、持ってもいなかった。
今、どれだけのことができるようになり、持っているのだろう。
最後は全て手放すのだから、必要な人に渡していこうと思う。
時間だけが無為に過ぎてしまう。
時は金なり。
誰かを泣き叫ばせてしまうような’大人’、にはならない。
泣き叫ぶ人を横目に通り過ぎる’大人’、にはならない。
人を守り、育める’大人’になろう。
今を生きる場、共に生きる場を創る’大人’になろう。
合掌