「歩く時は、地面を蹴るんです」と医師やウォーキングの人は言う。
ところが地面を蹴るのは、腰が硬い人の傾向です。
例えば、100m決勝のオリンピック選手達は言う。
「コースに濡れた紙が敷かれていると考えるんだ。
これを破らない様に、足を着けて行くことがボクらの走り方の基本だよ」
と口を揃える。
そもそも蹴っているとアキレス腱は硬くなるし、余分に疲れます。
「歩き疲れて、夜が眠れない」
という場合は、アキレス腱が硬くなっている状態です。
(脚湯が必要です)
蹴らない歩法が、伝統的にはあります。
これを『無足(ムソク)』と言い、昔日の剣術等や飛脚や車夫の基本でした。
今の現代剣道はポンポン飛んでいますが、
あれは固い板床の上で叩く目的があるから許されます。
なで斬る日本刀の刀法ではなく、
叩き合う竹刀競技だから、あれが許されます。
もちろんこの結果、剣道でアキレス腱を痛める人が多い。
江戸期以前の侍がみんなアキレス腱を痛めるわけはなく、
現代ならではの症状なんです。
これも腰を活かさず、足先手先で何とかしようとするからです。
(現代剣道でもTOPの一部になると、様子は少し変わってきます)
医療やウォーキングの世界に入ろうとする方は、
あまり元気ではない方が多い。
つまり、もともと腰が硬いのです。
だから、腰で歩くことができず、地面を蹴らざる得ないのです。
(腕を振るのも同じです。意識して、腕を振るのは間違いです)
昔日の人間やオリンピック選手は、
効率的な身体運用を目指して、体や意欲を活かす方法を目指して、
無足の法に辿り着きました。
出発地点や目的が、そもそも違うのですね。
因みに、仏陀の歩き方も、蹴らない歩き方だったそうです。
腰が抜けていたら、仏陀の様な高度の瞑想はできないでしょうからね。
蹴らない歩き方とは、足首のスナップを使わない歩き方です。
つまり、重心移動に足を従わせる、歩みを合わせる歩法ですね。
地面を丁寧に扱う方法です。
こうした歩法でなければ、オリンピック選手といえども体がもたないし、
一日に100km行くこともザラだった飛脚や車夫は、
務まらないとも言えます。
卓越した身体能力は、合理的な身体運用法に支えられていた
ということですね。
歩くのも腰(肚)がシッカリしていることが、重要なのです。
肚の文化が培ってくれたものを有効に、現代も利用したいですね!
吉田直樹 拝