お盆休みはスピリチュアル本を読んでいました。その一冊がミナミ・A・アシュタール氏著の「新 日本列島から日本人が消える日(上巻)」です。電子書籍で読みました。

 

今、YouTubeで人気沸騰の男女ペアのスピリチュアリストが書いた本です。Amazonの書評数が多かったので試しに読んだのですが……私には、正直そんなに大絶賛するような(学説ならぬ)スピ説には思えませんでした。

 

このペアは、ヒックス夫妻のようにチャネリングをし、その啓示をブログやYouTube、書籍で発表しています(と当人は言っています)。ヒックス夫妻がエイブラハムという集合意識とつながっているのに対し、ミナミ・A・アシュタール氏はアシュタールという宇宙人とつながっています。ダリル・アンカ氏はバシャールという宇宙人ですよね。

 

ヒックス夫妻やダリル・アンカ氏はさもありなんと思えるのですが、このペアに関してはあまり共感できません。胡散臭いと思います。(発表物なんですから、批判的な論評もありですよね。) 有名作家ではない人が、メインストリームの出版社からではなく、電子書籍で出版物を出しているからバカにしているというわけではありません。無名の電子書籍発行人、ティアランさんの宇宙系スピ本はとても面白かったです。その書評はこちら

 

この本は宇宙人とチャネリングができる女性とそのパートナーの男性が、日本の歴史を時系列順にスピリチュアル的な解釈をしています。著者は縄文時代のムラ社会を賛美し、後世の侵入者がその共同体を破壊し、現代のような奴隷社会を築いてしまったと嘆いています。ここらへんは真偽はともかく説としてはありえます。古代文明は宇宙人がプロデュースして創ったという話も、都市伝説で聞く話と共通しています。Naokiman showでも、シュメール文明が宇宙人によって創られたといってました。地球人は、宇宙人が奴隷として使役するために、彼らによって造られたという、ダーウィンの進化論に反する説も、よそで聞いたことがあります。

 

私が納得できないのは、いかなる宗教も支配者が奴隷的庶民を支配するために創ったものだという彼らの説です。神社は、全国に悪のネットワークをはるために造られたと主張しています。神道の神、仏教の仏、キリスト教のイエスは悪の組織のアイコンなのだそうです。私もクリスチャンではありませんが、イエス・キリストが悪の使者には到底見えません。(笑) 

 

著者は神道をはじめ、仏教やキリスト教といった世界の主だった宗教を否定していますが、イスラム教については言及していません。保身です。イスラム教を批判して暗殺された欧州の作家がいるくらいだから、テ〇リスト等にかぎつけられるのが怖いのでしょう。

 

神道を極めた人も、仏道の行者も、修行を極めて到達した境地があります。祈りを重ね、神の御業に触れた人もいます。私自身も、お不動様の真言を得て、邪気を祓うことができました。私の知人女性はベールを被ったムスリムですが、宗教の教えに救われています。それはそれで素晴らしいことではないでしょうか。

 

そういった奇跡についても、ミナミさんたちのような宇宙系スピリチュアリストに言わせれば「思い込み」とか「プラシーボ効果」なんでしょうね。だとしたら、私だって同じことを言うことができますよ。「宇宙人との交信だって妄想じゃないですか」ってね。「創作じゃないですか」とも。

 

日本史にこれだけ斬り込んでいるのに、参考文献がないという点で夢想本の域を脱していません。「歴史上、宗教が原因で戦争が勃発したから、宗教なんてインチキだ」という言い草も、短絡的です。宗教はそれでだけは語れません。文化人類学者の書籍ではありえない浅い考察です。

 

また、縄文人が弥生時代になって、大陸からの移民たちに駆逐されたという説まではわかります。確かに、沖縄には縄文人の子孫が残っています。ですが、著者が言うのと違ってアイヌの人々は縄文人の末裔ではありません。彼らは、元寇の時代にモンゴルに追い出され、北海道に移民してきた人々です。北海道に元々いた縄文人は、彼らに駆逐されたか同化したのです。

 

思うに著者はスピリチュアルなジャンルで一山当てようとしているのはないでしょうか。下巻の最後に、決して安くはないセミナーの案内があるとの話ですし。彼らは共に元劇団員で、男性の方は教師志望だったとか。歴史の先生でしょうね。日本史に詳しい人が、スピリチュアルとか都市伝説をかじって、このようなスピ説を構築したのでしょう。元役者だから、YouTubeでの演出もお手の物です。

 

これがホントに宇宙人と交信ができて、英国の歴史とかアフリカの歴史とかについても、同著でやったのと同様に詳細なスピリチュアル的解釈を交えて説明することができたら、信憑性が出ます。でも、日本史オンリーなら、何で宇宙人は日本史のことしか知らないのか?って話になります。

 

ということで下巻は読みません。