なぜ鍼で病気が改善していくのかを考える前に、ここで少し違う例えを使ってお話してみたいと思います。

それは、同じ対象物を見るときに、あるひとつの意味付けをしている時と別の意味付けをしている時とでは、その対象物に対する捉え方やアプローチが全く異なってくるということです。

少し難しい例えですが、ギリシャ哲学と東洋哲学とでは、「世界」の捉え方が違うのです。

ギリシャ哲学では、「世界」は無数の独立した個(物質とか粒子)の集合から構成されるという捉え方をします。一方、東洋哲学では、「世界」は網の目のように絡み合っていて、何物も個単独では存在できないというふうに捉えます。

個の集合が「世界」か、みんなつながっているのが「世界」か、ということですが、ここではどちらが正解かということではなく、どのようなフィルターを通して見るかで、同じ対象物や事象をみても、全く違う捉え方ができるということです。

この場合、ギリシャ哲学というフィルターを使うか、東洋哲学というフィルターを使うかで、世界は二通りの捉え方ができるということですね。

そして、個の集合が世界なんだと信じれば、必然、個を重視した価値観で世界にアプローチします。また、みんなつながっているのが世界だと信じれば、個よりも関係性を重視した価値観で世界にアプローチすることになります。

少し抽象的な説明になりましたが、実はそれは、西洋医学と東洋医学でも同じようなことが言えるのです。              つづく