さらに『気』の運動には、法則性の他に、運動形式というものがあります。

『気』の運動形式とは、『気』が体の上部へ昇ったり、体の下部へ降りたり、体の外へ出たり、体の内に入ったりするという『気』の動き方のことで、それは「昇・降・出・入」の四文字で表されます。

例えば、日中であれば気は上へ昇ることが多く、体の外を巡ります。逆に夜間は下に引き降りて体内を多く巡ります。

このような『気』の「昇・降・出・入」が滞りなく行われていれば、内臓諸器官がうまく働き、血や津液(しんえき)といわれる体液も滞りなく循環し、尚且つ不要な老廃物や有害な毒素をきっちり排泄することができるため、結果として体は健康状態を保つことができます。

ところが、昇の運動が過剰になったり、出や降の働きが低下したりすると、なんらかの病気になりやすい状態になるのです。

例えば、春に増える花粉症の多くは、東洋医学的には『気』の昇降バランスの失調が原因になります。

春は木の芽時で、自然のものが上へ上へと成長する時期であり、子供の身長が伸びる発育の時期も春です。

このように、春は自然の『気』が下から上へ昇っていく時期にあたり、東洋医学的に言うと、春は体の『気』が自然の気流のあおりを受けて上へ昇り易くなるのです。

ということは、もし普段から『気』が上へ過剰に昇っている人がいれば、その人は春になると、自然界の影響を受けてさらに『気』が過剰に体の上部に昇ってしまうことになります。

そうなると、特に顔面部に気が滞り、余分な熱がこもってしまい、それが花粉等の異物に対して過剰に反応してしまう状態を作る原因になってしまいます。つまり、免疫バランスに悪影響を与えるのです。

また、気の昇降バランスが崩れると、身体の外に排出すべき余分な水液が、通常の排出経路(大小便や発汗)を経ることができず、鼻水として顔面部から排出されることもあります。

このように春の花粉症は、東洋医学的には気の昇降バランスの崩れが大きな原因になっていることが多いのです。

花粉症を例にとってみましたが、『気』の昇降出入という運動形式のバランスがとれていれば、大病を患うことなく健康でいられるのですね。         つづく