前回は、東洋医学では身体を『気の塊』と認識すると解説しましたが、今回はその続きで「気」についてです。

東洋思想では、「気」は世の中を構成する最小の単位で、目に見えるものと見えないものの境界あたりのものであり、さらにそれ自体がエネルギーそのものだとされています。

東洋思想でいう「気」については、現時点では科学的に測定して数値化することも、画像で可視化することもできません。

ところが、物理科学の最先端である量子力学という学問では、物質をどんどん細かくして、素粒子といわれるとっても小さいレベルまで解析していくと、質量を持って存在していたはずの物質が、最終的には単なる波動、あるいはエネルギーとしてのみ観察されるようになるそうです。

つまり、人も世界もエネルギーで構成されているということになるのでしょうか。

なかなか信じることができないかもしれませんが、科学的には人間の身体も含めて、私達が普段見て触っている物質は、実は何らかのエネルギーの塊であるというのが本当の姿のようです。

実はこれは、東洋思想でいう「気」の定義に極めて近いものであり、このような認識は「気」の運動原理を表した陰陽論そのものなのです。

例えば、物の成り立ちを陰陽で説明してみると、物は陰に属し、エネルギーは陽に属します。

エネルギー(陽)が、ぎゅっと凝集することによって物(陰)が誕生し、物(陰)が分解するにしても、最終的にはエネルギー状態(陽)となります。

陰から陽のように、真逆の状態になることを、陰陽論では「転化」といいます。

また、エネルギー(陽)はエネルギー単独で存在することはできなくて、常に物(陰)に依存しながら存在して、逆に物(陰)もエネルギー(陽)の助けがなければその存在を維持することができないそうです。

これも、お互いが依存しあうことで初めて存在できるという陰陽論の法則を表しているようです。

少し難しいですが、量子力学の最先端で明らかにされてきたことが、東洋思想でいう「気」の定義や「気」の運動原理を表す陰陽論に非常に似通っているのです。

東洋医学が人間を『気の塊』と認識し、病気を治す際に「気」の流れを扱うというのも、あながちデタラメなことを言っているわけではなさそうです。

ちなみに、量子力学の育ての親といわれ、ノーベル物理学賞を受賞したニールス・ボーアという物理学者は、量子力学と東洋思想の陰陽論が非常に似通っていることを見出しています。

さらに、ニールス・ボーアは授与された勲章の紋章に、陰陽を表す「太極図(陰陽マーク)」を用いたということです。

もしかしたら、量子力学でいう素粒子の性質が、東洋思想でいう「気」に近いものなのかもしれません。
                              つづく


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