生まれつき食物アレルギーがあり、下痢や湿疹の出ていた子供が、成長するに従ってアトピーになったり鼻炎になったり、それが気管支喘息に移行したりする現象があります。

 

私の少ない臨床経験上でも、そのようなアレルギー疾患を持つ方の既往には、アレルギー疾患の変遷がみられることが実際にあります。

 

一般的に、生まれつきアレルギーの素因を持つ子供は、胎児の時に胎盤を通して母親の食べたものでアレルギーを起こしやすい体質ができあがるといわれていますが、これは東洋医学でいう「胎毒(たいどく)」というものに相当します。

 

例えば、妊娠中に味の濃いものや脂っこいもの、甘いもの等の過食、飲酒や喫煙等の不摂生や便秘をしていたりすると、体内で湿痰や熱邪等の邪気(毒素)を形成し、それが胎児に悪影響を与えます。

 

このような、胎児の時に母親から受ける邪気を「胎毒」といいます。

 

胎毒を大いに受けた場合は、出生時から新生児湿疹があったり、よく下痢をしたりしますが、これは赤ちゃんが胎毒を一生懸命排出しようとしてがんばっている現象です。

 

その時点で邪気を正常なルートから排出しきることができれば湿疹はひいていきますが、もし排出しきれない場合は邪気が徐々に深く入り込んでいき、五臓六腑の働きに悪影響を及ぼし始めます。

 

次第にアトピー等の皮膚の炎症がおこり、次は気道の症状が出始めますが、これは徐々に病が浅い部分から深い部分に移行しつつある状態を表しているのです。

 

西洋医学では、このような成長に伴うアレルギー疾患の変遷を、「アレルギーマーチ」というようですが、この現象を東洋医学の視点から解釈してみると、それは母親から受けた胎毒が徐々に深部に侵攻していく過程を示している可能性があり、その一連の流れの中にアトピーや喘息、鼻炎等が位置付けられるということなのですね。

 

余談ですが、昔は新生児に海草の一種である「マクリ」というものを飲ませて胎毒を排出させていたようです。

 

今ほど飽食ではない昔でさえそのようなことをしていたのですから、もしかしたら現代ではなおさらにその必要性はあるのかもしれません

 

東洋医学的には、生まれつきのアレルギー体質にはそのような胎毒というものの関与がひとつの要因として挙げられます。

 

それに加えて、一般によく言われていることですが、成長していく過程における飲食の不摂生や心理的ストレス等の、生活習慣も大きな要因になります。

 

日ごろの無意識的な不摂生によって邪気を生成したり、それを排出していく働きを阻害したりすることで、再度邪気を体内にこもらせていき、徐々にアレルギーや様々な病気をおこしやすくするベースを作っていくということですね。

 

このように、実際は後天的な要素も大きく関わりますので、生まれつきのアレルギー体質でなくとも、後天的に誰でもアレルギー疾患を発症する可能性はあるわけです。

 

ゆえに、先天的なアレルギー素因や、実際にアレルギー症状があってもなくても、たとえ健康であっても、自分に適した養生の知識や基準を持っておくことで、自分の不摂生を認識できるようになることが望ましいのですね。

                          つづく

 


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