西島side





バトンが千晃の手から宇野ちゃんの手に…………









渡った。




ビックリするくらいスムーズに。





「宇野ちゃん、ファイトー!!」





でもやっぱり周りは速くて、抜かされていく。

最初ほぼ2位の状態で千晃が渡したけど、今は4位になってる。






秀「このまま4位で来てくれれば。西島、とりあえず頼んだぞ。」



西「うん。」



秀「ファイト。」







バトンパスゾーンに立つ。


宇野ちゃんが最終コーナーをまわる。

5位と争ってる感じだった。







「宇野ちゃん!!ファイト!!」








宇野ちゃんは必死。

ほぼ並んで走ってる。







「…………っ!宇野ちゃん?」




そのときちょっとだけ宇野ちゃんの体が揺れた気がした。


でもすぐに立て直して走ってくる。


もしかして…………。


足捻った?




そんなこと感じさせない走りで走ってくる宇野ちゃん。



あとは俺と秀太に任せろ。







「宇野ちゃん!!ラスト!!」






宇野ちゃんの手が俺に差し出される。





「にっしー、ごめん!!」


「大丈夫!!」






宇野ちゃんが差し出してくれたバトンをしっかり握って、千晃からの想いも持って、走り出す。

ここからは1周。

体力勝負。



なんなく4位になって、3位もとらえる。



なんとか秀太に渡すまでに2位には持っていきたい。






「にっしー!!ファイト!!」






そっちをちらっと見ると宇野ちゃんが千晃と合流して応援してくれてるのが分かる。



1段と気持ちが入って、俺の中でギアがまたひとつ上がった。





ラスト100になるとやっぱりバテてきて速度が落ちる。


でも、秀太の姿を見たらペースを落とすわけには行かなかった。




なんとか2位と並走する状態でコーナーをまわりきる。







「秀太!!」





「西島ー!!」






落とさないようにしっかり握って、またその想いを秀太に伝えた。














「あとは任せろ。」






大声じゃないけど、秀太がそう言ったのは分かった。



そのまま秀太の姿が遠くなる。





「にっしー!!」





千晃と宇野ちゃんが駆け寄ってくる。




「ごめん、にっしー。」




「宇野ちゃんは謝ることない。
それより秀太だよ。あいつなら絶対にやってくれる。てか、やっちゃうヤツだよ。な?千晃。」




「うん!!」





その言葉通り、秀太はあっという間に2位を抜き去り1位との差もぐんぐん縮める。





「秀太ぁー!!」





「ファイト〜!!」





第3コーナーを回ったところで並ぶ。

でも、秀太はなんだか固くなってる気がした。

このままだと秀太があとで後悔するかもしれない。






「ねぇ、秀太、固くなってない?」





「俺も思った。どうすれば……。」






「…………秀太!!腕振って!!」





「千晃??」






その言葉を聞いた秀太は肩のチカラが抜けたようにいつも通り走るようになった。




そのおかげで1位との差を逆に広げる側になった。






「すごいよ!!千晃!」














「いける、これなら。」





「うん……。」





「ラストー!秀太!!」







ゴールテープの向こうで秀太を待つ。



秀太は2位に1mほどの差をつけて、笑顔でゴールに入ってきた。







「やったぁー!!!」







見事綺麗にゴールテープをきった秀太をみんなで迎える。






西「秀太!!ナイス!!」




宇「秀太!!ありがとー!」




千「さすが!!秀ちゃんっ!!」






俺らにわしゃわしゃにされた秀太はすごっい嬉しそう。






秀「もーいいわっ!!笑
あ、マジ千晃、さんきゅ。」




宇「そうそう。あれビックリした。」





千「秀ちゃん、よくそうなるの。人に言われれば気づくんだけどね。」





西「さすが。」



千「そりゃあ何年も幼馴染みやってますから。」





秀「宇野ちゃんも千晃も良かったよ、すっごい。」





宇「でも、やっぱ足引っ張ったよね…………。」





千「そんなことないって。宇野ちゃんがいたからこんだけチカラ出せたんだし。」




西「バトンめちゃくちゃ綺麗に渡ったよな!!」




千「そう!!すごい渡しやすくて!!」







みんな興奮が冷めないけど、俺はやっぱり宇野ちゃんの足が気になってた。