真司郎side




「では……本日は本当にお疲れ様でした。
えーっと、本当に最高でもう涙が止まりません……。」





「直也くん、ももええから早く。」





「ってかなんで與がいるんだよ!クラスとかの前に学年が違うだろ!!」




「ええから、早く。」




「じゃあ、優勝、おめでとう!お疲れ様でした!かんぱーい!!!」










「で、なんでいるんだよ。」



「今更それ聞くん?」



俺の隣でジュース片手に聞いてきたのは日高。


乾杯するって言っても学生組はジュースだし、直也くんもまだ仕事中だって言って我慢してお酒は飲んでへん。


飲んでるのは日高の両親だけ。

まぁそれを直也くんが羨ましそうに見つめるっていうな……。





「だって、実彩子と一緒に帰らへんといけへんやん。」



「いや、にっしまが途中まで一緒やろ。」



「変な関西弁使うな!ええやん、日高たちと俺との仲やろ。」



「べつにどういう仲も持ってないんですけど……。」



「ええねんもう。」





当の実彩子はにっしーや千晃たちに囲まれて楽しそう。





「なぁなぁ、変なこと聞いてもええ?」



「…………。」



「なんでそんな目で見るん?!」



「だって、変なことって……。」



「日高が思ってるようなことではないわ。」



「じゃあ、なんだよ。」




「日高って実彩子のこと好きなん?」



「……ゲホッ!!ゲホッ……」



「え?!そんな?!」




「……いや、お前直球すぎるっ……ゲホッ」




「え?!いつもやんっ!!」




「まぁ……確かにそうだけど……。」





とりあえず日高が落ち着くまで待って聞くことにした。




なんでそんなこと聞くのかって?

だって、実彩子と日高のことはみっちゃん、みさちゃん呼びの頃から知ってるし、鎌倉で再会して日高くん、宇野呼びになってからはさらに知ってる。


そんな2人の幸せは俺が1番望んでるし、日高に誰にも言えない想いがあるならそれを俺に、はいてほしかった。






「もちろん、宇野は俺にとっておっきな存在だし、俺の人生で必要な人だとも思う。」


「……うん。」


「でも、それは恋愛感情とかじゃなくて……なんだろうな。」



「恋愛感情ではないん?」



「うん……。多分な……。」



「もし、宇野ちゃんがにっしーを好きでも?」


「それはそれでいいと思う。人が恋愛をするのは素晴らしいことだし……。でも、正直俺も俺の気持ち見つけるのに迷走中って感じかな。」



「日高でも分からへんことあるんやな。」



「そりゃありますよ。」



「何聞いてもだいたい返ってくるから。」



「人間は自分の気持ちっていう難題に1番悩むんだよ。しかもそれは1個じゃないしね。何度も出てきて、その度に答えを見つけてかないと自分が自分じゃなくなる。それだけは俺はイヤだしね。

真司郎は人に流されずに自分を持ってるからそういう面では凄いと思うよ。」




「なんか日高に褒められたの初めてな気がする。」




「は?!今日だって散々褒めたじゃん!」



「え??いつ?」




「高1のエースが……って。」



「それ嫌味に聞こえんねん。」




「あちゃ。」







日高がちゃんと答えを見つけてくれればええんや。


後悔しなければ。


その答えを見つけるんは俺でも実彩子でも他の誰でもないんやから。











宇野side



直也くんが言ってたとおりかっちり割り勘になって、解散になった。



「お前ら気をつけろよ〜!!」



一応先生なので、最後まで残ってクラスメイトを見送る。




真「俺らもそろそろ帰ろうや。眠くなってきた……。」



宇「はいはい。じゃ、にっしー、行こうか。」



千「お疲れ〜!!」



千晃と秀太は直也くんと同じ方向だから一緒に帰るみたい。


私はいつも通り真司郎、にっしーと日高屋を出た。



 
真「いや、でも俺の想像は超えとった。あんなバトンパス上手くいくと思ってなかったもん。」



宇「さんざん練習したもんねぇ。でも、ほんとにっしーのおかげだよ。今回は認めるしかない……。」



西「いや、なんでちょっと残念そうなの?!」



真「そうやな、しょうがないから認めてやって。」



西「真司郎まで?!っていうかなんでそんな上からなの?!後輩でしょ?!」




最近にっしーと真司郎は一体どっちが年上かわかんなくなってきてる。笑







真「もぉうるさいねん。にっしーは。」



西「えー?!……あ、こんなとこ工事してる。」



真「暗いのイヤやから別の道行こうや。」



西「そうだね、危ないし。」





あれ……?




宇「……ごめん、ちょっと待って。」






私はしばらく動けなかった。



ほんとにただの工事現場。



フェンス…………


裸電球…………


ポール…………


三角コーン…………



梯子…………





その風景になにか見覚えがある気がした……。










あっ。




これだ……。






私の視線はは一つのものに釘つけになった。










真「実彩子?」



西「宇野ちゃーん」



宇「…………あ、ごめん。」



西「どうかした?」



宇「ううん。なんでもない。行こう。」