宇野side
翌日、本当に千晃と待ち合わせして、浴衣を買いに出掛けた。
「直也くんも??」
「そう。昨日帰り際に会ってね、今日の話したら、俺の分もよろしく〜って。」
「だいたい想像はつく……。」
「でもとりあえず今日はだっちゃんと秀ちゃんの分でいいよね。」
「うん。人の選ぶって結構楽しいかも。」
千晃と買い物に出かける事は今までも何回もあった。
(秀太には悪いなーとは思ってるけど、楽しいから仕方ない。。笑)
でも男子勢にいっぺんに何かを買うなんて初めて。
せいぜい今までも誕生日プレゼントくらい。
「だっちゃんはどんなのがいいかな〜?」
「日高くんは顔が濃いからね……。浴衣も濃いめの方がいいかもね。」
やっぱり女子はショッピングが好きなもので。
「やばい、女子ものに目がいっちゃう。」
「分かる。あれ、可愛いよね……。」
「私も思った……。いや、でも今回は男子のだもんね。」
「うん。そうそう!!」
今までもこういうことはよくあった。
誰かの誕生日プレゼントを買いに来てるのにどうしても欲しくなっちゃって2人で色違いで買っちゃったりとか……。
そうすると大抵次あった時に
”そんなの持ってたっけ?”
”また買っちゃったんやろ。”
”まぁそうだろうな。”
っていう会話を末吉、與、日高がしてた。
「ねぇ。宇野ちゃん。」
「ん?」
「今からちょっと立ち入ったこと聞いてもいいかな?」
「…………うん。」
千晃のあまりにも真剣な表情に浴衣を見ていた手を止めて、千晃と向かい合った。
「あのさ…………だっちゃんと、恋人関係になろうとかは思わないの?」
「…………へ?」
予想外の質問に思わず変な声が出た。
「……それはつまり私は日高くんのことを異性としてどう見てるかってこと?」
「うん。」
「まぁ、傍から見たら面白い関係性だもんね。でも、私はそんな気さらさらないよ。」
「そうなの?」
「うん。確かに大事な存在だし、頼りにしてるところもある。
一緒にいれば楽しいし、これからも笑い合いたいとも思う。
でもそれは愛し合う関係ではないと思うの。」
「うん……。」
「大丈夫だよ。これからも私たちは何も変わらないと思うし。でも、なんで急にそんなこと?」
「……ずっと聞きたいとは思ってたの。
宇野ちゃん、私のこと応援してくれるばっかりで自分のことあんまり話してくれないし。
それににっしーが転校してきてしばらく経った今、宇野ちゃんとだっちゃんとはまた違った空気感?みたいなものをにっしーと宇野ちゃんに感じるし。
もし、宇野ちゃんの中に何か想いがあるなら私の勝手だけど、知っておきたいって思って…………。」
「ありがとう、千晃。でも今のところ何もないよ。なにかのときはちゃんと頼るから大丈夫!!」
「うん。」
千晃がそんな風に考えてくれてたなんて全然知らなかった。
やっぱり言葉に出さないと想いは伝わりにくいし、最悪、伝わらない。
「ねぇねぇ、日高くん、これなんてどうかな?」
「あ、いいかも!!さすがだね、宇野ちゃん。」
「でも、次は秀太のだから千晃が活躍する番ですよ?笑」
千晃side
「同じように小さい頃から知り合いなのに、私と日高くん、千晃と秀太では色々違うもんだよね。」
2人分の浴衣を買い終わって、近くにあった宇野ちゃんオススメのカフェに入って女子トーク。
やっぱり話題はさっきの延長線上で。
私と秀ちゃんは親が仲良かったのもあって、物心ついた時には気づいたら一緒にいた。
「私だって、まさか付き合うことになるなんて想像してなかったもん。秀ちゃんとはずっと幼馴染みの関係なんだろうなーって思ってたし。」
「でも、いつの間にか気持ちが変わってったってこと?」
「うん……。今まで秀ちゃん以外の人のことも好きになったことはあったけど、秀ちゃんに対する想いがホントに恋愛感情なのかが分からなくて最初は戸惑ってたかな……。
でも、宇野ちゃんとかだっちゃんのおかげで気づくこと、出来たし。
秀ちゃんも私も2人には本当に感謝してるからさ。」
「私、あの頃は2人がもどかしくって急かしすぎてた気がする……。」
「ううん。あの頃の私たちにはあれくらいがちょうど良かったよ。」
「そっか。なら良かった……。」
「だから私も宇野ちゃんのときはビシビシいこうかな。笑」
「えー??千晃のビシビシって未知すぎて怖い。笑」
「でもね、最近、秀ちゃん急に大人っぽくなってきたし、なんか私だけお子様な気がしてさ……。」
「その点は大丈夫よ。」
「どうして?」
「にっしーから聞いたんだけどね、こないだ、男子組でご飯食べに行ったんだって。」
「うんうん。」
「そしたら秀太がポロッと”俺は宇野ちゃんには勝てんとよ……”って言ってたって。」
「宇野ちゃんには勝てない??」
「まぁ簡単に言っちゃうとヤキモチみたいなもんじゃない?」
「宇野ちゃんに?!女の子だよ?!」
「秀太もそんな想いを持ってるんだよ。
たまには2人で出かけたりしな?やっぱりどうしてもみんなといることが多いしね。」
「うん……。」
秀太がそんな想いを抱いてくれてるなんて全然知らなかった。
嬉しさとなんとなく気恥ずかしさから、喜んでくれるといいな、そう思いながら秀太に向けて買った浴衣をそっとなでた。